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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第十話 シクラメンな二人
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鶴の一吹き

「はーい! そこまで!」


 聞き慣れた穏やかな声とともに、理玖と湊人の顔に何かが吹きつけられる。

 そこには、霧吹きを手に持った透花が立っていた。


「冷たいんだけど……」

「うわあ、レンズがびしょびしょだよ……」


 突然の出来事に、二人は口論を止めた。

 透花の後ろには、先程まで寝惚け眼だった心がいる。

 二人の喧嘩を止められるのは透花だけだと思い、彼女を呼びに行っていたのだ。


「二人とも熱くなっていたので、物理的に冷やさせてもらいました。バケツで水をかけようかとも思ったのだけれど、そんなことすると片付けが大変だからね」


 透花には、喧嘩していた二人を咎める様子はない。

 いつも通りの柔らかな彼女だった。


「少しは落ち着いた?」

「……ああ」

「……そうだね」

「じゃあ、またここにいて喧嘩になるのも困るからこれで解散!」

「はいはーい。ってか、心ちゃんいつの間に透花さん呼んできたの?全然気付かなかったよ」

「俺もだぜ! 心、お手柄だな!」

「確かに、二人にとっては鶴の一声だろうからな。一番効果的だ」

「まあなんつーか、今回は一吹きだったけどな」

「……もうダメ。眠い……」

「心くん、もう少し頑張りましょう。ベッドと美海ちゃんが待っていますよ」


 透花の声を合図に、皆はリビングを出て行く。


「理玖と湊人くんには個別に話を聞きたいから、後で部屋に行くね」

「……ふん」

「……わかりました」


((長い夜になりそうだな……))


 心の中で全く同じことを考えているなど、二人は知る由もないのだった。

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