プロローグ
世はまさに、冒険者の時代
そう言われるほどに、皆が冒険者を志し、ダンジョンに夢を見る。
そんな冒険者の中で、世界に認められた最強の4人が居る。
冒険者達は、彼らに敬意を払いこう呼ぶ。
『四聖人』と。
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「ドラゴンだ!ドラゴンが出たぞー!」
ドラゴン
魔物の中でも群を抜いて強く、並の冒険者では手も足も出ない。
それ故に、冒険者の中でもドラゴンが絡む依頼は避けられている。
受けたところで、討伐できる見込みが低いからだ。
そんなドラゴンの前に、一人の少女が立ち塞がる。
「おい!危ねぇぞ嬢ちゃん!」
男がそう言うが、少女はその場を動かない。
黒い鱗を光らせ、少女に向かいドラゴンは咆哮を上げる。
そして、少女を喰らおうと襲いかかった。
「氷の薔薇咲」
次の瞬間、ドラゴンの体内から氷の花が咲き誇り、一瞬でドラゴンの全身が凍りついた。
騒がしかった街が、静寂に包まれる。
魔物の最強種、ドラゴンを小さな少女が仕留めたのだから、当然の反応である。
「ドラゴン討伐は完了しました。それでは、失礼します」
少女はそれだけ告げて、飛び立とうとする。
「ま、待ってくれ!あんた冒険者だろ?何者なんだ?」
「名乗る程の者ではありません。それでは」
少女はそのまま飛び去り、どこかへ消えて行った。
この日、とある小国に出現した黒龍を討伐した謎の少女の話題で、王都中が騒ぎになった。
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「はぁ〜」
王都がドラゴン討伐で話題になっている頃、とある村の家で引きこもってため息をつく少女が一人。
銀色の髪に、翡翠の瞳
彼女の名前はカトレア
今話題のドラゴン討伐を果たした魔術師であり、最強の冒険者『四聖人』の一人『魔女』の異名を持つ少女である。
「昨日の魔法、一年前と威力も範囲も全く同じだった……つまり、私はこの一年、何の成長もしていないってこと〜?」
そんな彼女は今、自身の成長が全く無い事に悩んでいた。
「毎日魔法の研究もしてるし、魔力だってまだまだ伸びてるのに、何で魔法の威力は出ないんだろ……」
「それはお前、刺激がないからだろ」
そう言う男の名はレイグ
カトレアが所属する冒険者ギルドの男であり、カトレアの世話係だ。
「刺激?ドラゴン討伐は十分な刺激でしょ?」
「普通の奴にとってはな。お前にとってはただの作業だろ」
最強の冒険者になれば、ダンジョンに潜らなくとも、多額の金が入る。
特にカトレアは、高位の魔物の討伐依頼などしょっちゅうで、刺激ではなく日常になり始めていた。
レイグの言葉はご最もで、カトレアは頭を抱える。
「……いっその事、始めからやり直すのもありかもな」
「やり直す?」
「ほら、初心に返るって言うだろ?冒険者になった頃を思い出してみるとかさ」
レイグの提案に、カトレアは考える。
始めてダンジョンに潜った日を……
「……そういえば私、初めてのダンジョンからソロだったなー」
「はぁ!?ソロ!?冒険者は普通、パーティを組んで役割分担するだろうが!」
「いやいや、私は一人でいけちゃったし。ていうか、パーティ組んだことないな〜」
カトレアの規格外の発言に、今度はレイグが頭を抱える。
「……そっか。私にはそれが無いんだ」
「何か思いついたのか?」
カトレアはニヤリと笑みを浮かべる。
「初心に返る、というより初心になる。レイグ、しばらく留守にするから、師匠に伝えといて」
「あ、おい!」
「空の支配者」
カトレアは家を飛び出し、空を飛んで行った。
「空の支配者……あれも超高位魔法なんだがな……」
本来、馬車で何日もかかる距離だが、カトレアな一日足らずで着く。
(何年ぶりだろ。王都は)
カトレアは向かう。
この国、『アメラ』の王都であり、冒険者にとって始まりの街である『ビダヤ』へ。
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世はまさに冒険者の時代。
剣を持ち、魔法を放ち、ダンジョン攻略に魔物退治
そんな心躍る冒険に人々は夢を見る。
そんな冒険者の中で、最強と言われている四人の冒険者は『四聖人』と呼ばれる。
その一人、最強の魔術師『魔女』カトレア
これは、カトレアが初心に返り、最強の更なる高みを目指す物語である!




