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第7話 新しい人を迎え入れよう

〔・お兄ちゃん、遅刻するよ~〕


「……今日の起こし方は妹系か……」


〔・やって思ったこと。

 ・自分でもどれが元ネタか分からない……〕


「いやまあ、確かに妹キャラって大体そういう感じだしな……」


〔・もしくはメスガキ系か

 ・兄貴、起きろ! とか言っちゃうタイプ。

 ・いずれにしても類例が多すぎて

 ・昨日以上に元ネタが特定できない〕


「だろうな……」


 もはや恒例となりつつあるやり取りで、四日目の朝を迎える立て札と耕助。


 早くも立て札の起こし方にネタ切れの影がちらついている点については、突っ込まないのが武士の情けであろう。


〔・それで耕助。

 ・朝ごはんはどうする?〕


「悩ましいところなんだよな。完全栄養食バーはできたら温存しておきたいけど、魚とラディッシュだけだと炭水化物がないから、腹が減るのが早いしなあ……」


〔・確かに、とても悩ましい〕


 耕助の悩みに同意する立て札。


 本日手に入るのはラディッシュと魚介のみ。


 どちらも日持ちしないものなので、未開封なら一年は持つ完全栄養食バーは、いざという時の保存食として取っておきたいというのはよく分かる。


 が、そうすると、重要なエネルギー源である炭水化物がどうしても不足しがちになる。


 現状必要な作業はどれもかなりの重労働なので、実のところ完全栄養食バー一箱分のカロリーである二千キロカロリーでは微妙に赤字。


 つまり、どう考えても魚とラディッシュだけではどんどん痩せていくのだ。


〔・だったら、本日のガチャとミッションの確認。

 ・もしかしたら、食料が手に入るかも〕


「そうだな。完成品とまでは言わなくても、もしかしたら小麦粉とかそば粉とか、その手のものが手に入るかもしれない」


〔・ん。

 ・という訳で、まずはガチャから〕


「おう。回してくれ」


〔・スタート〕


 耕助の合図に従い、ガチャを回す立て札。


 またしても取り出し口が激しく輝いて、銀色のカプセルが出てくる。


 本日で三日連続となる、ハイレア演出である。


「……外れだな」


〔・まあ、デイリーガチャはしょうがない。

 ・闇鍋ガチャだし。

 ・食料関係がピンポイントで出てくる確率はとても低い〕


「だろうな。で、今日のごみはなんだ?」


〔・ちょっと待って、オープン〕


 ハイレア演出という時点で外れを確信した耕助に同意しつつ、カプセルを開封する立て札。


 出てきたのは家庭用のエアコンと室外機であった。


「三種の神器じゃなくて3Cのほうか……」


〔・何この微妙なくやしさ……〕


「なんでお前が悔しがる……」


〔・ニアピンなの、もやもやする〕


「知らんわ……」


 電気があっても置物にしかならない白黒テレビよりはましと言えど、現状では設置場所も手段もなくて使い物にならないエアコンを前に、そんな話をする耕助と立て札。


 どちらにせよここに置いておいても邪魔なので、とりあえずガラクタ置き場となっている洗濯機の元へ運ぼうと室内機を持ち上げる。


「……そういや、配管資材はないのか?」


〔・言われてみれば〕


「……もしかして、たとえ絶対必要なものでも、別売りのものは一緒に出てこないのか?」


〔・それはそう。

 ・……ああ。設置場所によって必要な長さが変わるから

 ・基本的にエアコンの配管資材は別売り。

 ・確か一メートルいくらだったはず〕


「……ガラクタ度合いが上がったな。それもものすごく大幅に」


〔・ガチャで引くのを待ってる限り

 ・ガラクタ脱却は無理だと思う。

 ・むしろ、自力で作るほうが早いかも〕


「否定できない……」


 立て札の言葉に、遠い目をしながら同意する耕助。


 クラフト台の仕様を踏まえると、材料とレシピがあれば配管資材ぐらいは簡単に作れるだろう。


 その際、固定のためのねじや壁に配管を通す穴をあけるドリル、隙間を埋めるためのシール材なども必要になるのだが、どれも恐らくは配管資材を作れるのであれば問題なく作れるであろう代物である。


〔・というか、耕助はよく、配管資材に気が付いた。

 ・そもそも、配管資材なんて言葉を知ってるなんて……〕


「ここに飛ばされるちょっと前に、アパートのエアコンが死んでな……。予算がぎりぎりでものすごく必死に計算したんだよ……」


〔・……またブラックの香りがする。

 ・というか、配管資材気にするほどお金なかったの?〕


「他人のミスをかぶせられてペナルティで罰金って名目で、給料一気に減らされてなあ……」


〔・……えっ?〕


「で、税金に年金に保険料を支払ったら足りないって言われて差額請求されてな……」


〔・それって、日本だと普通に違法じゃ……〕


「まあ、だから労基に入られて潰れたんだろ」


 などと、とてもブラックな話をする耕助。


 実際のところ、あまりに目に余る時や故意に損害を出した場合などで、企業が従業員に直接損害賠償請求を行うことはないわけではない。


 基本的にそういうケースは企業側が不利ではあるが、内容によっては裁判で争っても普通に勝てることもさほど珍しくはない。


 ただし、耕助のケースはどこをどう解釈しても普通に違法で、むしろ耕助が会社を訴えて賠償金を取れる案件である。


 なお、耕助は知らないことだが、この話にはさらに続きがあり、実のところ耕助の税金や年金、保険料は会社が、というより二代目社長が着服していた。


 それをやった相手が耕助一人ではなかったため、それが止めとなって会社がつぶれたのだ。


「熱中症と貯金残高ゼロと天秤にかけて、悩みに悩んで来月の給料があるかどうかわからないからってあきらめようとしたら、リサイクルショップのオーナーが同情して廃棄寸前のでよければってただでつけてくれたんだよ」


〔・そのレベルのブラックで、よく労基が入るまで持った……〕


「すごいよなあ。外部に疑われなきゃ、そこまでやばくても五年やそこらは問題なく回っちまうんだから……」


 ドン引きする立て札に対し、遠い目をしながらしみじみと語る耕助。


 どうにも耕助がやたら後ろ向きでリスクを気にしがちなのは、ブラックの洗礼によりこの種のエピソードを大量経験していたことが背景にありそうだ。


〔・……なんか、どんどん地獄の蓋があきそうだから

 ・話を変える。

 ・デイリーミッションの確認をしよう〕


「……だな。……魚介を確保。回数だから、リリースした分も入るっぽいな。報酬は食料か」


〔・だったら、回数を稼ぐのも兼ねて、まずは罠の回収から。

 ・そのあとご飯食べて、釣りと罠を併用してさっさと回数を〕


「それで炭水化物が手に入らないようなら、諦めて完全栄養食バーを開けるか」


 デイリーミッションの内容を見て、立て札の意見にうなずいて朝の行動を決める耕助。


 一応火は起こしておこうとファイヤースターターを手に取る。


「にしても、落ち着いて明るいところで見てみると、昨日建てた東屋、案外立派な出来だな」


〔・無茶した甲斐があった?〕


「ちょっと、達成感はあるな」


 ファイヤースターターを取った際に目に入った東屋を眺め、どことなく満足そうにうなずく耕助。


 実際、素人が一日で建てたにしては、東屋の出来はとても良かった。


「……ん? なんだ?」


〔・どうしたの?〕


 そうやって満足そうに眺めている最中に、なんとなく空に違和感を覚える耕助。


「……いや、気のせいかもしれないが、何かが落ちてきてるような気が……」


〔・……えっ?〕


「……って、本当に落ちてきてる! あれは人か!?」


〔・ちょっ、ちょっと待って!

 ・時空関係は安定してるし、別次元からの干渉もなし!

 ・上空含めて今、外部から何か侵入できるようになってないはず!

 ・人なんてもってのほか!〕


「つっても、現実に落ちてきてるんだって! やっぱりありゃ人だ!」


〔・こっちでも確認!

 ・落ちてきてるのは翼人族の少女!

 ・たぶん、肉体年齢的には十代半ば!〕


「やばい! 東屋に直撃コースだ!」


「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 耕助の言葉が終わるかどうかというタイミングで、空から落ちてきた翼人族の少女が東屋の屋根を吹っ飛ばし、急角度で頭から草むらに突っ込んで突き刺さって止まる。


 結果として少女は、地面から大きく足が生える、いわゆるスケキヨと呼ばれる状態になっていた。


〔・うわあ……。

 ・パンツ丸見え……〕


 スカートだったのが災いして、完全に下着全開になっている少女。


 その姿に、そっと目をそらす耕助。


 そうでなくても股間に葉っぱ一枚という変質者全開の姿なのに、ここで下着もろ出しになっている女性の下半身を凝視など、本当に変質者になってしまう。


「……とりあえず、畑はそれてくれて助かったわ……」


〔・これでジャガイモ全滅だったら、泣くに泣けない。

 ・まあ、その場合は救済措置を出してたけど〕


「そうなのか?」


〔・ん。

 ・今回のは不可抗力すぎる。

 ・さすがに、それで救済措置なしとかは

 ・下手したら耕助詰む〕


「まあ、確かに今畑が死んだら、残りの種的な意味でも普通に詰む可能性が高いよな……」


〔・すぐではないにしても、遠からず餓死がちらつく状況。

 ・まあ、それは置いといて

 ・助けないの?〕


「……この格好の男が足引っ張って引っこ抜くって、非常に犯罪者っぽい絵面にならないか?」


〔・大丈夫。この島にはそれを取り締まる存在はいない。

 ・というか、助けないと窒息死しないとも限らない〕


「……分かった。腹くくって引っこ抜くわ」


 窒息死を持ち出されると日和る訳にもいかず、変態呼ばわりされる覚悟を決めて少女の元へ向かう耕助。


 実際、おそらく意識を失っているらしく、突き刺さってから少女の体は微動だにしていない。


 そうでなくても自力で脱出するのが難しそうな状態なのに、意識を失っているかもしれないとなると本当に危険だ。


「今から足つかんで引っ張るぞ!」


 念のために声をかけると、意識を取り戻したのか、少女の足がもぞもぞと動く。


 それを同意と解釈して、しっかり足をつかんで思いっきり引っこ抜く耕助。


 すぽんという音が聞こえそうなほどきれいに引っこ抜かれる少女。たゆんと派手に揺れる巨大な胸。


 何がどうなってそうなったのか、少女の服は派手に脱げており、上半身は完全に裸であった。


 しかもどういう奇跡か、地面に突き刺さったというのに、背中の翼ともども擦り傷どころか土汚れ一つない。


「……」


 予想可能回避不可能とでも言うべき状況に、完全に固まる耕助。


 至近距離だったこともあり、視線はたゆんたゆん揺れている胸に完全に固定されている。


 上半身を覆っていたであろう服は、腰の周りに巻き付いているだけである。


「……きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 助かったと思ってすぐに己の状態に気が付き、数秒固まる少女。


 そんな少女が我に返ると同時に挙げた悲鳴が、島全体に響き渡り空に吸い込まれていくのであった。








「……死のう」


〔・ストップ、耕助ストップ。

 ・あれは不可抗力、どうしようもない。

 ・早まっちゃダメ〕


「……下手したら二十は年下の女の子の胸ガン見した挙句に、ギンギンに股間おっ勃てた変質者なんて……」


 少女が落ち着いたところで、崖に向かってふらふら歩こうとする耕助を、立て札が必死になって押しとどめる。


 今まで一切なかったはずのちょっと気が抜ける緩いSEまで出しているあたり、何気に立て札も結構必死なようだ。


「……あの、ごめんなさい……」


 助けてもらった相手に悲鳴を浴びせかけたと知り、翼人族の少女がしょんぼりしている。


 なお、いつまでもおっぱいとパンツをもろ出しにしておくわけにもいかないので、落ち着いてすぐに服はちゃんと整えている。


 とはいえ、もともとの服がプランジングネックと呼ばれる大胆に胸元と背中が開いたVネックとでもいう構造の服なので、胸に視線が吸い寄せられそうになる格好なのはあまり変わっていないが。


〔・あれはどっちにも不可抗力。

 ・というか、いまだに何が起こったか理解できてない。

 ・というか、お姉さん誰?

 ・翼人族なのは分るけど〕


 とりあえず、少しでも場の空気をよくするため、立て札が少女に質問をする。


「あっ、世界樹の梢部族のシェリアと申します」


〔・ん、了解。

 ・耕助も自己紹介。

 ・自殺は禁止。

 ・むしろそれはシェリアの心を殺す〕


「……わかったよ。荒田耕助だ。いろいろ不幸が重なって、身一つでこの島に飛ばされた。裸なのは単に服が手に入らないからなので、服を入手する目途がつくまではちょっと勘弁してほしい……」


「……そんな事情が……」


 耕助の言葉に、申し訳なさそうに頭を下げるシェリア。背中まである長い金髪がさらさら揺れる。


 頭を下げたことで結果的に胸の谷間を強調するような姿勢になるのだが、そこには気が付いていないようだ。


 それについてどうしたものかと、谷間に吸い寄せられそうな視線を必死にそらして、どんよりした目で立て札を見る。


〔・服については、現状すぐにはどうにもならない。

 ・それは耕助だけじゃなく、シェリアのほうも同じ。

 ・そもそも、翼人族がこういう服装なのも

 ・背中に翼がある関係だからどうしようもない〕


「だろうな……」


 立て札の言葉にうなずき、姿勢を戻したシェリアに視線を戻す耕助。


 シェリアはきれいな金髪に青紫の瞳の、ちょっと幼い感じのする非常に整った顔立ちの少女だった。


 その顔立ちと反する、すらっと高身長でありながらグラビアアイドルでもめったに見ないような肉感的な体形という、派手なギャップが印象的だ。


 日本の繁華街を歩いた場合、遠巻きにされるか変な男を大量に釣り上げるかの二択になりそうな少女である。


〔・とりあえず、終わってしまったことは置いておく。

 ・現状で考えなきゃいけないことは三つ。

 ・1.壊れてしまった東屋を再建するかどうか。

 ・2.人が増えた分の食料をどうするか。

 ・3.寝床どうする?〕


「……食料はやばいな、実際。俺一人でも綱渡りだったわけだし」


「……何かにぶつかったのは分かってたんですが、建物を壊してしまいました!?」


「ああ、あれだ。昨日の夜に完成したばかりだった」


 真っ先に二つ目の問題に悩み始めた耕助と違い、建物を壊したと知って大いに慌てるシェリア。


 そのシェリアに対し、無残な姿になった東屋を指し示す耕助。


 屋根が吹っ飛んだ東屋は、中途半端に足場に囲まれた柱が四本だけぽつんと立っているという、なんとも物悲しい状態になっていた。


「ご、ご、ごめんなさい!!」


「ありゃ不可抗力だろ。そもそも、本来この島の上空には入ってこれないようになってたらしいから、その時点で事故だろうし」


〔・ん。

 ・今、何が起こったかをきっちりチェックした。

 ・シェリアがこの島の上空に差し掛かる五秒前から二十秒ほど

 ・シェリアの進路上にちょうど人一人分ぐらいの通路ができてた。

 ・どうやら、シェリアはそこに突っ込んだみたい。

 ・墜落したのは、物理法則が一部違う影響で

 ・しばらく飛行能力が機能しなかったから〕


「通路ができた原因は分からないのか?」


〔・判明はしたけど、再発防止は無理。

 ・下手に手を出すと大惨事につながる要素がいくつか、

 ・悪い方向で偶然かみ合った結果。

 ・外部から干渉したとして、管理者に見つからずにやるのは無理。

 ・これはもう、起こるときは起る災害の一種だと割り切るしかない。

 ・それに、影響範囲と発生するエネルギーが小さすぎて

 ・事後でないと発見自体が難しい〕


「いずれ外部に開放するんだろ? それまでの間だけ調整とかは?」


〔・それをやると、悪影響が大きすぎる。

 ・それこそ、世界が崩壊しかねない。

 ・そもそも、起こる確率自体が天文学的な数字。

 ・ぶっちゃけ、耕助がこの島に飛ばされてくる確率とほぼ同じぐらい〕


「そんなのがこんな短期間に連続して起こるとか、呪われてるんじゃないか……?」


〔・実のところ、うちの実の母のことを考えると

 ・起こってもおかしくはないという気はしなくもない。

 ・今までボクには体質が出てなかったから

 ・正直油断した〕


 耕助の確認に対し、そんなことを言ってのける立て札。


 その言葉に、どんな母親なのか気になってしまう耕助。


「まあ、どうにもできないなら、対策はあきらめるとして、だ。飛行能力が機能しないのって、本当に一時的なことなのか?」


〔・ん。もう、普通に飛べるはず〕


「らしいが、どうだ?」


「あ、ちょっと試してみます」


 耕助に問われ、少し翼を動かすシェリア。


 その直後に、シェリアの体がふわりと浮き上がる。


「一応浮けはします」


〔・パラメーター的にも、おかしなことにはなってない。

 ・普通に飛ぶ分には大丈夫だと思う〕


「普通に、ですか?」


〔・ん。

 ・アクロバット飛行までは保証しない〕


「試しておいたほうがいいんでしょうか……?」


「アクロバット飛行が必要になるかどうか、だろうな」


 いろいろ不安になる立て札の言葉に、どうしたものかと耕助をうかがうシェリア。


 シェリアに問われ、そんな当たり前のことしか言えない耕助。


 そもそも耕助にとって、生身の人間が飛ぶなどという概念は創作物の中だけのものだ。


 実際にアクロバット飛行が必要になるかどうかなんて、空を飛ぶことが当たり前になっている種族にしか分からないことだ。


〔・ボクとしては、現象の確認のために

 ・可能であれば一通り飛行訓練をしてみてほしい〕


「分かりました。じゃあ、ちょっと飛んでみます」


「だったら、俺はその間に、籠罠を見てくるわ」


 立て札の要請に従い、飛行能力の確認のために高く飛び上がるシェリア。


 それを見送った耕助が、空を見上げないようにしながら籠罠のチェックへ向かう。


 シェリアの服装的に、下手に見上げるとまたしてもパンツを見てしまいかねないのだ。


「さて、何がかかってるのやら」


 そう言いながら、籠罠をチェックする耕助。


 籠の中身は初回と同じで、タコにウツボにベニズワイガニであった。


「おっ、カニ」


 朝から食べるには手間がかかるが、少なくともボリューム的には悪くない。


 そう考えながら再び罠を仕掛け、釣り竿を持って砂浜に移動する。


「一応、二人分釣ったほうがいいんだろうなあ」


 そう考えながら、ルアーのついた釣竿を大きく振る耕助。


 結構沖合のほうにぽちゃんという音とともに針が沈み、わずか数秒で何かが食いつく。


「おっ、何かかかったな」


 そんな強い引きではないが、しっかり何かが食いついた手ごたえ。


 それに反応して、リールを巻きあげる耕助。


 釣れたのは、小ぶりのキスであった。


「おっ、釣れた。素人の俺でも大丈夫そうだな」


 さほど食いでがなさそうなサイズではあるが、無事に釣れたことに気をよくする耕助。


 キスを外して桶に入れ、さあ次の一投をと竿を振りかぶる。


「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 竿を振り上げたタイミングで、後ろからシェリアの悲鳴が聞こえてくる。


「な、なんだ!?」


 思わず振り返った耕助を、きりもみしながら落ちてきたシェリアの体が襲い掛かる。


 いきなりな上にすさまじいスピードで、耕助の反射神経と身体能力では防御も回避も間に合わない。


 シェリアのボディプレスを思いっきり食らった耕助は、思いっきり胸の深い谷間に顔面をうずめたまま海に叩き落とされる。


 なお、余談ながら、この時桶もなぎ倒しているので、耕助が釣ったキスは普通に逃げている。


「がぼがぼがぼがぼ……」


「ごぼごぼごぼごぼ……」


 胸と海水のダブルパンチで本気の酸欠に陥りかける耕助と、いきなり海に落ちたことでパニックになるシェリア。


 そのまま二人して溺れそうになり、必死になって顔を圧迫するシェリアの体を押しのけて強引に立ち上がる耕助。


 押しのけた際にものすごく柔らかい感触があったが、そんなことを気にしている余裕はない。


 どうにか立ち上がったところで、自分が何をつかんでいるかに気が付く。


「……よし、死のう」


 思いっきりシェリアの胸を揉みしだいたことに気が付いた耕助が、いっそさわやかとも言える表情でそう宣言する。


「わー、わー、わー!! ダメですダメです! 落ち着いて考え直して死んじゃダメー!!」


 そのままどんどん深いところへ歩いていこうとする耕助を、必死になってしがみついて引き留めるシェリア。


 その際、服の構造の問題でノーブラの胸を直接これでもかと押し付けることになり、さらに耕助を追い詰めることになる。


〔・これはおいしい。

 ・エルフ母の場合はボクも巻き込まれるから余裕なかったけど

 ・他人事だとこんなに見てて面白いとは……〕


 その様子を立て札がニマニマと笑いながら見守っていることについて、二人は最後まで知る由もなかったのであった。

ようやくヒロインが登場した回。

シェリアのキャラ造形は、ずっと同じようなビジュアルのヒロインが続いている問題と、天使系のデザインのキャラが着る衣装は大抵がある程度胸が大きい方向でスタイルがよくないといまいち見栄えがしない問題の間で、かなり悩みました。


で、迷ったらサイコロ振って決めるぜって言うことで色味と体形をサイコロ振った結果は本編をご覧のとおりです。


どうやら、うちのサイコロの神様はおっぱい星人で、背中に天使の羽が生えてる系は金髪でないと許さない派閥らしい。


次回は1月10日、その次は1月13日、以降は毎週土曜日投稿の予定とさせていただきます。

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― 新着の感想 ―
春菜さんの娘で澪の薫陶受けてたら、そりゃあそうなるかぁ
[一言] 澪に多いに影響を受けた春菜の娘でしたか。 そして、世界樹とエロトラブル・・・ 既視感が(笑)
[一言] 連続更新、お疲れ様です。 巨人・大鵬・卵焼きのどれかが出てくると予想してましたw ヒロイン登場、ですかね? いきなりエロイベントw アルチェムの子供だったりしてw にしても、ソロ暗黒流れ…
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