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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第九話 薔薇の笑顔は美しい
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願い事が叶いますように

 後日、颯と心は数人のクラスメイトと街に繰り出していた。

 今日はこれから、映画を観に行く予定なのだ。


「……なんつーか、結城の服かわいいな」

「結城くんだから着こなせるって感じの服装だよね! 僕もかわいいと思う!」


 心の服装を見たクラスメイトたちが、次々に声をかけてくる。

 心は、美海と同じように桃色のポンチョに黄緑色のズボンを合わせていた。

 十代半ばの少年が普通は着ないであろう服装だが、心にはよく似合っている。

 美海とお揃いの洋服を褒められた心は、満更でもなさそうだ。


「……颯くんが選んでくれたんだよ」

「おう!」

「緒方くんって、自分がオシャレなだけじゃなくて人の服選ぶセンスもあるんだね!」

「俺の服も選んでくんない? なーんかイマイチかっこよく決まらないんだよな……」

「いいぜ! じゃあ、映画終わったら買い物するか!」

「緒方! 俺も!」

「俺も頼む!」

「わかったって!」


 彼らの今日の予定は、映画を観てからショッピングに決まったようだ。

 映画館までの道のりで、クラスメイトの一人が颯のミサンガに気付く。


「緒方、ミサンガとかつけてたっけ?」

「最近貰ったんだ! かっこいいだろー!? やんねーぞ!」

「貰ったってまさか、女か!?」


 その発言に、他の友人たちもざわつき出す。


「ちくしょー! このリア充め!」

「女嫌いのお前がプレゼント受け取るとか、一体どんな子なんだよ!?」

「笑顔が可愛い子だな!」

「即答かよ!!」

「のろけんなー!」

「……お前の昼飯っていっつも手作りだけど、もしかしてその子が作ってんのか!?」

「いや、それは違う!」


 ちなみにお弁当は、晴久の手作りである。


「その子の名前は?」

「美海ちゃんだ!」

「みうちゃん! 名前がかわいい……!」

「もう、なんなのお前! その子と付き合ってんの!?」

「いや、まさか! そんなわけないって!」

「なんでだよ!? プレゼント受け取る時点で、お前だって好意があるんじゃん!」

「だって、美海ちゃんはしょ……」


 “小学生で、心の妹だぜ”と答えようとしたのだが、大きな叫び声でそれは遮られた。


「……あぁー!! 結城も、緒方と同じミサンガしてる!」


 友人の一人が、心の手首にも同じミサンガが巻かれていることに気付いたのだ。


「お前も!? お前も女子から貰った!?」

「……うん」


 心は、こくりと頷く。


「色まで完璧に同じってことは、まさか同じ子……!?」

「お前も“みうちゃん”から貰ったのか!?」


 心は、再び頷いた。


「”女嫌いの緒方”と”無関心の結城”にプレゼント渡せるとか、すごい子だな……」

「おい! その子のこともっと詳しく聞かせろよ!」

「……ヒミツ」


 心は、今度は首を縦には振らなかった。

 彼は、自分や家族のことを人に話すのがあまり好きではないのだ。


「映画、始まるよ……」

「ほんとだ! 歩いてたら間に合わなそうだから、走ろうぜ!」

「緒方くん! 待ってよー!!」

「一番速いお前が真っ先に走り出すなよなー!」


 颯の提案を受け、皆は駆け出す。

 話題が逸れたことに安心していると、心はあっという間に取り残されてしまった。


「しーん! さっさと来いよー! 置いてくぞー!」

「……うん」


 颯に促され、心も走って皆の後を追う。

 颯と心、二人の手首で揺れるミサンガ。

 二人はそれに、どんな願い事をしたのだろうか――――――――――。

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