楽しみすぎて眠れない!
「ひどい目にあったぜ……」
心と美海が服を見ていると、首をさすりながら颯がやってきた。
「……さっきのは、颯くんが悪いと思うよ」
「そうか? ほんとのこと言っただけなのになー?」
颯はまっすぐな性格のせいか、空気を読めない言動をすることが度々あるのだ。
その度に注意されても、本人はあまり気にしていない様子である。
「それよりも、欲しいやつあったか?」
「僕は別に、なんでもいいから……」
「洋服屋さんなんてほとんど来たことないから、みうよくわかんない……」
「じゃあ、俺がコーディネートしてやろうか?」
「え!? はやてにい、いいの!?」
颯からの提案に、美海は目を輝かせた。
彼のセンスに任せれば、自分に似合う可愛い服を選んでくれるに違いないからだ。
「おう! いいぜ! 心もそれでいいか?」
「うん……」
「じゃあ選んでくから、こういう柄が好きとか、この色は嫌だとかあったら言ってくれよ!」
「はーい!!」
「せっかく兄妹なんだし、似たような服でもいいかもなー。心はかっこいい服ってよりも、かわいい服の方が似合いそうだし……」
颯は独り言を言いながら、二人の服を選んでいく。
その全てが、美海にはキラキラと光って見えるのだ。
なんでもいいと言っていた心も、美海とペアルックとまではいかなくとも似たようなコーディネートに、若干ソワソワしている。
由莉が大幅に値引きをしてくれたことにより、彼らは数着の服を購入できた。
浮いたお金で、先程のアクセサリーショップで美海用のヘアアクセサリーをいくつか買って帰る。
「美海ちゃん、明日は早速今日買った服着て学校行くのか?」
「うん! せっかくはやてにいにかわいい服選んでもらったんだもん! はやく着たい!」
「じゃあ明日の朝、着替えたら俺の部屋に来いよ! 今日買ったヘアアクセサリーの中から、つけたいやつを選んで持ってくるのを忘れんなよー?」
「……髪の毛、結んでくれるの!?」
「おう! どんな髪型でもお任せあれだ! やってみたいスタイルがあったら考えとけ!」
「やったー!!」
いつも美海は、髪の毛に何も手を加えずに登校している。
結んでもらえるというだけで、とても嬉しそうだ。
三人は、美海を真ん中に仲良く手を繋いで屋敷までの道を歩く。
その夜美海は、翌日への期待が膨らみすぎてしまいなかなか寝付くことができなかった。
しかし、心に優しく撫でられていると、いつの間にか夢の世界に旅立っていたという――――――――――。