平和な朝の風景
「……颯くーん、助けてー!」
美海と入れ違いで、虹太が焦った様子で部屋に入ってきた。
その髪の毛は、寝癖で酷い有様になっている。
「自分で直そうとは思ったんだけど、余計にはねちゃってさー……」
しかし颯が気になったのは、髪の毛よりも服装の方だった。
「相変わらず、派手な色遣いっすね……」
虹太は原色同士を合わせるという、個性的な色の選び方をすることが多い。
「え? そうかなー?」
「うす。でも、妙に地味な日もあるし、虹太さんってあんまり服装が定まらないっすよね」
「……まあいいじゃん! これも個性の一つだって!」
「それもそうっすね! じゃあ、座ってください!」
虹太が椅子に腰かけると、颯はその寝癖を丁寧に直していく。
「いっつもありがとね~」
「いえいえ! 虹太さんの髪は癖がつきやすいから仕方ないっすよ! もういっそ、短くしたらどうすか? 短髪も似合うと思いますよ!」
「いやー、俺結構華奢だから、短いとなんか貧相に見えそうじゃない? 短髪は漢の勲章って感じだから、蒼一朗さんくらい鍛えてないと見劣りするって~」
「じゃあ、坊主はどうすか? 頭の形綺麗ですし! 確かこの辺にバリカンが……」
「……坊主はもっとダメな気がする。それに、坊主のピアニストってなんか怖くない? ってか、颯くん! マジでバリカン探さなくていいから! 俺は今のゆるふわパーマが気に入ってるから、バリカン探すの止めてー!」
これが、彼らの朝の日常風景である。
一色隊は、今日も平和だ。