祝福の色
二人は目的の部屋に辿り着くと、扉をノックした。
「はーい」
「……僕だけど」
「入ってもいいかな?」
「あ、理玖に湊人くん。準備も終わったから、大丈夫だよ」
二人が部屋に入ると、中には透花と、白いドレスに身を包んだ日菜子がいた。
「ヘアセットやお化粧は、颯くんに仕込んでもらった私がやりました! どうかな?」
「……悪くないんじゃないの」
「そういう言い方をすると女性にもてないですよ。佐々木さん、とてもお綺麗ですね」
「二階堂様、ありがとうございます。御三方には、本当にお世話になりました」
日菜子はそう言うと、深々と頭を下げる。
「日菜子さん、頭を上げて。私たちは、それぞれが自分の意思でやりたいようにやっただけだから。日菜子さんがお礼を言うことなんて、何もないんだよ」
「ですが……」
「むしろ、申し訳ないと思っているの。せっかくの晴れの日なのに、ドレスが正式なものではなくてごめんね。さすがに私も、本物は持っていなくて……」
透花の発言に、慌てた日菜子は頭を上げた。
「そ、そんな、一色様! 私、このドレスで充分嬉しいです! ドレスを着せていただいて皆様にお披露目できる日がくるなんて、まだ夢みたいだと思っています……」
「そう言ってもらえるなら、私も嬉しいな。でも、夢じゃないよ」
「……そうですよね」
「うん。それに、本当に夢みたいな時間はこれからだからね」
「……はい!」
透花の微笑みに釣られ、日菜子も笑顔になる。
「……こっちは大丈夫みたいだね」
「そうですね。理玖さんはこれから、もう一人の主役の方に行くんですか?」
「……ああ」
「僕としては、あちらの方が心配ですよ」
「……珍しく意見が合ったね。僕もだ」
「うわっ、僕たちの意見が合うなんて、この後雨でも降ったりして……」
「……縁起でもないこと言わないでくれる」
「はいはい、すみません。じゃあ僕は、先に外に出てますんで」
二人は憎まれ口を叩きながら部屋を後にすると、別々の方向へと歩き始めた。