異説鬼退治Ⅱ⑩
「さあ、行くよ! これが最後の鬼退治だ!」
桃太郎は号令をかけます。
「まず……」
ダイゴロウとポアロはすでに準備万端。いつでも、主の命令を行動に移せるように構えています。
「ホームズにグレネードボムきび団子をくくりつけて、投擲!」
ポアロはくちばしでちゃちゃっとホームズにきび団子を括り付け、それが終わるとダイゴロウがそれをくわえて思いっきりお婆さんに向けて投げつけました。
「甘いわ!」
お婆さんは持っていたトゲ付バットでホームズごとかっ飛ばします。
「ワシを誰だと思うておる? ワシはグレートヴァヴァア……」
「長いからもういいよソレ」
お婆さん、肩を落としてさめざめと泣いています。
一方、お爺さんは鼻息を荒くしてツンデレラに襲いかかろうとしていました。
「ぐふふ、今日こそお前をワシのものにするのだ! 結婚式はいつがいいのじゃ? それから結納は?」
ツンデレラはふふんと余裕の顔です。
「そんな戯言喋ってていいのかしら?」
「良いのじゃ。嫁へのエキセントリックなプロポーズが必要じゃからの」
「ふふふ、その余裕何分保てるかしらね、長倉」
ツンデレラの合図とともに、家の中から大きな段ボール箱を抱えた長倉が現れます。
「お嬢様、予定通りです。そこのお婆さん、これを見てください!」
長倉はお婆さんの前に大量の本を投げました。
エロ本はもとより、『上手な浮気の仕方~あの娘のハートを盗み撮り~』『美少女図解~金髪貧乳少女騎士幻想~』『滅殺の老人介護~突撃ババア暗殺大作戦~』などの本が地面にばらまかれます。
お婆さんはそれを見て
「おにょれ! このエロジジイ! 桃太郎の前にお仕置きしちゃる!」
と予想通りの行動に出ます。
これで第一ステップはクリアです。
ツンデレラは長倉に若い男を退避させるように命じました。
もうすぐここは桃太郎たちとお婆さんの決戦の舞台になるからです。
お爺さんはキィエエエエと奇声を発しながらロケットランチャーとともに襲い来るお婆さんに対して
「弱点は調査済みじゃ!」
と懐から、紫色に変色したみたらし団子をお婆さんの口めがけて投げました。
それは見事にお婆さんの口に入り
「……逆ハーレムの夢も、世界征服の夢も、ここで終わるのか」
という素晴らしいお言葉を残して倒れます。心なしか顔がにやけてるのは内緒です。
「ぐふふ、ロリを手に入れ、ワシは甘い結婚生活を謳歌するのじゃ!」
暴走したお爺さんがここまで強いとは誰が予想したでしょうか。
毎日毎日、さんざんお婆さんにボコられて放り出される運命を背負ったお爺さんが、ここにきてお婆さんを倒し、最後の壁として桃太郎の前に立ちふさがっています。
お爺さんはふんどし一丁になって、天に拳をかざし
「何よりも強いのはババアではない! 幼女を求める意志じゃ!」
と割と最低な決め台詞をのたまいました。
頭に女性の下着をかぶっているので、どこをどう見ても極めつけの変態です。言ってることも変態ならば、姿かたちも変態。まさにキングオブ変態でした。
「そして!」
お爺さんは桃太郎を指さします。
「桃太郎よ! お前をそんなモテ男に育てた覚えはない! お前はワシの引き立て役として育てたつもりであったのに!」
何かとんでもなく自分勝手なことを仰っていますお爺さん。
「今こそ、真の主役の座を奪還し! この爺がモテ王ということを世界に証明してやろう!」
と意味不明な供述で締めくくりました。
桃太郎と下僕二匹はため息をついています。
ええと、どこから突っ込めばいいんでしょうか。
そんな感じで。
「うん、やっぱり決着は身内の僕が責任もってつけなくちゃね」
ツンデレラを守るためにも、と桃太郎は付け加えます。
今まで抜いていなかった正宗を抜きました。
「ダイゴロウ、ポアロ。僕に力を貸してくれ」
二匹は桃太郎の後ろで構えます。え? ホームズ? 多分今頃家の中でみたらし団子食ってくつろいでいるはずです。
ツンデレラは心配そうに桃太郎を見守ります。
ヒイラギは彼女の肩に手を置いて
「彼なら大丈夫だよ」
と優しく言いました。
それは彼女にとって、何より安心をもたらしてくれる言葉です。
「そうね」
とツンデレラは静かに頷きました。
桃太郎は強い男の子です。
きっとツンデレラを守ってくれるでしょう。
それをヒイラギはこの数時間で実感したのでした。
「行くぞ、桃太郎! ワシのマルハゲドンハーレム計画を邪魔するヤツは全員主役の座から引きずり降ろして、やられ役に左遷してやるぞい!」
お爺さんはふんどしの中から取り出した大根を構えて、桃太郎たちに突撃をかけます。
こうして、最終決戦第二幕が始まりました。
こんばんは、jokerです。
次で最終話になる予定です。
ホームズをいじめすぎてしまったきらいがありますね。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……