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異カイの探偵  作者: KAlaN
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#3 経歴と行い

あらゆる事象は”循環”する


”行い”は全て帰る

 同年4月、桜の花びらが舞っているのが事務所からも見える。


日差しが鋭い10時


新年度と言うことで、この前まではどこもかしこも喧しいほどの子供の声が響いていたが、今は学校で大人しく勉強に励んでいる頃だろう。


これを見ている君たちは、平日は何をしている。


私は情報収集だ。


“奇怪事件”が起きていないか、妙なニュースが流れていないかネットで探したり、書き込みが無いか自身の探偵事務所のホームページを見たり、はたまたネタの宝庫である掲示板を眺めたり、様々な手段で怪異の情報を探している。


一通りネットサーフィンをすれば、最後に来るのは何か、


“暇”だ。


極論、奇怪事件に関わっていない、依頼も無いときは、一日の殆どが暇になる。


私は忙しいのなんだのって言い訳をしない質だ。


暇なら暇で開き直る。


そこの君、終わってるって言うんじゃない。


実際終わってるからな。


景色の半分を映す窓から日の光が差し込む。


“テケテケ“の奇怪事件以降、私たちは、ネット掲示板の”日本地図に載ってない変な村巡ろうぜww“とかいう投稿にある村をいくつかまわった。


その結果、慣習がとんでもない村が5つ、その中で神擬きの怪異が祀られている村が2つあった。


習わしがとんでもない村は、ただ人が私欲のために利用している習わしの村と、神として祀っている怪異のための習わしの村の2種類がある。


本当に神が祀られている場合もあるが、生贄だとか、食い物が決まっているだとか、そういう古臭い慣習が残る村が祀っているモノは、大体神に成ろうとしている怪異だ。


妖怪や餓鬼、もしくは死んだ人の怨念などの怪異が、強い執着心から、神になる為に信仰心を集める。


その際に、町村に習わしを設けさせる。


まぁ、ただやばいだけの村も、それに対する恐怖心だとか、村内に蔓延る悪意とかで怪異が生まれる場合もある。


大体決まった慣習のある村には、何らかの怪異が居る可能性があるのだ。


要するに、生贄とかの古臭い慣習のある町村で生まれた、祀られている怪異は、そのもの自体が未練や悪意の塊になっているので、人に利用されたり、これ以上悪意の影響を受けないようにするためにも、遺体から取るんじゃなくて、それごとこっちで管理する必要がある。


村で封印されていちゃあ、いつ解かれても可笑しくないし、何なら封印されていても人の悪意を受けることになる。


と言う訳で、先日私はその神擬きの怪異を2体捕まえたのである。


1つ目の村は、小さな湖の近くにあり、濃い霧の中にあった。


村内では“めがた村”と呼ばれていて、外界から隠れ、日本の法を無視した、固有の仕来りが強い村だった。


“おぼろげさま”と呼ぶ怪異を祀り、生贄を捧げないと、村と暮らす人々が霧に飲まれ消えてしまうという伝承の元、10歳になった一家の長女を生贄に捧げていた。


おぼろげさまは湖の中にいるとされていて、生贄の女の子は、這い上がらせないように睡眠薬で眠らされ、手首と足首を縛られて、1年に一度、おぼろげさまが生まれたとされる日に贈り物として湖の中に沈められていたらしい。


どうやらこの仕来りのお陰で村長曰く村は守られているらしいが、そいつ追い出しましょうかって聞いたらめちゃめちゃ怒り出したので、この怪異と仕来りには人の思惑があるなと思い回収した。


2つ目の村は、名前もなく、村自体が怪異のようなものだった。


村に人が来たときは、祭りのように大騒ぎし、祝いの場のように歓迎、お偉いさんみたいに来村した人を持て囃していた。


それだけならいいのだが、この村は食が可笑しかった。


人肉をご馳走としていて、めでたい日に若い女性をバラし、それを夕食として調理し食べていたらしい。


また、来村した人が若い女性の場合、村に留まることを勧められ、その日の夜に殺されるらしい。


実際私も村に泊まることを勧められ、民家の一室で支度していた時、辺りを囲う異様な空気から殺意を察した。


まぁ、殺される前に締め上げたが。


けい”が。


村ごと回収してやろうかと考えたが、恵に止められ、村民が皆して守っていた“おぐヰさま”と呼ばれていた怪異だけを回収した。


この2つの村がその後どうなったかは知らないが、怪異に縋らないとやっていけない村なら崩壊してくれと思っている。


こういう怪異は、その村に残しておいた方が村民の為になるのでは、と考えた君。


こういうので死んだ人は、大体強い未練を持つ。


そこからまた新たな怪異が生まれるんだ。


だから、怪異の発生を抑えるという意味では、村に巣食う怪異を回収した方が、色々と未然に防ぐことが出来るんだ。


後、こっちの管理下に置いた方が、怪異も余計な悪意に触れたり、呪いの手段にならずに済むからな。


以上が、ここ最近の私たちの成果だ。


文字の書かれた画面から顔を離し、背もたれに寄りかかる。


眠気に対して欠伸を零しながら、ノートパソコンに向かっている妹を見る。


そういえば、君たちは私たちのことを“怪異に関係ある事件に関わる探偵”、“その助手”、“姉妹”、“怪異を管理する人”、ということぐらいしか知らないよな。


私は画面に向き直り、探偵事務所のホームページとメモ帳を開く。




 改めて、怪異関係専門の“探偵”、“阿崇あたか めい”だ。


性別は女性、年齢は22。


本職は“怪異管理”、探偵はあくまで怪異関係の事件に関わるための手段に過ぎない。


好きなものは特になし、嫌いなものも特になし、面倒だなと思うものは知り合いのプライド高いおじさん刑事と宗教家。


阿崇家は先祖が祓い屋で、見える人が多い家系だ。


陰陽師、安倍晴明みたいに有名ではないが、先祖はそれなりに妖怪や餓鬼を祓っていたらしい。


祖母も見える祓えるで祓い屋をやっていたが、妖怪と関わっていくにつれて、人に悪用されやすい妖怪の生活を管理し、世話をするようになった。


家系上、大体の人が見えるし祓う力を持っているが、私の父、“阿崇あたか 恵武めぐむ”は、珍しく見えず祓えずの人で、少しだけ気配を感じ取れる程度だ。


しかし可哀想なことに、寄せ付けてしまう体質だったらしく、祖母の御守りの世話になっていた。


母、“阿崇あたか 鳴生なるみ”は一般人。


祖母は、色々なモンが寄って来る癖に何一つ見えない父が、一般的な生活が送れるように、妖怪以外も、怪異全体的を管理しようとしていたが、現代的な怪異の噂話や作り話に疎いため、回収に行くことが出来なかったらしい。


因みに、私が6歳の時に両親は亡くなっている。


そして私は、結構見える質だが、祓う力が少ない。


精々祓えても、ちょっと未練があって留まってしまっている幽霊ぐらい。


その代わり、怪異を封じることは得意である。


例えば、悪意の塊のような実体なしの怪異でも、未練だけを封じることが出来る。


まぁ、そこらの霊媒師や神主よりかは、封印に長けている自信がある。


だから、祖母の代わりに、妖怪以外の異形な存在を回収し、管理しているワケ。


で、恐らく先日の異質な村での出来事を纏める為に画面と睨み合いをしているのが、私の双子の妹、“阿崇あたか けい”だ。


双子なのに、けいの方が、少し背が小さいし顔つきも幼いってよく言われる。


好きなものは甘いものと花、嫌いなものはピーマンとニガウリ。


優しさと親切心があるが、悪意と人に危害を成すものには容赦がない。


私より人間味のある性格をしている。


けいは、見えて祓えるが、私が祓うではなく回収するため、怪異の動きを封じたり、鎮圧をしたりしている。


祓う力は、怪異の力を退けることが出来る為、私の代わりに戦ってもらっている。


あの時彼女が付けていた、活字で丸を描き、中央に“封”と書いてある印が刻まれていた手袋は、お札とかそういうのと同じ性質のモノである。


見える人間、祓える人間てのは、基本的に家系が関係あり、祓う力、封じる力も、血が関係している。


だから、私の“深紅のガラス玉”も、血を垂らして作ったモノであり、彼女の手袋も、彼女の血で書いたモノである。


印を刻む、五経を唱えるとか、そういうのは祓う力や封じる力を引き出すための1つの手段で、血を使った道具や、血で印を刻んだ道具は、祓う封じるための道具になる。


まぁ、御守りとか魔除けの札とかは印を刻んだだけのものが多いけど、怪異が近寄りにくくなる程度で、完全に退けたり祓うことは出来ない。


要は、怪異を祓う人は、祓う力のある家系の血を使って祓う道具を作り、祓っているということだ。


因みに、私たちにこういうことを教えてくれたのは、私たちの祖母で、両親が亡くなった後に育ててくれたのも祖母である。



自己紹介も他己紹介もこれで十分だろうと、キーボードから手を離し、マウスでカーソルを操作しメモ帳を削除する。


考えることが無くなったせいで、再度眠気が込み上げてくる。


手元の時計を見れば、短針は11を示している。


お昼時まで仮眠を取ろうかと、ヘアクリップを付け直し、背もたれに寄りかかる。


事務所の電気を見上げ、大きく口を広げ欠伸を零せば、ゆったりとした眠気の波が押し寄せる。


このまま眠ろうと瞼を閉じる。


そのとき、


「えぇぇ!?!?」


と、鼓膜が貫かれそうな大きな驚き声に、心臓が口から飛び出そうなぐらいに跳ねる。


バクバクと音を鳴らす心臓を抑え、声の主であるけいの方を見る。


「う、るさいって…、何見て叫んでんのだよ…」


「こ、これこれこれ!!これ見てお姉ちゃん!!」


「あ…?」


彼女がスマートフォンの画面をこちらに向ける。


距離的に見にくいため、身体を起こし椅子から立ち上がり、彼女の傍に近づきスマートフォンの画面を覗き込む。


そこには、一言投稿するのに適したSNSが映っており、彼女が見ていたであろう投稿の内容は、“樟ヶくぬぎがさき小学校で行方不明者多数!?男子児童4名と女子児童2名が下校時間を過ぎても帰ってきていないらしい!詳細は以下…”と、ニュースサイトのリンクが添付されている。


樟ヶくぬぎがさき小学校は、事務所から車で数十分のところにある小学校で、新1年生が減少していながらも、少し年季の入った校舎からは元気な子供たちの声が聞こえてくる。


勝手にニュースサイトのリンクをタップすると、行方不明事件の詳細が載っている。


内容を要約すると、昨日男子児童4名と女子児童2名がいつも通り朝小学校に登校したが、下校時間どころか、1日経っても帰ってきていない。


更に、頭を打った小学2年生の男子児童の遺体が階段の下で発見され、学校側は、警察による捜査の為に休校、警察官と先生が行方不明の小学生の捜索に出ているらしい。


一夜にして6人の児童が行方不明、そして1人が死亡。


複数犯による人為的事件か、こっち側の案件か。


確認しに行く必要があるな、と、彼女のスマートフォンの画面から手を離し、自分のスマートフォンをスラックスのポケットから取り出す。


私に対しては捜査情報の秘匿性が甘い“紗嶋さじま刑事”に電話を掛ける。


発信音がツーコール鳴った後、


「もしもし、こちら紗嶋さじまです!」


と声が聞こえる。


「もしもし、阿崇です。」


「阿崇探偵?どうしたの?」


「単刀直入に聞きますが、樟ヶくぬぎがさき小学校の行方不明事件、あれって受け持ってます?」


私の言葉に、電話先の彼女は間を置き、「うー…」と悩むような唸り声を出す。


否定をしない辺り、奇怪事件と処理されている案件なのだろうが、


「…もしかして、紗嶋刑事の担当ではない?」


「あーー…、うん…私の受け持ちではなく…」


彼女の歯切れの悪さに嫌な考えが脳内を過る。


“奇怪事件対応課”は、私の知る限りだと彼女を含めて4人である。


基本的に奇怪事件の現場まで行き捜査を行うのは、彼女と、


「アイツか…」


「そう…、私だと直ぐに阿崇探偵を呼ぶから、今回は俺が持つって…」


「良いだろ私が呼ばれても、解決してるから良いだろ。無駄にプライドたけェなあのおじさん。」


嫌でも面倒臭さと呆れが顔に出てくる。


彼女も、「あはは…」と困ったような声を零す。


これは直接行かなきゃならないということが分かれば、もう向かうのみである。


「ありがとうございます紗嶋刑事、直接行ってきます。」


「うん、気を付けてね。…あ、私が言ったって言わないでね!?」


「流石にアイツに告げ口とかしませんよ。」


最後に彼女に労う言葉を掛けて、電話を切る。


面倒臭いことになることを想像しながらポーチを持ち、腰に巻く。


「樟ヶくぬぎがさき小学校に行くぞ。」


と、けいに声をかけ、事務所の出入り口に向かう。


「はーい!」


後ろから彼女が駆けてくるのを聞きながら、少し距離のある小学校に向かうため、中古の愛車の鍵を手に取るのであった。




思いついたネタを書きたいときに書いてます。


なので更新は不定期です。


by.KAlaN

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