素直なあいつ
「探すにしても手掛かりがないからな……」
確かに……。
「そこらへんの幽霊に聞いてみるとか」
「素直に教えてくれるとは思えない」
チッ、いいアイデアだと思ったんだけどな。
大体素直に教えてくれる奴なんているわけ――――――。
「………いたな、素直に教えてくれそうな奴」
「そんな奴いたか?」
仁はわかってないみたいだが、適任な奴がいるじゃないか。
それに出現場所だって知ってるしな。
「よし、さっそく行くぞ!」
――――女子トイレ前――――
「ああ、なるほど。確かに素直に教えてくれそうだな」
「だろ?では早速呼びますか!」
そいつを呼ぶための儀式?を手早く済ませる。
「さっさと出てこいや!」
待っても全然出てこなかったからドアを蹴り飛ばしてやった。
『ちょっ、何すんだ!!』
出てきたのはトイレの住人、花子さん。
「俺を待たせたお前が悪い」
『ほんの数秒じゃねぇか!』
「反論は受け付けない」
「早く本題に入れ」
白熱しかけていたところを仁に止められた。
もうちょっとしたかったけど仕方ねぇか。
「おい、花子さん。お前、おかっぱのガキ知ってるか?」
『はあ?なんであたしが教えないといけないんだよ』
「ほう?またボコボコにされたいみたいだなぁ……?」
『ヒッ、い、いや、次は負けねぇ!!』
「上等だ!」
「待て」
花子さんをボコろうと意気込んだところを仁に制される。
『あ?なんだよ、テメェ。邪魔すんなよ』
花子さんは眉間にしわを寄せて不機嫌をあらわにしているが、俺は見た。仁がズボンのポケットから瓶を取り出すところを。
「悪いがお前と戯れている暇はない。これをかけられたくなかったら早く質問に答えろ」
そう言いながら“危険”と書かれた瓶を傾ける。
その瓶から出た水滴が床に落ちると、ジュッと音がした。
『な、なんだよ、その液体は』
「硫酸だが?」
『はん!そんなものあたしら妖怪に効くわけ……』
「ちなみに効果は実証済み。……試してみるか?」
『是非とも質問に答えさせてください!!』
………いや、俺の時もそうだったけどさ、こいつ変わり身早いよな。
『それで、おかっぱのガキのことだっ……でしたよね。知ってますよ』
「今すぐ教えろ」
『いいっすよ。っと、そういえば、一人足りなくないですか?』
「ああ、竜真はそのガキに捕まったんだ」
『え、それ本当ですか………?』
花子さんの目が見開かれた。
『そうだとしたら、相当危険ですよ………』
正直コッツーとどっちにしようか迷いました。