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幸せな一日の始まりは、いつも通り仕事から。
月日は巡り、六月某日、日菜子の誕生日である。
大吾は今日も、理玖の手伝いにやって来た。
いつもよりも落ち着かない様子ではあったが、手伝いをしている。
作業が一段落したところで、理玖は大吾に声をかけた。
「……今日は、ここで終わりにしよう」
「でもまだ、いつもほど作業が終わってねえが……」
「……誕生日当日なんだから、ここまででいいよ。君がソワソワしているから、見ている僕も落ち着かないし。花ならもう用意してある。取りに行こう。着いて来て」
そう言うと、先に屋敷に向かって歩き出す。
「……ぼやっとしてると置いてくよ」
「……あっ、待ってくれ先生!こんな広いお屋敷で迷ったら、おら帰れなくなっちまう!」
理玖に置いていかれないように、大吾は慌てて後を追うのだった。