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最強の魔術師、更なる高みのために初心に返りたいと思います。  作者: おおあし


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第7話

その後、私は病院のベッドで目覚めた。

頭には包帯が巻かれているが、その他の傷は綺麗に消えていた。



 「調子はどう?」



ちょうど病室を訪ねてきたカトレアが聞いてくる。



 「……すこぶる元気、だけどどうやって帰ってきたのか覚えてない………」


 「そりゃそうでしょ。気絶してたんだから」


 「そっか……てことは、カトレアが助けてくれたの?」


 「わ、私じゃないよ!別の誰か……そう!私も気絶してたし!」



何か誤魔化された気もするが、カトレアが言うならそうなのだろう。

私はベッドから上体を起こす。

カトレアはベッドの横の椅子に座り、申し訳なさそうな顔をする。



 「ごめんアンリ、私が無理にダンジョンに誘ったせいで、初めての仕事がこんなんになって……」



申し訳なさそうな顔をして頭を下げるカトレアを見て、私はクスリと笑う。



 「そんな顔をしなくていいよカトレア!私、初めてのダンジョン楽しかったよ」


 「楽しかった?」


 「うん。確かに、人が亡くなったのは悲しいし、怖かった。でも、カトレアと綺麗な景色を見たり、魔物と戦ったり、今まで経験した事の無いワクワクを感じたから!」



元気な声で、笑顔で言う私を見て、カトレアもフッと笑う。



 「……アンリは本当に強い子なんだな」


 「でしょ!それに……」


 「それに?」



そこまで言って、私はハッとする。

言葉を止めた私を不思議に思い、カトレアは首を傾げている。



 「ううん!何でもない!」


 「……そう?」


 

カトレアは怪しんでいるが、それ以上は聞いてこなかった。



 (危ない危ない……カトレアに言っちゃうと、重荷を背負わせちゃうかもだしね)



私は自分の本当の目的は口にしなかった。



 「それじゃあ、私はそろそろ行くよ」


 「うん!」



カトレアが椅子から立ち上がり、病室を出ようとした時、



 「カトレア!」



私はカトレアを呼び止める。

不思議そうにしながら振り返ったカトレアに、私はとびきりの笑顔で言う。



 「また一緒に、ダンジョンに潜ろうね!」



私の言葉にカトレアは驚いた表情を見せた後、笑って頷いた。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



カトレアとアンリが話している頃、少し離れた病室でグランは目を覚ます。

体中が痛むが、傷の痛みというより筋肉痛に近い。

むしろ、傷はほとんど回復していた。



 (……エバか?)



そう考えたグランだが、その考えはすぐに否定される。

隣を見ると、同じように傷が回復状態で眠っているエバが居たからだ。



 (ここは……パールの病棟か……)



ギルドにはそれぞれ、怪我人を運ぶ病棟が敷地内に存在する。

どうやらグラン達はそこに運び込まれたらしい。



 (あの状況で、俺達を全員助けたのか?誰が……?)


 

 「んんっ……ここは?」



グランが考えていると、エバがゆっくりと目を覚ます。



 「起きたかエバ。身体はどうだ?」


 「大丈夫……不思議、何で傷がないんだろう……」


 「やはりエバではないのか……」


 「私は回復魔法が使えるけど、ここまでのレベルでは……」


 「あの場に、エバ以上の光属性の魔術師が居たということか……」



回復魔法には光属性の魔力が必要となる。

光属性は珍しく、他の属性に比べて適性者が少ない。

その中でもエバはかなりの魔力量を誇るが、そのエバですら不可能な回復魔法を施した何者かがあの攻略チームに居た事になる。



 「一体誰が……」


 「あの新人だ」


 「バルシュ、起きてたのか」



起きていたバルシュはグランの言葉に険しい顔で答える。



 「新人って、カトレアちゃんの事?」


 「……グラン、あの新人何者だ?」


 「何者と言われてもな……あのダンジョン攻略に参加したがっていた新人としか……」


 「あいつはかなりの手練だ。あの殺人狼の咆哮で意識が飛びそうになってた状態だったが、俺は確かに見た。あいつが俺達全員に回復魔法をかけてたとこも、穴の中に自ら落ちて行ったとこも」



バルシュの言葉に、エバも少し考える。



 「……確かに、カトレアちゃんフルオートで魔法を使ってた……あんな事できる人、見た事ない」


 「回復魔法は何とも言えないが、フルオートの魔法というのは、俺も聞いた事がないな……」



3人の中で、駆け出し冒険者のカトレアの存在が大きくなる。

しかし、真実はどうあれカトレアがあのダンジョンから自分達を助けたという証拠はなかった。



 「……グラン、カトレアちゃんを正式にパーティに入れた方がいいんじゃない?」


 「しかし、それだとまるで、あの子の力を利用するみたいじゃないか…」



エバの提案に、グランは乗り気になれない。

彼女の人としての也ではなく、力が欲しくてパーティに勧誘するという行為が、グランの善意が否定する。



 「でも、あの子がいればセンリが見つかるかもしれないよ!」



エバの説得に、グランの心も揺れる。

それでも、即答する事は出来ない。



 「……分かった。提案はしてみよう。だが、決めるのはカトレア自身だ。とりあえず、この話はここで終わろう。まずは体を休める事が第一だ」



そう締めくくり、3人は自分達のベッドに横になる。

天井を見ながら、グランは考える。

エバの主張、行方不明の仲間の存在、カトレア勧誘への抵抗感。

それがグランの頭の中をグルグルと巡っていた。

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