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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第十話 シクラメンな二人
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先生、急患です!

「あの、おらたちお金がないんだべ……」

「本当にいいんでしょうか……?」

「大丈夫っすよ! さぁ、ずずいっと入っちゃってください! じゃあ、俺はこれで!」


 颯が診療室に連れてきたのは、男女の二人組だった。

 見るからに、女性の体調が悪そうだ。

 颯は二人を無事に送り届けると、そのまま診療室を出て行く。

 その慌ただしい様子に、理玖は声をかけることすらできなかった。


「……ここに座って。体調が悪いのは、そちらの女性の方で間違いない?」

「あ、はい……」

「君は、彼女の恋人?」

「は、伴侶だべ!」

「……そう」


 どうやらこの二人は夫婦のようだ。

 理玖は二人が椅子に座ったのを確認すると、問診を始めた。


「まずは、名前を教えて」

「佐々木日菜子です」

「年齢は」

「二十二歳です」

「いつ頃から体調が悪いの」

「一ヶ月くらい前からでしょうか……」

「具体的には」

「微熱が続いていて、たまに嘔吐もしてしまいます……。それと、なんだか眠くて……」

「先生! うちの日菜子はなんかの病気なんだべか!? おら、心配で仕方ないべ!!」


 それまでソワソワしてはいたが静かにしていた夫が、急に大声を出す。

 理玖は表情を変えずに、淡々と言い放った。


「……彼女は体調が悪いんだ。心配なのはわかるけど、大声を出すべきじゃない」

「そ、そうだよな……。悪かったべ……」

「ううん、大吾さんが私を心配してくれてるのはわかってるから……」


 どうやら男の方は、大吾という名前のようだ。

 理玖は彼を見た瞬間から既視感を感じているのだが、特に気にせず質問を続ける。


「……言いにくいことを聞くけど、月経はちゃんと来ている?」

「いえ、ここ最近は……。環境に変化があったので、そのせいかと思うのですが……」


 理玖はため息を一つ吐くと、棚から長方形の箱を取り出し日菜子に渡す。


「……うちには専門的な機具はないから、悪いけどこれを使って自分で検査してきてくれる。入口の近くにお手洗いがあるから」

「………………………………!! わ、わかりました! 大吾さん、私ちょっと行ってくるね」

「あ、ああ……」


 理玖から渡されたものに心当たりがあったのだろう。

 日菜子は大吾に声をかけると、箱を片手に診療室を出ていった。

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