表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第十話 シクラメンな二人
111/780

この薬は、手だけではなく心にも効果があるでしょう。

 宣言通り、理玖はすぐに戻ってきた。

 先程までは持っていなかった小瓶を、大吾に手渡す。


「……はい」

「これは……?」

「……手荒れによく効く軟膏だよ」


 彼は、隣の薬を保管している部屋にこれを取りに行っていたのだ。


「薬なんて、おら、金が……!」

「……君の手は、大切な奥さんを守るための手なんだろう。もう少し、大事にしなよ。お金はいらない。その薬はあげるから」


 更に理玖は続ける。


「……それで、奥さんの誕生日はいつなの」

「ら、来週の日曜日だべ……」

「じゃあその日、花を取りに来るといい。用意しておくから」


 理玖の言葉に、大吾は目驚きで目を丸くした。


「ほ、本当にいいんだべか!?」

「ああ」

「先生、ありがとうごぜーます! 今は手持ちがないけど、必ず働いて代金を払うからな!」

「……お金はいらないよ」

「へ……?」

「僕は別に花屋じゃない。だから、お金はいらない」

「でも……」

「……僕がそれでいいと言っているんだから、いいんだよ。君、花が欲しくないのかい?」

「ほ、欲しいべ!」

「なら、黙って貰いにくればいい」

「……本当にありがとうごぜーます! この恩は、おら絶対一生忘れねーべ!」


 大吾は理玖の両手を握ると、感謝の気持ちを表すように上下に振り始めた。


(僕って、こんなにお人好しだったかな……)


 大吾に手を振られながら、理玖は居心地が悪そうな表情を浮かべるのだった――――――――――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ