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第33話 超古代遺跡を見に行こう その3

<・本日のガチャのコーナー>


 変な木ことセガールとの邂逅から二日。


 いつもの朝の作業を終え、朝食の準備に戻ってきた耕助に対し、立て札がそう宣言する。


「これが普通なんだろうけど、最近はあんまり変わったものが出てないよな」


<・ん、残念ながら。

 ・でも、今のところ十連は

 ・それなりにネタになるものが出てるから

 ・次の十連までのため期間と考えれば>


「だといいけどな」


 立て札の言い分に、苦笑しながらそう答える耕助。


 ガチャシステムはいろいろとドラマチックな結果を生み出すが、所詮はランダムだ。


 特に何の補正もかけない場合、毒にも薬にもならないものしか出ないのは基本である。


「まあ、いい。今日のガチャを頼む」


<・了解>


 耕助の言葉に従い、いつものようにガチャを回す立て札。


 スーパーレア以上の演出が入り、出てきたカプセルがゆっくり開く。


 カプセルの中からは、SFなどで見かけるような分厚い目のカードが一枚出てきた。


「なんだこりゃ?」


<・知らない規格のフロッピーとかじゃないなら

 ・普通にカードだと思う。

 ・ビジュアル的には、認証キーとかありそう>


「言われてみりゃ、そんな感じだな」


 そう言いながら、とりあえず鑑定する耕助。


 鑑定結果は


”カードキーLV1:超古代遺跡・超文明の残滓で使用するカードキー。遺跡そのものの解放条件であるとともに、遺跡内部の様々な場所に入るためにも使う。遺跡レベルに連動してレベルが上がり、入れる範囲や使い道が増えていく”


 となっていた。


「超古代遺跡・超文明の残滓、ねえ……」


<・新しい超古代遺跡が解放されたのは確か>


「祠と同じパターンか。そういや、新しい超古代遺跡の解放といえば、前にクズ王のピラミッドを攻略したときに、次の超古代遺跡が解放されたはずなんだが、結局あれは何だったんだ?」


<・あれに関しては、島が発展して面積が広がれば

 ・そのうち出てくるはず>


「そうなのか?」


<・ん。

 ・出現予定地が解放されてないから

 ・出てこれなくなってるだけ。

 ・同じ理屈で、そのうち倭風古代遺跡も

 ・超古代遺跡バージョンが解放される>


「あれか。アプデやシナリオ進行でいきなり一気にいろいろ条件達成済みになるのと、同じ理屈か」


<・ん。

 ・という訳で、頑張って文明を発展させるべし>


「いや、別に超古代遺跡にそこまで興味はないんだが……」


 立て札の言葉に、そう言い返す耕助。


 実際問題、超古代遺跡に関しては、耕助が継続して通っているのはお菓子の城だけである。


 クズ王のピラミッドは試しに難易度が2になるまではクリアしたのだが、新しい報酬もミッションも特になかったため現在放置している。


 祠に関してはシェリアは毎日通ってはいるが、耕助の身体能力では最低難易度ですらクリアできるか怪しいのでスルーしている。


 そういう状況なので、耕助自身はさほど超古代遺跡に興味がないのである。


「耕助さん、それなんですか?」


「ん? ああ、今ガチャ引いたら出てきた。超古代遺跡に入るためのカードキーだと」


 手洗いや片づけを終えてきたシェリアが、目ざとくカードキーを見つけて耕助に問う。


 それに対して、簡潔に答える耕助。


 耕助の答えを聞いて、シェリアの顔が好奇心に染まる。


「新しい超古代遺跡ですの?」


「ふむ、面白そうじゃの」


「では、今日は朝食が終わったら遺跡の探索ですね」


 続いて戻ってきたエリザベス達も、目を輝かせながら口々に言う。


 どうやら、みんな揃って変化に飢えていたようだ。


「立て札の話を踏まえると、カードキーで遺跡が解放されたからといって、必ずしも出現してるとは限らないようだが……」


<・アイテム解放型だから

 ・多分、今いける範囲には出現してると思う>


 これまでのことを踏まえた耕助の懸念を、立て札がやや心もとない感じの言い方で否定する。


 断言ではないのは、まだそのあたりを確認していないからである。


 権限や権能の面では万能に近い立て札でも、基本的に島への干渉はながら作業なので、変化を即座に把握できないことは多々あるのだ。


「まあ、出現しておったら、伝言板のほうに表示されるじゃろう」


<・ん。

 ・この種の比較的小規模な変化に関しては

 ・ボクより伝言板のほうが早くて正確。

 ・なので、基本はそっちで確認して。

 ・大規模アプデの類はちゃんと説明するから>


「島のことなのに、立て札さんより伝言板のほうが早くて正確ですの?」


<・システムの根幹にかかわってくる部分はともかく

 ・超古代遺跡はダンジョンの延長線上だから

 ・いちいちリアルタイムで確認なんてしてない。

 ・というより、やることが多すぎて

 ・そこまで見てられない>


「そもそも、立て札が暇なら、この島はこんな状況になっておらんじゃろうな」


 不思議そうに言うエリザベスに対し、実情を赤裸々に語る立て札。


 レティも補足するように、そんな投げやりに聞こえなくもないことを言ってのける。


「なんにしても、伝言板の確認も遺跡の探索も、朝食の後ですね」


 なんとなく浮足立ちながら脱線しかけた会話を、クリスが方向修正する。


 こうして、耕助たちは新たな超古代遺跡に挑むことになったのであった。








「伝言板の座標的に、恐らくこのあたりだと思うのじゃが……」


 三十分後、砂漠上空。


 朝食を終え、伝言板で出現していることと所在地を確認した一行は、レティの背に乗って運ばれながら遺跡を探していた。


「……あれじゃないか?」


「あれっぽいのう」


「耕助さん、耕助さん! あれ、ものすごく変な建物です!」


 クズ王のピラミッドを通り過ぎたあたりで、耕助が不自然な建造物を発見する。


 耕助が指さしたのと同時ぐらいに、レティやシェリアも同じ建造物に気が付く。


「……どれですの?」


「……よく分かりませんね」


 耕助が指さした方向を見て、首をかしげるエリザベスとクリス。


 どうやら、二人の目には見えていないようだ。


「目の良さが俺と大差なさそうなエリザベスはまだしも、クリスも分からないのか?」


「残念ながら……」


「距離があるからちょっと見にくいとはいえ、派手な青と緑の結構目立つ建物なんだが……」


「砂漠に溶け込まない派手な色してますよねえ」


「うむ。派手じゃのう」


「……見つかりませんね……」


「見つかりませんの……」


 青と緑と聞いて目を凝らすも、結局発見できないクリスとエリザベス。


 耕助が見えているのに、もっと目がよく注意力もあるクリスが分からないというのもなかなか不思議な話である。


「もしかしたら、普通のヒューマンが見るために、何か条件があるのかもしれんのう」


「ああ、そうかもなあ。でないと、あんな分かりやすいものをエリザベスとクリスが見つけられない理由がない」


「というか、妾は言うまでもないが、シェリアも普通の翼人族とは言い難いからのう。それを考えれば、ヒューマンだけでなく普通のエルフや翼人族でも見つけられん可能性はあるのう」


 耕助に見えてエリザベスとクリスに見えない理由に、そんな仮説を立てるレティ。


 実際、レティはドラゴンという属性以前に世界を管理する側の存在だし、シェリアは本人に自覚は一切ないが翼人族の神種だ。


 どちらも普通に分類していい存在ではない。


「ついでに言うと、じゃ。耕助もこの島に関することに限れば、普通のヒューマンではないからの」


「セガールに言われた、島主ってやつか?」


「うむ。お主の存在は、この島と不可分一体といえるぐらい深く結びついておる。さすがにお主が死んだらこの島が滅ぶということはないが、立て札が頑張って整えたあれこれがチャラになった上で、最初より条件が破滅的に悪化するぐらいの影響はあるぞ」


「……俺の体、そんなことになってたのか……」


「うむ。ちなみに、最初というのは耕助がこの島に来た時ではなく、立て札がここの管理を押し付けられた時じゃ。それだけでも、どれほど厄介か理解できよう?」


「……つまり、俺は間違っても簡単には死ねないってことか?」


「そういうことじゃな。ちなみに、発覚したのは、妾がこちらに来た直後ぐらいだったらしいぞ」


 自分でも知らぬ間に、ろくでもない秘密を抱えることになってしまった耕助。


 とはいえ、島のアップデートや新要素解放の結果が耕助の能力と紐づいていることが多い点を考えると、さもありなんと納得するしかない話ではあるが。


「まあ、耕助と島の関係はこの際置いておくとして、じゃ。そろそろ着地するから、エリザベスとクリスが単に発見できなんだだけか、それとも完全に見えておらんのかが分かるじゃろう」


 そう言いながら、ゆっくりと高度を落としていくレティ。


 地面が近づくにつれ、どんどんと建物が大きくなっていく。


「ここにありますの?」


「ただの砂漠にしか見えませんが……」


「ふむ、ということは、シンプルに見えておらんようじゃの」


 見落としようがない大きさの建物が分からないエリザベスとクリスを見て、そう結論付けるレティ。


 理由は不明なれど、彼女たちには遺跡が見えないようだ。


「それで、耕助さん。この建物が超古代遺跡ということでいいんでしょうか?」


「ちょっと待ってくれ、鑑定する」


 シェリアに問われ、とりあえず建物を鑑定する耕助。


 鑑定結果は


”超古代遺跡・超文明の残滓LV1:極度に科学技術が発達し滅んだ超文明の遺跡。セキュリティが半端に生きているため、光学迷彩によりカードキーを持たないものにはその姿が見えない。カードキーでの認証を行うことにより、光学迷彩が解除され中を探索できるようになる。LV1区画は難易度低、危険度皆無”


 となっていた。


「ここであってるっぽい。後、エリザベスとクリスが見えてないのは、この遺跡が光学迷彩で隠れてるからだと。カードキーを持ってなきゃ見えないらしい」


「ふむ、なるほどのう。まあ、光学迷彩なんぞ、妾やシェリアには通用せんから、順当な結果ではあるかの」


 耕助の説明を聞き、したり顔でうなずくレティ。


 どういうシステムで無効化しているかは分からないが、どうやらレティやシェリアにはその種の隠蔽は通用しないようだ。


「光学迷彩って、どんなものですの?」


「一口で説明するのは難しいんだが……。一番簡単なのは、自分の全周囲に本来見えないはずの部分と同じ内容の精巧な絵を張って、そこにいないように見せかける技術ってことになるのか?」


「建物の壁なんかと同じ模様の布をかぶって隠れるとか、そういう感じのことをやっていると思えばいいですの?」


「それを超高度に発達させた感じだな、多分」


 エリザベスの質問に、自信なさげに耕助が答える。


 耕助が説明したのは最も初歩的な光学迷彩の仕組みで、しかも相当簡略化した内容だ。


 とはいえ、エリザベスの科学知識がどの程度なのかが分からないので、光の反射とかそのあたりがかかわる内容の説明は難しい。


 そもそも、そのレベルになると、耕助もぼんやりとしか理解していない。


 なお、写真や映像ではなく絵で説明したのは、エリザベス達の国にそれに相当する技術や魔法があるかどうかわからなかったからである。


「光学迷彩というものについては、なんとなく分かりました。いつまでも私と姫様だけ見えないのもなんとなく腹が立つので、入れるようにしていただいてよろしいでしょうか?」


「そうだな。カードキーを突っ込むのは……、多分あそこだな」


 クリスに言われて、近場のメタリックな青色をした腰ぐらいの高さの柱にあるスリットに、カードキーを挿しこむ耕助。


 カードキーが挿しこまれると、建物の隙間からまばゆい約六万六千色の光がゲーミングな感じで漏れてくる。


 その光に合わせて、砂漠の中から次々とカラフルでメタリックな建物がせりあがってくる。


 数秒後、砂漠にはSF映画に出てきそうな、立派な未来都市が出現していた。


 なお、SF映画では見たことがないほど建物が無駄にカラフルでゲーミングな点については、深く突っ込んではいけない。


「なんだか無駄に派手でまぶしいですの!」


「なんというか、あまり品があるとは言えませんね……」


 ようやく目視できるようになった超古代遺跡に対し、そんな辛辣な感想をぶつけるエリザベスとクリス。


 その感想に、苦笑するしかない耕助。


 耕助的にも、どちらもちょっと否定できない意見だったのだ。


「まあ、とりあえず入ろう」


「そうですね」


「どんなものがあるか、楽しみじゃの」


 耕助に促され、わくわくした様子で遺跡エリアに入っていくシェリアとレティ。


 その後ろを、微妙な表情でついていくエリザベスとクリス。


 こうして耕助たちは、四つ目の超古代遺跡にして初めての遺跡らしい遺跡にチャレンジするのであった。








「さて、どこから調べるか……」


「あの、耕助さん。そもそも、今見えてる建物って、全部入れるんでしょうか?」


「……そうだな。まずは、どの範囲が入れるのか調べたほうがよさそうだな」


 カードキーを挿入した柱の脇を通り過ぎ、ビルに囲まれた広場に入ったところで、耕助とシェリアが当面の方針をそう決める。


 やはり遺跡と銘打つだけあって、ビルの状態はさまざまであった。


「入れるかどうかを調べるのは、どうやりますの?」


「一応、片っ端から鑑定してみようかと思う。まあ、鑑定が通るかどうかは、やってみないと分からないんだが」


「鑑定で分からなかったら、どういう基準でチェックしますの?」


「完全に崩れてるのと傾いてるのは除外、見た目がしっかりしてるやつを中心に中を覗く感じだな。上がもげてるだけとかそういうのは、飛べるシェリアかレティに上から乗ってもらって、大丈夫そうか確認してもらおうかと思ってる」


「それ、シェリアさんとレティさんがものすごく危ない気がしますの! さすがにダメだと思いますの!」


 半ば漢探知といってしまっていいようなやり方でシェリアとレティに確認させようとする耕助に、全力で突っ込みを入れるエリザベス。


 が、その不安を当の本人たちが否定する。


「大丈夫ですよ、エリザベスさん。このぐらいの建物が崩れても、たいして痛くありませんから」


「そうじゃな。シェリアに関しては、高度一万メートルから墜落しても大したケガをせん体じゃし、このぐらいの建物なら、その気になれば持ち上げられんこともなかろう」


「パッと見た感じ、グレータードラゴン三頭分ぐらいなので、多分大丈夫かと」


「じゃろう? 妾に至っては、本来の大きさはここにあるどの建物よりもデカいからの。ビルが崩落したぐらいでは、かすり傷にもならんわ」


 堂々と生き物としてどうなのかと言いたくなることを言い放つシェリアとレティに、唖然とした顔をしてしまうエリザベス。


 そんなエリザベスに対し、これまで黙っていたクリスが淡々と指摘をする。


「姫様。いくらなんでも、この建物に使われている素材がグレータードラゴンの骨や鱗より頑丈だとは思えません。その時点で、シェリアさんやレティさんの脅威にはなりえないかと」


「あの、クリス……。瓦礫に埋まるのと、単に重量物に押しつぶされるのとは、単純比較できないと思いますの……」


「姫様はご存じないかと思いますが、それについてもシェリアさんは前例を山ほど作っておられます」


「そうなのですの?」


「はい。しょっちゅう崖を崩落させて数十トンクラスの岩や土砂に埋まってます。その都度謎のパワーで堆積物を吹っ飛ばして無傷で復活していますので、この広場に面している建物の大きさなら大丈夫かと思います」


「ええ~……」


「時々やたら汚れて帰ってくると思ったら、そんなことになってたのか……」


 シェリアの頑丈さを示すエピソードを暴露するクリスに対し、変なうめき声を出してしまうエリザベス。


 その横で、耕助からジト目を向けられたシェリアが、わざとらしく目をそらしている。


「シェリアのことは置いておこう。漢探知を試す前に、まずは片っ端から鑑定だな」


 そう言って、広場に面する建物や残骸を、片っ端から鑑定する耕助。


 一同の不安をよそに、建物に対する鑑定はあっさり成功する。


「見た目に破損がない建物と外壁が軽く崩れてる程度の建物は今の時点で侵入可、もげてたり傾いたりしてるのは修復後に侵入可能、瓦礫は遺跡レベル上昇で修復可能になるそうだ」


「ふむ、修復ができるのじゃな?」


「らしい。ちなみに、あそこの一番立派で一番しっかりしてる建物は入るのに権限がいるらしくて、カードキーの持ち主がいないと入れないようだ」


「なるほどの。入れる建物に危険はあるのか?」


「特に壊れてない建物は危険度皆無、破損があるやつは危険度微になってるな」


「では、危険度皆無のものを耕助とエリザベス、クリスの三人で手分けして探索すればよかろう。それ以外は妾とシェリアでやろう」


「だな。権限がいるやつ以外は、全員で同じ建物を調べる必要もなさそうだし」


 耕助の報告を聞き、そんな方針を示すレティ。


 レティの方針にうなずき、エリザベスとクリスを見る耕助。


 耕助の視線を受け、クリスが一つうなずいてから口を開く。


「それでは、姫様はあそこの比較的小型の建物をお願いします。私はあちらのちょっと高い建物を調べます」


「じゃあ、俺はあっちの二階建ての広い奴だな」


 耕助が危険度皆無だと断定した建物を比較し、クリスがそんな風に割り振る。


 それを受けて、耕助が消去法で自分の担当する建物を決める。


「どうせこの島の超古代遺跡だから、報酬か攻略に必要なもの以外は動かせないだろうし、少なくとも俺とエリザベスはそんなに時間かからないだろう」


「耕助さん、耕助さん。開きそうなのに開けられない扉とかあった場合、どうしましょうか?」


「今の段階では放置だな。その系統はただの飾りか何かのギミックを特化しなきゃ開かない類だろうから、ここで時間をかけるだけ無駄だ」


「分かりました!」


 シェリアの問いに対し、そう方針を告げる耕助。


 その方針に納得したらしく、元気よく同意するシェリア。


「では、妾はあれを調べてくる」


 細かい方針も決まり、さっさと目をつけていた建物へと向かうレティ。


 レティにつられるように、一番遠い位置にある建物へ飛んでいくシェリア。


 二人を見送った後で、最初に決めた建物に向かう耕助たち。


 三十分後、全員が調査を終えて戻ってくる。


「私が調べた建物は、万扱いの商店だったみたいですの。多分食べ物だと思われるものが入った箱と、絵や読めない文字が書かれた冊子、とても質がいいタオル、液体が入った不思議な素材でできたボトル、ブラシだと思うものがひとつづつ見つかりましたの」


 全員揃ったところで、真っ先にエリザベスが報告する。


「そのラインナップ、コンビニっぽいな」


「コンビニ、ですの?」


「ああ。正確な表現は難しいが、食品関係をメインに、いろんなものを扱う商店だ。扱うものは食べ物や雑貨、書籍みたいな現物があるものだけじゃなくてな。劇やコンサートのチケットみたいなものの手配や、各種料金の支払い手続きみたいなサービスもやってた」


「それはまた、手広く扱っていますのね」


「ああ。しかし、こんな科学技術が発達したっぽい文明でも、紙の書籍は扱ってたんだな」


 そう言いながら、エリザベスが持ってきた冊子をぱらぱらとめくる耕助。


 どうやら女性向けのファッション誌らしく、文字は読めないが流行っていたであろう服装は分かるようになっている。


「ふむ……。この雑誌を見る感じ、全部が全部俺たちの時代の服装感覚とずれてるわけでもなさそうだな」


 エリザベスが着ていたようなドレスから二十一世紀のガーリーファッション、エ〇ァに出てきそうなぴっちりスーツベースのものまでいろんな服が掲載されるのを見て、そうつぶやく耕助。


 それを聞いたエリザベスが、不思議そうに耕助を見る。


「何かおかしい内容がありますの?」


「おかしいわけでもないんだけどな。俺が調べた建物に残ってた服が、この系統ばっかりでな」


 そういって、ぴっちりスーツの写真を指差す耕助。


「これは、破廉恥ですの!」


「正直、この雑誌見るまでこの服が標準なんだと思ってた」


「ふむ。違うとなると、どう見る?」


「単に、ランダムで出た報酬がこれだったんじゃね?」


「なるほどの」


 耕助の判断に、納得してうなずくレティ。


 遺跡の体を取っているが、基本的に超古代遺跡はダンジョンの一種だ。


 構造こそ固定されてはいるものの、手に入るものが決められたカテゴリーの中でランダムなのは、これまでの遺跡すべてに共通している。


 ちなみに、クズ王のピラミッドのクリア報酬も多少のランダム性はあった。


 ただし、価値のない悪趣味なペンダントが価値のない悪趣味な指輪や腕輪、メダルなどに代わるだけなので、まったく意味はないのだが。


「で、エリザベスのほうは、まだあるか?」


「多分お店の倉庫につながると思われる扉がありましたの。ただ、開きそうで開かなかったのと、カードキーを挿しこめそうなところがありましたので、今回は放置することにしましたの」


「ああ、それで正解だ。俺が調べた建物にも、そういう扉が結構たくさんあってな。鑑定したところ、レベル2以上か3以上、もしくは管理権限が付与されたカードキーがないと入れないってなってた」


「ということは、遺跡をクリアしてカードキーのレベルを上げんといかん、という訳かの」


「だな」


 耕助からの情報で、そう結論を出すレティ。


 そのあたりは耕助にも異論はないらしい。


「じゃあ、次は俺が報告する。つっても、重要なところは大体報告してるから、あの建物が何だったか、だな」


「ですね。服があったということは、服屋さんですか?」


 流れで報告をはじめた耕助に、シェリアがみんな思っているであろう疑問を口にする。


「服屋もあったってのが正しいな。あれはいろんな種類の商店が入った複合商業施設だったらしくてな。調べた感じ、服だけでなく宝飾品を扱う店、かばんや雑貨を扱う店、靴を専門に扱う店、雑貨店、書店、飲食店が数店舗、食料品店があった。もっとも、そうと分かる痕跡があっただけで、手に入ったのは服とお湯で戻すタイプのピザだけだったが」


「……ピザって何ですか?」


「シェリアの郷にはなかったのか?」


「はい。お湯で戻すっていうことは料理だと思うんですけど、だとしたら知りません」


「そうか。ピザってのは、薄く延ばした生地にソースを塗ってチーズとかハムとか野菜を乗せて焼く料理だ。普通はお湯で戻せるような料理じゃないんだが、超文明だからそういう技術もあったんだろう。まあ、俺のところはこれで終わりだな」


 そうざっくり説明して、報告を切り上げる耕助。


 耕助の報告が終わったのを見て、クリスが自身の報告を始める。


「正直なところ、私の調査した建物は、恐らく耕助さんが再度調査をするか、カードキーのレベルをあげてからでないと調査の意味がなさそううです」


「というと?」


「あの高さなのに、私が入れたのが三階まででした。しかも、あったのがすべて飲食店と思われる店舗で手に入るものは何もなく、入れない扉があちらこちらにありました」


「そういうタイプのビルか。ってことは、場合によっては修復が必要になるかもな」


「何か心当たりが?」


「そういうビルは、非常階段以外はエレベーターでしか上の階に上がれない構造になってることがあってな。エレベーターが生きてるかは分からないから、ちゃんと調査するなら修理が必要になるかもしれん」


「なるほど」


 耕助の説明に、納得してうなずくクリス。


 それを聞いていたシェリアとレティが、お互いに顔を見合わせる。


「その様子では、シェリアのほうもクリスと大差ない感じかの?」


「はい。入れる範囲だと、机がいっぱいあって書類を置いてある棚があっただけで、持ってこれるものはありませんでした。書類はボロボロすぎて、触ると崩れそうだったので置いてきました」


「妾のほうも、恐らく工場の類じゃろうというのは分ったがの。設備が生きておるのかどうかもよく分からなんだ。設備以外は何も残っておらんかったから、何を作っておったのかもわからん」


「となると、結局あそこを調べないと、何も分からないってことか」


「じゃのう」


「ですねえ」


 耕助の結論に、二人してうなずくレティとシェリア。


 それを聞いて、少し考えこむ耕助。


「よし。長丁場になるかもしれないから、いったん戻っていろいろ用意して、早めの昼飯を済ませてからあの建物を調べよう」


「そうじゃな。危険度皆無といえど、なんぞの道具がないと困る可能性はあろう」


「調査って、何気に神経を使うからお腹が減りますし」


「休憩には早いですけど、私は体力がない自覚がありますの。区切りがいい時に休んでおかないとまずい気がしますの」


「そうですね。それに、姫様が一食抜くなんて、許されることではありません」


 耕助が出した結論に、全員が同意を示す。


 こうして、超古代遺跡の調査は、一度仕切り直しとなるのであった。

ロボを出したかったのに、そこまで到達しなかった……。


多分、この遺跡が耕助たちにとって一番実利がある遺跡になるだろうと思われます。

祠は効果は高いんだけど、耕助自身には何の恩恵もないのがマイナスポイントで……。


セレナ先輩はキャラが暴走しない限りは、次の次に登場となりそうです。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 生えてくる超古代遺跡w まあ仕様なのでしょうが、違和感がすごいですね。 耕助と島、一心同体なんですか。 島が擬人化したら面白いことになりそうですねw シェリアwww ヒロイン…
立て札さんパパのヘタレ創造神『漢探知は基本やで。』
最初トレーディングカードかと。 衣類が一番欲しい気がしますが、手に入らないかな。 ロボはメカメカしくて語尾が「ピピッ、ガガガ」なのかそれともロボット娘なのか。 シェリアが生き埋めを黙っていたのって心…
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