いわゆる、同属嫌悪というやつなのでしょう。
湊人の部屋を後にした透花は、いちご酒のソーダ割りを持って理玖の部屋を訪ねた。
ちなみにこの酒は、いちご好きの理玖のために晴久が手作りしたものである。
動物性食品を摂取できない彼のために、つまみはドライフルーツとナッツを用意した。
理玖は湊人とは違いすんなりと透花を部屋に通すと、酒を飲みながら語り出した。
「……というわけで、僕は聞かれたことに答えただけだ」
それは湊人と同じく、自分の主観が一切含まれない完璧な説明だった。
(こういう、状況を客観視できるところとかそっくりなのだけれど……)
透花がこのようなことを考えていると、理玖は小さなため息を一つ吐く。
ドライマンゴーを飲み込んだ透花は、彼に声をかけた。
「どうしたの?」
「……いや、彼が僕のことを嫌ってるのはわかってるから、普段はできるだけ関わらないようにしてるんだ。それなのに、なんで今日はあんなに絡まれたんだろうと思って」
「うーん。まあ、湊人くんにも色々あるんだよ」
「……色々って、なに」
「それは、私の口から言うことではないかなあ」
「……あんな態度をとられると、僕も彼に対していい感情は抱かなくなるよ」
「……その言い方だと、今は別に湊人くんのこと嫌いじゃないんだ」
「嫌いになるほど、話したこともないし。仕事に対する姿勢なんかは、一応尊敬してるよ。真似しようとは思わないけど」
そう言っていちご酒を口に含んだ理玖を、透花は驚きの表情で見る。
てっきりこの二人は、お互いに嫌い合っていると思っていたからだ。
それが自分の考え過ぎだったことに、思わず笑みを浮かべずにはいられなくなった。
「……なに、にやにやしてるの。気持ち悪いんだけど」
「いやー、二人とも本当は仲が悪いわけじゃないんだなって思って」
「……その言い方は止めてくれないか。まるで、僕と彼の仲がいいみたいじゃないか」
「そういう言い方も、そっくりだよ。さっき湊人くんも言っていたもの」
「………………………………」
「あはは、ごめんごめん。黙らないでよ」
「……君が、変なことを言うからだろう」
「もう少し話してみればいいのに。実際に関わってみないと、わからないこともあるよ」
「……僕と彼が同じ瞬間に気が向いたらね」
「はーい、わかりました。あ、そういえばね……」
透花はこの話をここで打ち切り、次の話題へと移っていく。
二人は昔話にも花を咲かせながら、ゆったりとした時間を楽しんだのだった。