少女の笑顔は最高の武器なのです。
「みうちゃん、今日はいつもとふんいき違うね!」
「髪型とか服とか、かわいい!」
「すごーい! 髪の毛ネコさんみたい!」
翌日美海がいつものように学校に行くと、女の子たちが次々に声をかけてきた。
買ったばかりの桃色のポンチョに身を包み、颯にやってもらった猫耳ヘアではにかむ美海はいつもよりも何倍も輝いて見える。
「そ、そうかな?」
美海は照れたように言った。
「うん! やまとくんもそう思うよね?」
一人の少女が、美海と一緒に登校してきた大和に声をかける。
大和はこくりと頷くと、“みうちゃん、とってもかわいいよ”と書いた紙を見せた。
その様子を、面白くなさそうに見ている少年がいる。
「……お前はなんで、そんなにさらっと言えるんだよ!!」
顔を真っ赤にした、隼輔だった。
「えー、じゃあしゅんすけくんは、みうちゃんがかわいくないって言うの?」
「ひどーい! みうちゃんかわいそう!」
「そ、そんなことは……!」
女子の気迫に、隼輔は思わずたじろいでしまう。
大和が間に入り止めようとしてくれてはいるのだが、声が出ない彼には難しいようだ。
こういう時、仲裁してくれるのは毎回美海の役目だった。
隼輔は、助けを求めるように彼女に視線を送る。
しかし、今日の美海はいつもと違った。
女子たちの言ったことを真に受けているのか、少し悲しそうな顔で俯いているのだ。
そんな表情を見て、隼輔が黙っていられるはずがない。
「……く、くっそー! 似合ってるに決まってんだろ!!」
さすがに、かわいいとは言えなかったようだ。
耳まで真っ赤にした隼輔は吐き捨てるように言うと、走り去ってしまった。
「なーんだ! しゅんすけくんだって、かわいいって思ってるんじゃん!」
「よかったね! みうちゃん!」
「うん!」
その場に残された美海は、花が咲いたような笑顔を浮かべるのだった。