追放弁護人 〜今異世界で一番アツい職業〜
※注意
今作品は、追放もの系、追放ざまぁ系などを書いている方、好きな方は、閲覧を注意してください。
不快な内容が含まれている可能性があります。
あくまで、一つの個人的な作品として読んでいただけると幸いです。
「追放弁護人」
それは、その名の通り、パーティや国から追放されそうになっている人々の代わりに、その有能性を数値化、データ化し、追放されないよう証明することを仕事とする人間である。
街角の小さな店舗には、今日も訪れる人がいる。
その目に宿るのは、純粋な恨みか、それとも、自己中の塊か。
「す…すみません…」
弱々しくドアを開け、様子を伺っている。
緊張と…その目に薄く浮かぶ怨嗟。
「どうぞどうぞ〜。座ってください。…緊張しなくていいですからね。」
「はい…ありがとうございます。」
ゆっくりと、それほど大きくも柔らかくもない椅子に腰掛ける。
「本日はどのようなご要件でしょうか?」
悔しさと恥じらいを残したまま、彼は語りだした。
「実は…パーティを追放されそうになっていて…」
「なるほど…安心してください。よくある案件ですから。恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ。」
これを言うと、みんな、パッと明るい顔になる。
自分だけがこうやって虐げられているわけじゃない。
そう思わせる、安心への第一歩だ。
「まずは、お名前とパーティ名を教えてください。」
「僕は…トーマです。パーティ名は、『天恵の麗槍』です。」
おや…これはなかなかのビッグネームじゃないか。
確か…一パーティだけで竜を撃破したとかいう…
「あの『天恵』に所属しているとは…最近勢いのあるパーティですよね。」
彼は静かに震えた。
「……はい…」
心苦しそうに何とか答えているのが分かる。
「なるほど…なぜ追放されそうになっているのか、理由を教えてくれますか?」
「……っ…」
理由は、自分から語り出すのは勇気がいる。
「辛いと思いますが、話してください。お願いします。」
「…実は…竜との闘いで…何もしてないって責められて…」
「…なるほど?」
「でも…僕は…後ろからバフかけてて…僕のバフがなかったら絶対勝ててなかったのに…」
その自信はどこから来るのか…
「そのご自身のバフの効果が理解されていないと…」
「はい…それで、「後ろの方でコソコソしてた雑魚」とか、「役立たず」とか言われて…それで馬鹿にされて…お金強請られたり…外で土下座させられたり…」
「そうですか…」
トーマは辛そうに紡ぐ。
「それで…だんだん周りに同調して…優しかった…あの子まで…っ…」
泣き出してしまった。
成人男性がすすり泣く音が響く。
「大丈夫ですか?」
無駄のない所作でハンカチを手渡す
トーマは無造作にハンカチを受け取り
「好きだったんですっ…でもっ…みんなっ…」
丁寧に、相槌を打つ
「なんで分かってくれないんですかねっ…!」
こいつ…今俺のハンカチで鼻水拭いやがった…
ちょっとイラついたが表には出さない。
「…大丈夫です。一緒に解決しましょう。」
トーマは驚いたような、期待をはらんだ表情になる。
「できるんですか…?」
もちろん優しい営業スマイルで。
「任せてください。」
「あ…ありがとうございます…!」
「よし、それじゃ、早速準備しましょう。」
「えっ…もう何かあるんですか?」
「もちろんです。データと数値に則って、証明しましょう。自分の能力を。」
数日後
いよいよ証明の日。トーマは緊張しているようだ。
一応、パーティメンバーの皆さんにも事前にアポは取ってある。
電話した時の対応は酷かったが、その辺は何とか交渉に交渉を重ねた。
トーマ「僕…追放されずに済みますかね…?」
「もちろんです。絶対に、追放なんかさせません。
それじゃ、入りましょうか。あなたの…『天恵の麗槍』の本拠地に。」
頼りがいのある営業目線を向け、安心を取り戻させる。緊張されていては出来ることも出来ない。
「行きましょうか。」
大きな扉に手を掛ける。
もう一度トーマの顔を確認し、目が合うまで待つ。
この一瞬が、安心感を底上げする。
ゆっくりと扉を開ける。
(パーティメンバーの名前は表記)
アフェア「あっ、お客さん来たよ。それと…トーマ君も。」
ワグラ「あん…?あ〜…電話入れてきた人?」
「はい。そうです。お忙しい中すみませんね。」
この人がリーダーか…目細いな。
室内はゴテゴテとした無駄インテリアが多く、全員が
ギラギラにアクセサリーを付け、女性陣は男の趣味の分かる服を着ている。
竜討伐の報奨金で随分と遊んでるようだ。
ワグラ「追放弁護人…だっけ?なんかよくわかんないもん雇ったみたいだけどさ、俺は君をパーティに戻すつもりはない。」
トーマ「えっ…」
ワグラ「君の無駄な努力を笑ってやろうと思っただけだよ。」
ラビ「てかさぁ…あんたらもう帰ってくんない?どーせ無駄なんだからさぁ。ねぇ?」
アフェア「…トーマ君、弱いから…」
トーマ「っ…!!」
おや。なんかめっちゃ効いてるな。この子が前に
トーマが言ってた好きだった子か。
ラビ「もう帰れよ雑魚!ワグラんの手間かけさすな!」
ワグラ「まぁまぁ。話くらい聞いてやろうよ。わざわざ来てくれたんだしさ。」
トーマ「…………」
「あの〜…なんか罵倒大会になってるんですけど、
本題に入ってもいいですかね?」
埒が明かなくなる前に話を変える。
ラビ「うっさいなぁ!ワグラんが許してもアタシが許さないから!」
「…さて、今回は、トーマ様の能力を今一度『天恵の麗槍』の皆様に確認していただきたいと思います。」
的の形をした道具を取り出す。
ワグラ「なんだ?それ。」
「こちらは与えたダメージを数値化する道具です。
例えば、私がこちらの道具を叩けば…」
殴ると、的から「52」の数字が出てくる。
「こちらの的を、トーマ様のバフ無しの時と、バフ有りの時で攻撃し、数値の変化を検証します。」
「ワグラ様。まずはこちらを、トーマ様のバフ無しで殴ってください。」
ワグラ「なんで俺が…」
「あなたがやらないと不正を疑われるでしょう?」
ワグラ「チッ…」
次の瞬間、凄まじい速度の一撃が繰り出される。
鈍い音が響き、的は大きく揺れ、「1324」の数字を出した。
トーマ「っ…」
「はい。「1324」ですね。こちらが、ワグラ様の素の攻撃力となります。次に、トーマ様のバフ込みでの数値を確認してみましょう。」
チラッとトーマの方を見る。
トーマは頷いた。
「では、バフをかけていただいたので、もう一発、お願いします。」
ワグラ「何も変わってねぇよ!!」
再度凄まじい速度の一撃が繰り出される。
ワグラ「っ…」
的が出した数値は、「1867」
素の状態より、500ほど高い。
ワグラ「チッ…んだよこれ。壊れてんじゃん?」
「では、バフを解除してもう一度試してみましょうか。」
トーマに目配せをする。
ワグラ「…チッ…」
再度拳を打ち込む。
数値は「1285」
バフ込みの時よりも明らかに下がっている。
ワグラ「はぁ…!?」
アフェア「まさか…本当に効果あったの…!?」
ワグラ「んなわけないだろ…!トーマだぞ…?」
ラビ「そうだよ…!あいつが…」
トーマ「…………」
しれっとドヤ顔してるのが鼻につくが、次の証明に移ろう。
「トーマ様のバフは、攻撃力だけではありません。
次は、こちらで検証してみましょう。」
ナイフと、等身大の人形を取り出す。
ワグラ「おい…なにする気だよ…!?」
ナイフの持ち手を向けて手渡す。
「こちらをこの自動修復機能機能付きの「疑似人形」に刺していただきます。」
ワグラ「は…?」
「こちらの人形はトーマ様のバフが乗るので、バフ無しの時の硬さと、バフ有りの時の硬さの変化を検証できます。」
ワグラ「…………」
人の背丈ほどの人形を立てる。
「では、お願いします」
ワグラ「チッ…」
超速の刺突が人形を貫き、衝撃波が起こる。
「さすがです。このように、バフ無しでは簡単に貫けてしまいます。ですが…」
何度目かのトーマに目配せをする
「今、バフをかけていただいたので、もう一度お願いします。」
ワグラ「…………」
再度、超速の刺突が放たれる。
ワグラ「!?」
しかし、先ほどとは違い、刺さったのは少しだけ。
「このように、トーマ様のバフは、簡単に貫けてしまう人形をも、簡単には貫けない強度へと引き上げることができるのです。」
アフェア「そんな…」
「事前に記録していたデータを統計すると、攻撃力は約1.4倍。防御力面では4倍以上の強化バフを付与できます。今まであまり効果を感じていなかったのは、トーマ様のバフが、防御力に特化しているタイプだったからでしょう。」
ワグラ「チッ…なんかの間違いだろこんなん…!」
「そう思うならそれでも構いませんが、これほどの人材を「間違い」と信じ込んで手放すのは、賢明な判断とは言えません。貴方方の輝かしい功績も、トーマ様を含む、皆様の力あってこそではないでしょうか。」
ワグラ「…………」
「ご再考をお願いします。」
ラビ「…………」
ワグラ「…………」
しばらく、沈黙が続く。
アフェア「…と…トーマ君…」
重たい空気を持ち上げるように、彼女は口を開け音を発する。
トーマ「…何…?」
アフェア「ご…ごめん…あなたが…私達を助けてくれてたなんて…」
トーマ「…………」
アフェア「本当に…ごめんなさい…!」
トーマ「……ワグラ…ラビ…君たちはどう思う?」
ワグラ「…………チッ…まだ、ここに居させてやるよ。」
トーマ「居させてやるよ?」
ワグラ「っ……居てくれ。」
ラビ「ワグラん…あ…アタシも…ごめん…」
「…どうしますか?追放は、「取り消し」ということでよろしいですか?」
ワグラ「…………あ…あぁ…」
トーマ「あ…ありがとうございました…!」
「いえいえ。ご利用ありがとうございました。」
「では…代金の請求なのですが……
と、このように、追放されないよう、共にデータを交えて交渉する。
ここまでが一連の流れである。
大した難しさもなく、稼ぎもいいこの「追放弁護人」の仕事は、「今異世界で一番アツい職業」であると
言えるだろう。
(この先閲覧注意)
だが、はっきり言って、「追放弁護人」は意味のない仕事だ。
自分の力を証明するくらい、自分の力でやることだ。
それすらもできずに追放されそうになり、泣きつく。
そんな人間が追放されなかったとして、この先やっていけるのかは甚だ疑問だ。
自己中心的な人間たちが自分の弱さを棚に上げ、環境や他人のせいにする。
そうして、自分が「他よりは優秀」であると思い込む。
それを「君は優秀だよ。」と他人の口から言い直してあげるだけの、やりがいのない、くだらない仕事だ。
それでも俺はこの仕事を続ける。
ニーズがあるからだ。
この世界に「追放」される人間がいる限り。
ドアがゆっくりと開く。
またいつものスマイルを向ける。
「どうぞどうぞ〜。…………大丈夫。「よくある案件ですから。」」
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「追放弁護人」〜今異世界で一番アツい職業〜 完
このような駄文を最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。
重ね重ね申し訳ありませんが、この作品はあくまで世界観とテーマを重視した作風としているものです。




