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竜提督は盾の乙女をとかさない  作者: 佐賀ロン
第一話 イルマタルは夫に会えない
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『氷の国』のイルマタルは、『火の国』の人と結婚した。

 火の国に位置する、ここトリドの夏は暑い。そりゃもう、街を歩くだけで人体バーベキューが出来るんじゃないかってぐらい暑い。

 だから街の建物は日差しを反射するために白く塗られているし、昼間は殆どの人が家屋でやりすごす。人々が動き出すのは日暮れからだ。

 だから私も、大人しく館の中ですごしているのだけど……。


「暇すぎるっ!」


 イルマタル・タハティ。

 結婚して三週間目。仕事もないし、夫とも会えてない。




 


 この世界は、大きくわけて二つの国に分かれている。

 一つは火の国。大陸の半分以上がこの国であり、熱風吹きすさぶ気候の地域だ。

 もう一つは氷の国。主に北部に集中する国で、一年の三分の二は雪がふる。

 この二つの国は、かつて大戦になるほど仲が悪かった。私たちが生まれた頃には終戦を迎えていたが、そのわだかまりは今もくすぶっている。

 そこで、この二国の友好関係を保とうと、ありとあらゆる策が講じられた。

 その中の一つが、火の国と氷の国にいる、『異能力者』の積極的な移動。

 火の国には火を操る異能力者が、氷の国には氷を操る異能力者が生まれることが多い。その異能力者を交換することで、お互いの国の利益を出そう、という政策だ。おかげで氷の国では火の国の異能力者によって、極寒の冬を乗り切ることが出来る。

 そして、その『積極的な移動』というのは、ハッキリと明言はされていないけど、互いの国の異能力者同士の結婚も含まれているのだ。

 この度、私ことイルマタル・タハティは、氷の国から、火の国のアマド・ディアス――『竜提督』と呼ばれる人と結婚した。


 したのだけど、三週間も夫とは会っていない。なんなら結婚式も一定の距離から話しかけられた。そんなことある?



「望まない結婚だったのかなあ」



 あっちから申し込んできたのだから、それは無いと思うんだけど。

 政略結婚なんて、人権無視なことをする風潮は廃れている。そもそもこんな世の中だから、お金がなくて独身を選んだり、子どもをつくらなかったり、恋愛だけの関係じゃないパートナー制度を選ぶ人だって多い。ただ、異能力者に限っては、()()()()()()()()()()()()ため、どうしても子孫繁栄を望まれる。そのための助成金だって国の予算から出るのだ。

 だから異能力者は両国主催のお見合いパーティーにも出るし、そこでカップルが成立することも多い。別れるのも早いけど。別れる原因としては、周囲が盛り上がりすぎて、当人たちの気持ちが置いてけぼりにされがちなことが一つ挙げられる。

 もしかして彼も、周囲に急かされて……ってことなのかな。貴族だしな。庶民より、子どもをつくることの圧が強そう。


「あー! 暇い! せめて身体動かしたい!」


 このままじゃ身体がなまってしまうというのに、メイドさんたちからは「絶対外に出てはいけませんよ。すずしいところにいてくださいね」と念押された。

 確かに昼のトリドを歩く気はならないけど、夜ぐらいは歩かせて欲しい。別名「眠らない街」とも言われるトリドの屋台、行ってみたいのに。「夏は夜も暑いのですから、気候に慣れてないイルマタル様は、もう少し屋内でお過ごしください」と言われているのだ。

 もう大丈夫だと思うんだけどな。私、夏の暑さにも冬の寒さにも負けぬ丈夫な身体を持った『盾の乙女』ぞ? いや、もう乙女なんて言えるほどの年齢じゃないけどさ。


「結構楽しみにしてたんだけどな、新生活……」


 はあ、と私はため息をついた。


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