第三章: 膝枕という致命的バグ
第三章: 膝枕という致命的バグ
将軍専用の休憩所は、王宮の喧騒から隔絶された、意外に落ち着いた空間だった。重厚な木製の扉を開けると、暖炉の火がゆらめき、大きな革張りの長椅子と低いテーブル、そして窓辺に置かれた戦利品の剣が並ぶ。ラングはミナトを抱えたまま、迷わず長椅子に腰を下ろした。
そのまま、ミナトを膝の上に下ろす――いや、強引に寝かせる。
「え、ちょっ、待て! これは膝枕イベント!? 待て待て、仕様外だ! 膝枕フラグなんて存在しないはず!」
ミナトは必死に身をよじって起き上がろうとしたが、ラングの太い腕が腰をがっちり固定。まるで逃がす気ゼロのロック状態だ。
```python
# 膝枕強制イベント: 強引属性発動
if resistance_level < dominance_threshold: # 抵抗力が支配力未満なら
force_lap_pillow() # 膝枕強制実行
affection_level += 80 # 急激上昇(想定外)
print("CRITICAL: Lap_pillow_flag = True")
print("romance_flag_risk = 95 → 178% (overflow imminent)")
else:
print("Escape possible")
# 結果: resistance_level が完全に負けているため force_lap_pillow() 実行
```
ラングは満足げに低い声で笑う。
「暴れるなと言ったはずだ。小僧。お前のような華奢な体で俺に逆らうなど、無駄な努力だ。」
そう言いながら、彼は大きな手でミナトの金色の髪をゆっくり撫で始めた。指先が耳の裏を通るたび、ミナトの体がビクッと震える。
「や、やめろ……! これは明確な接触違反! 好感度上昇禁止区域だ! 髪撫で属性は……うわっ、+15!? なんでそんなに上がるんだよ!」
ミナトの視界に、好感度メーターが狂ったように跳ね上がった。
```python
# 髪撫でサブイベント
hair_stroke_count = 0
while hair_stroke_count < 5:
affection_level += 15
hair_stroke_count += 1
print(f"Warning: affection_level = {affection_level}")
# 結果: 5回撫でで +75。合計膝枕込みで +155。もう制御不能。
```
ラングの金色の瞳が、ミナトの顔を真正面から見下ろす。距離、30cm以内。息がかかる距離。
「お前、王太子から逃げ回っていた理由が分かった気がする。こんなに怯えた顔をしながら、必死に抵抗する姿……たまらんな。」
彼の声は低く、どこか甘く響く。戦場を何度もくぐり抜けた男の、獲物を確実に仕留めるような響きだ。
ミナトは必死に論理を組み立てようとする。
「こ、これはただの……パワーバランスの誤認だ! 俺はノンケ! 恋愛感情じゃない! これはただの……支配欲! そう、支配欲の変数だけが上がってるはず!」
だが、現実は残酷だった。
ラングはミナトの頬に指を滑らせ、顎を軽く持ち上げる。まるで商品を吟味するように、じっくりと顔を眺める。
「逃げるものほど、手に入れたくなる。それがおれの性分だ。王太子がどれだけ執着しようと、お前はもう俺のものだ。」
そして、ラングはゆっくりと顔を近づけた。唇があと数センチというところで突然、扉がノックされた。
「将軍閣下。お時間です。次の会議が……」
部下の声に、ラングは舌打ちして体を離す。ミナトは慌てて跳ね起き、長椅子の端に縮こまった。
ラングは立ち上がりながら、ミナトに視線を落とす。
「続きは夜に取っておく。……今日からお前は俺の私室に住め。書類仕事ならここで十分だろう。」
「は!? 私室!? 同棲フラグ!? 待て待て、回避ロジックが完全に崩壊してる!」
```python
# イベント終了処理(失敗)
print("Lap_pillow_event: COMPLETE")
print("New flag: Cohabitation_unlocked = True")
print("Additional targets detected: アレクセイ rage_level += 200")
print("マーク伯爵: NTR_interest += 300")
```
休憩所を出る間際、余裕たっぷりの笑みでラングは振り返った。
「次は逃がさんぞ、小僧。」
それは獰猛な肉食獣のような微笑みで……。
ミナトは膝を抱えて座り込み、頭を抱えた。
「膝枕で affection_level が200超え……。これ、もう普通の平穏老後ルートは存在しない。俺の人生、バグだらけのデバッグ地獄だ……。回避方法……回避できる変数を探さねば……!」
そして、遠くの回廊では、アレクセイが拳を握りしめ、マーク伯爵が妖しい笑みを浮かべていた。




