第5話 最初の依頼
掲示板の前に立つ。
紙切れの数は多い。
だが、どれも軽くはない。
討伐。
護衛。
雑用。
雑用と書かれた紙の裏にも、
小さく「死亡例あり」と添えられている。
指先で、端を押さえる。
――選ぶ基準は、金じゃない。
今の自分にできるか。
死なずに終えられるか。
それだけだ。
「……薬草採取、か」
森の縁。
指定数。
期限は明日まで。
報酬は少ない。
だが、危険度も低い。
背後で、声がした。
「新人か」
振り向くと、
革鎧の男が腕を組んでいた。
「そう見えるか」
「見えるな」
男は、掲示板を一瞥する。
「それか?」
「……ああ」
「悪くない」
「理由は」
男は鼻で笑う。
「死ににくい」
「確実じゃないだろ」
「確実に死なない仕事はない」
それだけ言うと、男は離れた。
依頼書を剥がす。
紙の感触は、妙に現実的だった。
受付に持っていく。
「薬草採取?」
「初回としては無難だと思って」
受付の女性は、木札に印を入れる。
「期限は明日の夕方までよ」
「わかった」
「森は街道沿いですが、奥は危険ですので控えることをおすすめします。」
「……ありがとう」
木札を受け取る。
軽い。
だが、これが今の立場だ。
ギルドを出る。
外は、徐々に明るさを帯び始めていた。
夜と朝の境目。
空の端が、わずかに白む。
日が昇り始める、そんな時間帯だ。
街はまだ静かで、
動いているのは、早起きの商人と、
帰路につく夜勤の兵くらいだった。
――生き延びる。
それだけを考える。
復讐も、答えも、
今は、まだ遠い。
だが。
一歩ずつでも進まなければ、
何も始まらない。
男は、街道へ向かって歩き出した。




