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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第十話 シクラメンな二人
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みんなの人気者

 次の日も、その次の日も、大吾は理玖の手伝いをするために現れた。

 庭師としての経験もあり、力仕事も率先して引き受けてくれる。

 そんな大吾を、理玖はいつの間にか重宝するようになっていた。

 本日の作業を終えた理玖は、珍しく街に出ている。

 図書館で本を返却し、帰る途中なのだ。


(人が多いな……。早く帰ろう)


 人混みにうんざりしている理玖の耳に、最近聞き慣れた大きな声が飛び込んできた。


「ほら、じいちゃん遠慮すんなって! この間、腰痛めたばかりなんだべ? この荷物は、おらが家まで運ぶからよ!」

「おぉ、大吾ちゃん。いつも悪いねぇ……」

「おらもいい歳なんだから、ちゃん付けは止めてくれねえか? 恥ずかしいべ……」


 どうやら、大吾が重い荷物を運ぼうとしている老人を助けたところらしい。

 話の内容を聞くに、彼はこれを日常的に行っているようだ。


「あれ? りっくんじゃーん。屋敷の外にいるなんて珍しいね。なになに、買い物?」


 理玖の耳に、先程とは違う、しかし聞き慣れた明るい声が飛び込んでくる。

 理玖のことをこのように呼ぶのは、虹太しかいない。


「何見てんのー? ……って、あれ、佐々木さんじゃん!」


 虹太は、そう言いながら理玖に近付いてきた。


「……彼を知ってるのかい?」

「もちろーん! 困ってる人を放っておけない性質らしくていつもみんなを助けてる人気者だよ~。俺も友達だし☆」

「……そう」

「この辺だけなら、多分俺よりも顔が広いんじゃないかな? とにかくみんなに慕われてる人なんだ~♪」


 理玖が虹太と話している間にも、大吾は様々な人に声をかけられていた。

 お礼を言われたり、食料を貰ったり、どれも好意的なもののようだ。


(僕に優しいなんて言うけど、君の方がよっぽどお人好しじゃないか……)


 理玖は暫くその光景を見ていたが、大吾に見つからない内に屋敷へ戻ったのだった。

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