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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第九話 薔薇の笑顔は美しい
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おねえちゃん? おにいちゃん?

「ユリちゃーん! 来たぜ!!」

「あら、いらっしゃい颯ちゃん」


 颯は、とある服屋に心と美海を案内した。

 彼がいつも服を買っている、馴染みの店なのだ。


「あんた、この間新作買ったばかりじゃないの。そんなに買い物ばっかして大丈夫なわけ?」

「今日は、俺の買い物じゃないんだよなー! じゃじゃーん! 友達を連れてきました!」

「……こんにちは」

「こ、こんにちは……」

「結城心くんと、その妹の美海ちゃんだ!」

「こんにちは。私の名前はユリよ」

「ユリちゃんはこの店の店長さんなんだぜ!」

「颯ちゃんはお得意様なのよ。それにしても、友達と一緒に来るなんて珍しいじゃないの」

「こいつらの服を選びに来たんだ!」

「……なるほどね。あんたら颯ちゃんの友達にしてはパッとしないもんねえ」


 ユリは、二人の服装をマジマジと見る。

 心は特に気にしていないが、美海は頭の中がパニック状態だった。


(はやてにいがおしゃべりできるってことは、この人は男の人なの……!? 見た目じゃよくわかんないけど、しゃべり方は女の人だよね……? 女の人でも、とうかねえみたいにおしゃべりできる人もいるのかな……?)


 この人物は、いわゆるオネエと呼ばれるものだった。

 普通の女性ならば、颯がこのように気軽に会話ができるはずがない。

 しかし、美海はそういう人種に今まで出会ったことがないのだ。

 混乱するのも無理はないだろう。


「あ、あの! ゆりおねえちゃん!」


 美海は、口調や名前から”彼女は女性である”という答えを導き出したのだ。

 その言葉を聞くと、ユリは顔を綻ばせる。


「……おねえちゃんって、もしかして私のこと?」

「う、うん……」

「きゃー! 何よこの子! 超いい子じゃない!!」


 ユリは美海を抱き上げると、喜びのあまり頬ずりをした。


「う、ジョリジョリする……」

「もう一回呼んで!」

「ゆ、ゆりおねえちゃん……」

「私は嬉しいわ! 今日は特別にサービスしちゃう!」

「え、マジで!?」

「ええ。格安にしてあげる。欲しいものなんでも持っていきなさい!」

「よっしゃー!! じゃあ、早速選びにいこうぜ!」


 初対面で女性扱いされることなど、今までの人生では皆無だったのだろう。

 そんなユリにとって、美海の言葉は嬉しいものだった。


「あ、美海ちゃん。その人男だからな!」

「お、男の人……?」

「おう! 本名は五十嵐由莉! ユーリって呼ぶと怒るから、俺はユリって呼んでんだ!」

「颯ちゃん、あんたって子は……」


 ユリ、改め由莉は美海を放すと、後ろから颯の首にホールドを決める。


「せっかく人がいい気分になってんのに、余計なこと言うんじゃないわよ!」

「え!? なんで!? 本当のこと言っただけじゃん!!」

「生意気なことを言うのは、この口かしらねえ~?」

「ちょっ! ユリちゃんギブギブ! マジで絞まってるって!」

「は、はやてにい……」

「美海ちゃんはなーんにも気にしなくていいのよ~♪」

「でも……」

「颯ちゃんは私とお話があるから、先に二人で服を選んでらっしゃいな」

「……はい。美海、行こう」

「う、うん……」


 笑顔で促された兄妹は、そそくさとその場を後にする。

 その後店内には、断末魔の叫びが響き渡った――――――――――。

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