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奪われた夜から、すべてを取り戻すまで  作者: みーふー


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第3話 吸収

「確認する」


声に出した瞬間、視界に文字が浮かび上がった。


――ステータスを表示します。


名前。

年齢。


目を滑らせ、次に止まる。


【吸収】


それだけだった。


説明はない。

だが、見た瞬間に理解してしまった。


倒した相手の力を、引き受ける。

奪うのではない。

残るものを、そのまま受け取る。


「……最悪だな」


吐き捨てるように呟いた、その時。

外が騒がしくなった。


怒鳴り声。

金属音。

短い悲鳴。



考える前に、体が動いていた。



通路の先。

二人の男が、一人を壁際に追い詰めている。

手には刃物。


あの夜と、重なる。



「……やめろ」


声が出た。

自分でも驚くほど、低かった。


二人が振り向く。

一瞬の間。


次の瞬間、刃が振られた。


避けきれない。


肩に、熱が走る。


「っ……!」


浅い。

だが、確かに切られた。


距離が、近すぎた。


考える余裕はない。

拳を振る。


狙いも、型もない。


鳩尾に、当たった。


男が息を詰まらせ、よろめく。

そのまま、頭を釘が飛び出ている壁に打ちつけた。



「くそ……!」


もう一人が、背後から掴みかかってくる。


振りほどこうとして、足が絡んだ。


二人とも、転ぶ。


鈍い音。


後ろの男の頭が、石畳に強く打ちつけられる。

そのまま、動かなくなった。



静寂。



荒い息だけが残る。




――スキル【体術】を吸収しました。


文字が浮かぶ。


同時に、体の感覚が変わった。


力の入れ方。

重心の置き方。

知らなかったはずの感覚が、馴染んでいく。


「……そういう、ことか」


助けられた男が、震えながら頭を下げている。

何か言っている。


感謝だろうか。

今は、それで十分だった。



視線を、倒れた二人に戻す。


勝った実感は、ない。


代わりに残っているのは、

胸の奥に沈む、濁った何か。



あの夜と、同じ匂い。


「……進むしか、ないな」



取り戻すために。

返すために。



この力も、

その代償も。


男は、歩き出した。


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