救出、脱出
~仁side~
黒い塊にのまれていく慧斗を、俺はただ見ていることしかできなかった。
『うふふっ、一人になっちゃったねっ』
ギッとおかっぱを睨む。
『そんなに怖い顔しないで。すぐに合わせてあげるから』
ねっ、と首を傾けるおかっぱに吐き気がした。
おかっぱの近くにいる竜真はピクリとも動かない。
最悪の場合が頭によぎる。
駄目だ、俺が弱気になってどうする!
頭を振り雑念を追い出す。
冷静になれ。最悪の状況は回避するんだ!
武器になるものは硫酸と調理室から拝借したナイフ、フォーク、スプーン、慧斗とが作ったおにぎり(仮)か………。
あ、そうだ。
ポケットに手を入れる。
『何をしても無駄だよ!もうすぐみーんな私と一緒になるんだ!!』
「ほざけ」
ナイフを出しておかっぱに投げる。
『あは、そんなの当らな…っ!?』
言葉を詰まらせたおかっぱの頬には赤い線がはいっていた。
『な、んで…なんでなんでなんでなんで!!?なんで当たるのよ!!!!』
「うるせぇんだよ」
持っているナイフを5・6本連続で投げる。
『っ、当たらなきゃ意味ないわ!』
ナイフは避けられたが、それが俺の狙い。
さっきまでおかっぱがいた場所に向かって走る。
『しまっ…………』
おかっぱの目が見開かれたが、もう遅い。
倒れている竜真を素早く回収する。
「竜真は返してもらうぞ」
『っ、いいわ、もう一人いるもの!!』
おかっぱが叫ぶが、残念だな。
「慧斗も、渡さない」
おにぎり(仮)を取り出して黒い塊に投げた。
それは、黒い塊の中に飲み込まれていった。
――――ギッ、ギャアアアアアアアアアアアアア!!!!
黒い塊は叫びながらのたうち回る。
効果抜群だな……。
『何!?どうしたの!?』
驚いて駆けよったおかっぱでさえ吹っ飛ばされていた。
よし。あとは慧斗次第だな。
こっちは竜真を起こすことに専念するか。
~慧斗side~
――――――暗い
ここは……?
………ああ、そうか。俺、黒い物体に飲み込まれたんだっけ。
それにしても、寒い……な……。
体を丸めると、足元に何かが絡みつく感触があった。
『寒い『怖いよ『ひトりは『ヤダヤダヤダ『助けテ『一緒『あなタモ『イっしョに――――』
気持ち悪いのに、払いのける気にもなれない。
もう、このまま飲み込まれてもいいや………。
ぎゅっと膝を抱え込む。
――――――……とっ
微かに聞こえた、声。
――――――慧斗っ!!
仁、の、声か…………?
――――――受け取れっ!!
そっと顔を上げると、何かを投げた後の格好の仁が目に入った。
『ウあああアアあ『ガアあああア『ぎゃあアアあああああっ!!!』
そして耳をつんざくような悲鳴。
絡みついていたものもなくなった。
“ソト”の世界に、出られる――――。
~仁side~
塊の中から手が飛び出した。
その勢いに乗って体もずるずると出てくる。
「げほっげほっ、ん゛っ」
凄い咳き込んでいるが、無事そうな慧斗。
よかった……。
「あ゛、あ゛ー、あー。……ふう、ひでぇ目にあった」
「お帰り、慧斗」
「おう、ただいま」
竜真を担いで慧斗に近づき、拳を合わせた。
「んで、もうあいつは殺っていいんだな」
「ああ、竜真はここにいるしな」
『あ……ああ………』
黒い塊を見ながら呆けているおかっぱに慧斗が近づく。
その手には小さな鳥居があった。
「じゃあな、こっくりさん」
慧斗が投げた鳥居がおかっぱに当たると、音もなく、吸い込まれていった。
「はい、完了っと」
鳥居は、慧斗が粉々に壊した。
こっくりさんの正しい対処法?がわからないです
知っていたら是非教えて下さい!