異説鬼退治Ⅱ④
「ここか? キティちゃんのお友達の家は?」
丸刈りにサングラス、アロハシャツのいかにもな人が桃太郎の家にやってきました。肩に担いでいるのは鉄球です。重そうです。
「まずは一発、挨拶かましておくか」
そう言って、鉄球を振り回し始めました。やがて、鉄球は風の波を生み、衝撃波を発生させます。
「そこな、あんちゃん」
がらっと玄関を開けてお婆さんが出てきました。男は当然無視します。ロリでツインテールな可愛い女の子以外は興味ありませんから。
「何してるの? お婆さん」
ツンデレラが玄関から顔を出します。
「ふぉおおおおおおおおおおおおお」
男はツンデレラを見て吼えました。鉄球の回転運動を瞬時に止めます。ど真ん中直球ストライクだと感じたのでしょう。
「俺の嫁になれ!」
まるで若い頃のお爺さんのようですね。変態が二人に増えたと計算して間違いなさそうです。
「嫌よ、誰があんたみたいなダサい男と」
ばっさりと断るあたりが素敵です。
「こう見えてもな、俺様は……」
この男、変態に見えても(事実変態ですが)何か特殊な才能を秘めているのでしょうか。
「英検194803279級なんだぜ?」
「ただのアホじゃないの」
そこに桃太郎が戻ってきました。買い物袋を両手に持っています。お手伝いのダイゴロウとポアロも一緒です。
桃太郎は目の前にいる変な男を見ると、顔をしかめました。また、ややこしいのが一匹増えたぐらいの感じです。
「ただいま。ツンデレラ、お客様?」
「ただの変質者よ。今、大江戸警察を呼ぶわ」
「駄目だよ。警察は昨日お婆さんが撃滅したばっかりで使い物にならないよ」
「そうだったの? 使えないわね。いいわ、私の組の戦闘部隊を呼び寄せるから」
「いやいや、いかにもややこしそうな奴相手にそんなことしたら、後が面倒だよ」
「それが本音なの? あなたも臆病ね。女は戦わなくてはいけない時があるのよ」
「でも、相手を選んだ方がいいよ」
「あの変態バカを撃破して、さっきゲームを中断された恨みを晴らすのよ。せっかくラスボス手前まで進んでいたのに」
「何だって? シュトルヒ=ザビエルンバ18世が天下聖天使大魔王エレゼクスゴグエウ1938世に戦いを挑むところだったりするの?」
「そうよ。ザビエル=クエスト19章『育毛剤を求めて』。これほどのクライマックスを邪魔されたのよ? あのロリコンをすりつぶすくらいは許されるはずだわ」
「助太刀いたす!」
「おい、さっきから俺様置いてけぼりなんだけど」
桃太郎は面倒くさそうに男の方を向きました。なるほど、アロハシャツを着ていてグラサンに坊主頭。あまりお近づきになりたくない部類の人間です。
「成敗いたす!」
桃太郎は刀を抜きます。銃刀法違反とかいってはいけません。この家自体が法律を完璧に無視した存在ですから。
「まあ、待てよ坊ちゃん。ここはエレガントに英語の勝負といこうぜ?」
成績優秀な桃太郎に英語の勝負を挑むからには相当自信があるのでしょう。
「まあいいよ。ここで女の子に流血は見せたくないし」
桃太郎は刀を納めます。風がひゅうっと吹きました。
「いい度胸だ。センター試験で2点の、この俺様に勝てるかな? いくぜ、問題はこれだ。This is a pen. これを日本語訳してみろ」
「これはペンです」
「バカちーん! 『これはキティちゃんのお気に入りの築地にある玉子焼きを社長が焼き上げたフライパンです』が正解だ! お前もまだまだだな」
桃太郎は口をあんぐりと開けたまま、固まってしまいました。予想だにしていなかった解答が目の前に示されたからです。
おかしい。どこからキティちゃんが出てきたのだろうか。というかpenはどこに行ったんだろうか? 桃太郎は悩みますが、もちろん答えは出てきません。
「まあ、もう一問付き合ってやる。I am Taro. これを訳してみろ」
桃太郎は考えました。この男のことだから、必ずどこかにキティちゃんが出てくるはず。
「これに正解したら、ここから撤退してもらう。いいですね?」
「まあいいだろう。お前にキティちゃんの壁を越えられるかな?」
大の男がキティちゃんとか言ってるのは滑稽ですが、笑いを堪えて、桃太郎は勝負に出ました。
こんばんは、Jokerです。
何書いてるんだろうと思いつつも、書いてしまいました。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……