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最強の魔術師、更なる高みのために初心に返りたいと思います。  作者: おおあし


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第1話

愛の国『アメラ』

世界中から冒険者が集まり、最も多くの冒険者が集う国。

そんな『アメラ』の王都であり、冒険者達の始まりの街『ビダヤ』

冒険者達はここ、ビダヤを拠点に各地のダンジョンや依頼に赴くのだ。



 (き、来てしまった……)



そんなビダヤの街に、一人の最強が降り立っていた。

とんがり帽子を深く被り、プルプルと震えている少女。

彼女の名前はカトレア

この国で最強の魔術師の『魔女』である。



 (な、なんか人多くない?前来た時はこんなに居なかったのに……)



カトレアが最後にビダヤに来たのは約5年前

その頃とは比べ物にならないほどに冒険者の数は増えていた。

カトレアが知る王都はもうないのだ。



 「ねえあなた、大丈夫?」



プルプルと震えていると、後ろから声をかけられる。

振り向くと、カトレアの眼前に巨大な山が2つ見える。



 (お、お〜……)



あまりの大きさに、カトレアは思わず感嘆する。



 「大丈夫?震えてるけど?」



その声にハッとし、カトレアは顔を上げると、赤い髪と瞳の少女と目があった。



 「だ、大丈夫です……ちょっと人酔いしただけなので……」



久しぶりのギルドメンバー以外の人との会話に、カトレアは小さな声しか出なかった。



 「……もしかして、あなたも冒険者志望?」


 「え?まあ、はい……」


 「やっぱり!て、この街で杖なんて持ってたら、それ以外ないよね」



少女はニッコリと笑う。

その笑顔が眩しくて、カトレアは思わず目を背ける。



 「あなたもって事は、もしかして……」


 「そうなの。私も冒険者志望!」



少女は笑顔のまま言う。

カトレアが見る限り、魔術師ではないようだ。



 「私、アンリっていうの。あなたは?」


 「カ、カトレア……」


 「そっか!よろしくねカトレア!」



アンリの差し出した手をカトレアは握り返す。

どうせならとアンリとカトレアは一緒に行動する事を決めた。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 「カトレアはどこのギルドに入るの?」


 「へ?」



歩きながら、アンリが突然そんな事を言い出した。

言っている意味がよく分からず、カトレアは首を傾げる。



 「あれ?もしかしてまだ決まってない?」


 「冒険者って、ギルドに入らないとダメなの?」


 「当たり前だよ!どこのギルドに入るか決めて、そのギルドで冒険者になる手続きをするんだから!」


 (そ、そうだったのー!?)



カトレアは最強の冒険者であるが、正規の冒険者ではない。

冒険者は、皆ギルドに所属している。

普通は冒険者登録をする前に、自分で入るギルドを決めて、ビダヤにある各ギルドの拠点で手続きを完了すれば、晴れて冒険者になれる。

カトレアの場合はと言うと、



 (ギルドの登録とか知らなかった……そもそも私のギルド作ったの師匠だし……私ついて行ってただけだし!)



カトレアはその才能を買われ、ギルドマスターでもある師匠が勝手に冒険者にした。

つまりは裏口入門者である。



 「アンリはどこのギルドにするの?」


 「私?私はやっぱり……『パール』かな」



ビダヤには現在、3つのギルドが存在する。

その1つが『パール』である。

ギルドマスターが女性という事もあり、女性冒険者が中心になって運営するギルドだ。

剣士、魔術師、守護職問わず、バランスの取れたギルドである。



 「あ〜、でも、『ペルシア』もいいよね〜」



2つ目が『ペルシア』

ビダヤで最も古いギルドであり、超攻撃型のギルドだ。

在籍するメンバーのほとんどが剣士であり、先手必勝を掲げている。



 「ぺルシアはアンリには合わないんじゃない?」


 「そうだよねー、私剣士じゃなくて弓使いだしねー」


 「な、ならさ!もう一つの─」


 「まさか、『ランビリス』!?あそこだけは無理!」


 

アンリは顔を青ざめさせて言う。



 「ど、どうして?」


 「だって、最強のギルドだよ?私なんかじゃついていけないよ……」



最後の一つが、『ランビリス』

ビダヤで最も若く、最も強いギルド

構成員は僅か7人

そのうち5人が魔術師

そして、たったそれだけの人数で最強である所以、それは、



 「だってあそこには、『魔帝』と『魔女』がいるんだよ!」



『ランビリス』が最強たる所以、それが『魔帝』と『魔女』の存在である。

世界で最強の4人、『四聖人』そのうちの2人が同じギルドに居る。

それだけで、冒険者の中では新規で入るものなどおらず、実際この10年、誰一人加入者は居ない。

それを聞いたカトレアは、



 (……え?私の居るギルドって、そんなに凄かったの?)



魔法の事ばかり考えていたカトレアは、その事実を知り心底驚いていた。



 (え?てことは、つまり、レイグも結構すごい?)



今まで身の回りの事をしてくれるおじさんくらいにしか考えていなかったレイグの評価が、思わぬ所で変わる。



 「うん!やっぱり私はパールにするよ。ねえ、カトレアもパールにしない?」


 「え?わ、私は…その…」


 「あ、ごめん!そうだよね!自分の好きな所がいいよね……」



アンリは少し寂しそうに笑った。

その表情からは、少しの不安が滲み出ていた。



 (あ〜!どうしよ〜!)



初めて冒険者になる少女。

その不安げな表情に、カトレアは悩むのだった。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 「ありがとう!カトレア。実は一人だとちょっと不安だったの!」


 「よ、喜んでくれたなら良かった……」

 (決めてしまった……)



結局、アンリの表情に負けて、カトレアは『パール』に所属すると言ってしまった。



 (そもそも、私冒険者になれるの?よく考えたら、最初の段階でバレるんじゃ……)



そんな不安があったカトレアだったが、



 「それでは、良い冒険を!」



受付のお姉さんが笑顔で言った。



 「これが冒険者の証のペンダント!これで私も冒険者か〜、嬉しいねカトレア!…カトレア?」



アンリが喜ぶ横で、カトレアは冒険者の証のペンダントを凝視する。



 (……私、こんなの持ってないな)



冒険者の証と言うならば、既に冒険者であるカトレアが持っていないとおかしいのだ。

しかし、カトレアはそれを見た記憶がなかった。



 (……深くは考えないでおこ)



カトレアは思考を放棄し、ペンダントを首からかける。

その姿をアンリは凝視する。



 「な、何?」


 「いや、何かカトレアが付けると、何か大人びてる子供に見えちゃって」


 「な!?」



カトレアは身長が低く、幼い容姿をしている事を気にしていた。

そのため、大きな双丘を持つアンリに言われ、カトレアは怒った。



 「わ、私はもう15歳だ!」


 「え、嘘!?歳上!?」


 「へ?」


 「私、13歳なんだけど……」


 「……13」



カトレアの目線が大きな双丘に向く。

その現実に、カトレアは大きくショックを受けた。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 「ふふーん♪」



晴れて駆け出し冒険者になったカトレアとアンリは、小さなお祝いとしてカフェでケーキを食べていた。

冒険者証のペンダントを見ながら、アンリはニコニコと笑っている。



 「嬉しそうだね」


 「そりゃそうだよ!冒険者は誰だってなれるものじゃないもん!」


 「そうなの?」


 「そうだよ!やったでしょ?試験」


 「そういえば……」



カトレアもペンダントを貰う前に、魔力測定器なるものに触った気がする。

手加減して調整するのがしんどかったと思い出す。

もし本気でやっていれば、駆け出し冒険者用の測定器が破裂していた事だろう。



 「アンリは何をやったの?」


 「私はゴーレムと戦闘、弓使いもアタッカーだからねー」



どうやら時間内にゴーレムを倒せというものだったらしい。

ペンダントが貰えたということは、合格したということだ。



 (13歳でゴーレムって、えらく簡単なんだな)



カトレアは自分基準で語っているが、普通はできない芸当である。



 「そう考えると、ゴーレムであんなに硬かったのに、黒龍を一瞬で倒しちゃう『魔女』ってすごいなー」


 「ぶふっ!」


 「カトレア!?大丈夫?」



突然の自分の話題に、カトレアは思わずメロンソーダを吹き出す。



 「何?その話?」


 「知らない?数日前、小国を襲った黒龍を氷漬けにして倒しちゃった魔術師がいたんだって!そんな事できる魔術師は『魔帝』か『魔女』しかいないって話で、現場に居た人が女の子だったって証言してたから『魔女』がやったんだって、王都中その話で持ち切りだよー」



自分がやった事が、とんでもないくらいに大きくなっている事に驚きながらも、素顔を見られていない事に安堵する。



 「黒龍の鱗ってすごく硬いって噂だもんねー。あーあ、私も鱗を砕けるくらい強くなりたいなー」


 「……なら、実戦あるのみ、じゃない?」


 「え?」



カトレアはあるチラシをテーブルに置く。

そこには、

『〇月✕日 灼熱のダンジョンに潜る。参加者集え』

と書かれていた。



 「これって……」


 「パールの拠点に貼りだされてた。どのギルドでもOKだから、全拠点にあるんだと思う」


 「で、でも、今日なったばかりで、そんな急に……」


 「最初は誰だって怖いよ。でも、その一歩を踏み出さないと」



カトレアの言葉に、アンリはチラシを見て考える。



 「アンリ、冒険者になったんだよ」



その言葉でアンリはハッとする。

憧れていた冒険者になった。

それなのに、いつまでも怯えてダンジョンに行かなかったら、何の意味もない。



 「……分かった!やるよ!」


 「そう来なくっちゃ!」


 (ようやくダンジョンだ。正直全然余裕のダンジョンだけど、もしかしたら何か強くなる糸口が見つかるかも)



ようやく正規の駆け出し冒険者となり、初心に返ったカトレア

友となった同じ駆け出し冒険者アンリと共に、最初のダンジョン攻略を目指すのであった。

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