カスタム
豹変します。
ピロン。
晩ごはんを食べて部屋でくつろいでいると、朔からメッセージが来た。
『抽選が当たったんだ!明日みんなで「カスタム」しに行こうぜ!』
「カスタムって最近聞くようになった『バーチャルゲーム』の?」
「そう!やべーだろ!」
「あれって企業や高齢者施設で試運転が始まったばかりじゃなかったっけ?」
「いや、最近一般解放されたと聞いたことあるけど」
「この朔の豪運で引き寄せたのだ!」
「お前、これよく当てたな。5枚のチケットに対して528エントリーがあるぞ?」
「へへへ、5枚連番で申し込んでその塊を引き当てたのだ!」
「大学受験より狭い門を突破したんだ」
「そう!だからー」
「大学受験時に残ってる『運』はもうないから思いっきり遊べよ?」
「いやいやいや、穏やかじゃないな、透くんよ。」
「(^O^)」
「笑うな!とにかく明日放課後集合な!」
「うん」
「分かった」
「OK」
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
終業のチャイムが鳴り、ホームルームも終わると私たちは足早に鞄を持って校門前に集合した。
抽選チケットに書いてあるゲーム会場に向かいながら、みんなの会話は自然と今からやるゲームのことになった。
「楽しみだねー」
蓮が笑ってワクワクを抑えられない。
「どんな感じなんかな?」
透が聞く。
「さあ?ただ実体験できるって、映画の世界みたいじゃね?」
朔が答える。
「ゲーム下手でも楽しめるかな?」
私はちょっと不安だ。自慢じゃないけどゲームは下手。操作方法が分からないし、何が切り替わっていくのかわからないままゲームオーバーになってしまうことが多い。
「ゲームの中だけど、今みたいに生活しているようなイメージでも出来るんだってよ。どういう状況を遊ぶのかもこっちで選べるらしい」
「怖くないのがいいな」
「ホラー系とかないの?」
私と透のセリフが被った。ホラー系でこんなにリアルって、考えるだけでも恐ろしかった。
「ホラーだったら灯の面倒は誰がみるのよ」
「え?蓮」
「だから嫌なのよ!」
「蓮はホラー大丈夫なの?」
「いや、全然!けど私より怖がるのが居るから印象として目立ってないだけって感じかな?」
「あ、私か」
「外国のバーン!って勢いで怖いのも嫌だけど、日本の『ただ居る恐怖』は別格で怖いから本当に無理」
蓮が灯と話しながらそこまで言うと、視線を透の方に移しながら、
「たぶんそういうことを言うとこの眼鏡は『じゃあ日本のホラーにしよう!』とか嬉々として言うからホラーは本当にやめとこう」
「失礼な!なんのことだか10割くらいしか分からないんだが?」
眼鏡を直しながら透は言う。
「完全に一致してんじゃねえか笑」
「そういう時はご名答って言うんだと思うよ」
そんなことを話しながら、自転車に跨り15分ほど自転車で移動した。
会場についた。
ゲーム参加用のチケットを係員に見せて中に通される。ショッピングモールとかに置いてあるような卵型のマッサージチェアのような機械が5つ設置してあった。その周りをバリケードテープで囲われている。
「すごい特別感」
「にしししし、どんなのを体験したのかメモして自慢してやろう」
朔はA4のノートとペンを持っている。
「メモの準備をしてメモを忘れるんだろ?」
「はぁ!?」
「こんなとこで喧嘩しないでよ、まったく」
それぞれが機械に座り、右手の中指の先にマイナンバーカードを設置、頭にヘルメットのような物を被せられる。
「今回は4名ですので誰かNPCとしてゲームに参加させることも可能です。」
「NPC?」
朔が反応する。
「もちろん選ばなくても大丈夫です。NPCはみなさんの記憶の中から選ばれます。格闘ゲームのようにキャラクターを選ぶ画面が現れますのでその中から選んでください。30秒を過ぎるとランダムで選ばれます。」
「それは誰を選んでもいいんですか?」
私が訊く。
「はい、みなさんの記憶にある人物であれば大丈夫です。また、NPCとして設定されたキャラクターは皆さんと同じように動きます。」
「へえ、そういうところもリアルなんだ」
透が感心している。
「今回選ばれたゲームは『望む能力を体験できる世界』。アニメや映画であるような非現実的なことでも「こんなことできたらいいのに!」って願望を一人一つずつ体験できます。また、みなさんの選んだ願望、能力はお互いに干渉し合いません。」
「はい?」
朔は理解できなかったようだ。
「干渉し合わないというと難しく聞こえるかもしれませんが、1人2つの力は働きませんよって覚えておいていただければ大丈夫です。」
「朔でも分かりやすいようにめっちゃ砕いてくれたw」
「………?」
「いや、分かってないんかい」
「ははは、現実世界で1時間の体験になりますが、ゲームの中での時間はみなさんで設定していただいて大丈夫です。」
「そりゃMAX遊ぶ!異論は認めない!」
「ゲームが終わった後再度アナウンスしますが、ゲーム内の記憶を残すことも可能です。その際は脳が体験した時間分寿命が縮むイメージなのでお気をつけください。記憶を残さない場合はゲーム最後の感情だけが残ります」
透はうんうんと確認しながら聴いている。私と蓮はなんとなく聞いている。朔はそわそわしている。
「まずはキャラクター設定になります。ゲームが始まると五感がすべてゲームの中と同期します。マイナンバーカードと同じ名前を設定して遊んでください。違った名前だと認識されないので注意してくださいね」
係員が電源を入れると、視界が変わった。
真っ暗の中にボヤーッとウインドウが光を放っている。
【名前を入力してください】
フルネームを入力した。
【性別を入力してください】
女性
【生年月日を入力してください】
入力した。
【あなたの能力は?】
これは昨日考えてて決めていたことがある。
でもどう書いたらいいのかな?
思いついた通りに入力してみた。
『長すぎます。内容を短くしてください。』
弾かれた。
そしたらこうやったらいいのかな?
『長すぎます。内容を短くしてください。』
えぇ!?これでもダメなの?どうしよう…せっかく考えてきたのに。じゃあこうしたら?
何度も弾かれていると入力画面に今までなかった文字が出てきた。インターネットで検索したら出てくる『もしかして〇〇』みたいな。入力したものが通るようにAIで提案されたものを見てそれを選んだ。
【あなたの能力を受けつけましたー処理完了】
『お待たせいたしました。それではどうぞ』
真っ暗な視界に白い光でを放つドアが出てきた。そこを開けて進むと6メートル四方くらいの、一見ログハウスのような空間だった。一辺に2つずつ扉がある。天井も高く部屋全体が明るい。みんなすでにいて、それぞれに部屋の様子を確認していた。
「やっと来たか」
「遅かったねー」
「うん、能力の入力で何回も弾かれちゃって」
「無事に設定できた?」
「なんとか」
『みなさん揃いましたね。それではゲームの時間を設定してください。』
感情のない電子音が流れてくる。
【 最低時間1時間ー最高時間8760時間 】
「せっかくだから最高時間にしようぜ!」
朔が周りの意見をまったく聞かずに入力してしまった。今回抽選で当てたのも朔だから朔の言うことに異議は出ないだろうけど。
『8760時間で設定いたします。開始日を設定してください。』
〇月△日
「これはいつからでもいいな。初期設定のままでいいよな?」
初期設定は1月1日を指している。
朔は私たちに訊いてくれているけど誰かが口を開く前に決定ボタンを押してしまった。
『1月1日から8760時間で受けつけました』
『NPCを選んでください』
アナウンスとともにキャラクター選択の画面が現れた。場所を選ぶ項目が出てきた。
〇〇高校→3-1と選ぶと、自分たちのクラスメイトが出てきた。
「すげー!」
記憶の中から選ぶことができるって言ってた。
「誰でも選べるのかな?」
「いけるんじゃね?」
「じゃあ澪がいい!」
迷いはなかった。今日一番力強い声だった。
「なるほど、澪か。どこにいるんだ?」
30秒の選択時間は残り15秒になっていた。
「病院かな?」
場所を高校から病院に移す。病院を選択すると、見覚えのあるお医者さんや看護師さんがバーッと出てきた。入院患者は含まれていなかった。時間がない。
「時間がない、ランダムになりそうだ」
「そんなぁ」
時間切れで人影は「?」のまま、誰が来るのかわからない状態で静かになった。
静寂が私たちを包む。今ゲームの中で設定中なんだろう。
静寂を破ったのは透だった。
「登山に訪れた男女4人が程よいところでログハウスを見つけ」
「なんかホラーみたいにしようとしてる?」
蓮が透のセリフを遮る。
「1番最初に狙われるのは蓮」
一瞬ニヤっと笑って透は続ける。
「止めなさい」
みんなで円を描くように部屋の中心の方を向いていた。
「蓮が襲われたのを灯が見てしまって」
朔が悪ノリしてくる。
ガチャっと音がした。私の正面にある扉が開いた。
え?本当にホラーなの!?さっき望みの叶うって言ってたよね?え!?ホラー!?私たち襲われるの!?何に???
一瞬でパニックになったが、扉から出てきた人物を見て頬が緩んだ。
「澪だ・・・」
1話知らない部屋へ
読んでいただきありがとうございます。
「澪だ……」の続きは、1話「知らない部屋」にあります。
次話「秋 それぞれの澪」もよければ。




