Chapter 12: そして、始まりへ(And So, To the Beginning)
──「終わりが来たのなら、次は始まりを書く番だ。」──
── “If the end has come, then it’s time to write the beginning.”──
世界が静かに「ゼロ」に還った。
──Rewrite: Zero──
それは未来を塗り潰す力。
その代償に、俺という存在は全ての記録から消去された。
人々の記憶から。
この世界の歴史から。
時間の系譜からさえも。
けれど、終わりは終わりではなかった。
──始まりは、そこから静かに生まれる。
白い光が消えたあと、意識がどこかへ滑り込むような感覚があった。
目を開けると、そこには青空。
遠くを行き交う列車の音、街路樹のざわめき、人々の声。
俺は、立っていた。
Nova Tokyo。
記録にないはずの街。
俺がこの手で「終わらせた」はずの都市。
だけど、今ここにある。
まるで最初から何も起きていなかったかのように、静かに動き続けていた。
ビルのガラスに映る自分は、まだ若い。
焼け焦げた風衣もなければ、紅黒の傷痕もない。
左腕も、失われていない。
ただ、ひとつだけ──
右手の甲に刻まれたSignum Terminus(終焉刻印)だけが、確かにそこにあった。
その刻印が、微かに未来の疼きを伝えてきた。
記憶はない。
けれど、胸の奥に微かな残響がある。
まるで「誰かの声」が風に混じって、今にも届きそうで──
俺は歩き出す。
この世界が何なのか、俺自身が何者なのか。
まだ分からない。
でも、知っている。
これは「第九の輪廻」──
俺が自らの名を取り戻し、真の Rewrite を見つけるための物語。
「……もう一度、始めてやる」
誰にも聞こえない小さな声で、そう呟いた。
その起源は、俺がまだ知らぬ深淵に眠っている。
——Rewriteはまだ、終わっていない。




