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住所不定無職の異世界無人島開拓記  作者: 埴輪星人


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第30話 製塩設備を用意しよう

「今日は一杯収穫できますの!」


「まあ、今日のところは全部種にするんだがな」


 大豆が発芽してから五日後、耕助が島に飛ばされてから十九日目。


 様々な作物が実る畑を前に気勢を上げるエリザベスに、そんな水を差すようなことを言う耕助。


 えげつないペナルティを乗り越え、もしくは無効化した種から育った様々な作物が、一気に収穫を迎えていた。


「成果としてはキャベツとレタスが三玉、ホウレンソウが二株、地中に埋まっていて判別が難しい作物がもろもろ、というところですか」


「鑑定結果によると、ショウガと玉ねぎが三株ずつ、サツマイモと里芋が二株だな」


「ふむ。どの程度の種になるのでしょうか?」


「それはウォーレン次第だが、今まで作物一つで二個未満だったことはないな」


 クリスの質問に、端的にそう答える耕助。


 発芽したのはほぼ全てペナルティを無効化した謎の種スペシャルだが、何らかの意地を見せたのかウォーレンからもらった謎の種も、大豆とは別に一つだけ収穫に至っている。


 なお、ホウレンソウのうち一株が、ウォーレンの種から育ったものだ。


 ちなみに、シェリアがもらってきた謎の種スペシャルは五十粒が二回の計百粒。最初にもらってきた次の日にも変な木に遭遇して、追加の五十をもらってきている。


 今日の収穫分は、その最初の日にもらった五十粒のものだ。


 なお、収穫できるのは耕助たちが数え上げた作物計二十株だが、それとは別に大豆が三株ほど謎の種スペシャルから育っている。


 それでも八割どころか五割を切っているのは、耕助だからとしか言いようがない。


「食べられませんの?」


「明日の分までは、種にしときたい」


「そうですの……」


「種さえ確保すれば、安定して食べられるようになるから、今日と明日は我慢してくれ」


「分かりましたの……」


「すまんな。俺の腕と運がもっと良くて、八割の確率を額面通り受け取っても大丈夫ならキャベツ一玉ぐらいは食べても大丈夫だったんだが……」


 食べられないと聞いてしょんぼりするエリザベスに、心底申し訳なさそうにそう告げる耕助。


 基本的にどんな難しい作物でも、必要な作業を忘れなければ運次第で収穫できるこの島の農業において、耕助のように変なところで運を使って平時は壊滅的なタイプはいろいろと不利である。


 そのあたりを土偶やウォーレンたち、先日植えた神聖樹の幼木などがフォローしてるとはいえ、それでもまだまだ平均的とはいいがたいのは結果を見れば一目瞭然であろう。


 なお、耕助の熟練度が上がったためか、それともウォーレンたちのマスコットレベルや神聖樹の幼木の設備レベルが上がったからか、二日目に植えた謎の種スペシャルはきっちり八割育っている。


 やや大豆が多めなため、収穫できる作物に余裕がなくて結局今日明日は食べられないのは変わらないが、大豆は大豆で本格的に食べ始めると消費量が多いので痛しかゆしといったところだろう。


「見たことがあるようなないような、そんな作物がいっぱい実ってますね!」


「俺にとっては、なじみがあるものばかりなんだがな」


「へ~、耕助さんの国では、全部一般的なんですか」


「ああ。というか、反応的にエリザベスやクリスのところでも一般的なんだろうな。というか、シェリアはどれが初見なんだ?」


「えっと……。あの玉になってる葉っぱは、見たことないです」


「キャベツは知らないのか……」


 シェリアの言葉に、地域差や文化の違いを感じる耕助。


 もっとも、住んでいたのが巨大な木の枝だという話なので、野菜の大半は栽培されているところを見たことがない可能性はあるのだが。


「あと、波打つ感じで真上に伸びてる葉っぱは、似たようなものがたくさんありすぎて初めて見たのかどうかが分かりません」


「ホウレンソウはそうかもしれないな。ってことは、豆類も同じかどうかは分らない可能性があるわけか」


「多分、分らないと思います」


 シェリアの言葉に、さもありなんとうなずく耕助。


 実際、ホウレンソウやチンゲンサイなどの菜っ葉系は、よく似た特徴を持つ草がたくさんある。


 豆類にしても、莢に入った状態では素人には区別がつかない程度にはそっくりなものがちらほら存在する。


 肉食系で狩猟文化の郷で育ったシェリアが、このあたりの作物を知っているかどうかわからなくても不思議ではない。


「まぁさ、シェリアの作物知識はこれからに期待として、だ。大豆ができたってことは、そろそろ塩の増産を考えなきゃだめか……」


「そうなのですの?」


「ああ。俺の故郷でよく使う調味料にな、大豆を発酵させて作るものがあるんだが、それに結構な量の塩が必要になるんだよ。出てきたレシピを踏まえると、今作ってるぐらいの量じゃ全然足りないな」


「そんなにたくさんの塩分を含んだ調味料って、大丈夫ですの?」


「一回で樽一個分ぐらいの量を作るから、それなりに塩もいるんだよ。そもそも大抵の場合、発酵させて作る調味料って、少量作るのは逆に難しい類だし」


「そうなのですの?」


「そう。だから一度に使う量に含まれる塩分は、そこまですさまじくもなかったはず」


 エリザベスの疑問に対し、ざっくりとした説明をする耕助。


 なお、耕助が作ろうとしている味噌や醤油に関しては、少量作るのが難しいというより手間に合わないというのが正しい。


 これが様々な材料を煮込んで熟成させて作る類のソースになると、材料の嵩がダイレクトに完成品の量に直結するため、使う材料の種類が多くなればなるほど最低単位は多くなる。


 いずれにせよ、作るとなれば樽単位になると考えたほうが無難であり、それ相応に要求される塩の量も増える。


 今の錬金術でダイレクトに作るやり方だと、到底足りないのは間違いない。


 そろそろ、別の方法での増産を考える時期なのだろう。


「増産するのはいいが、調味料を作り終えたら逆に大量に余りはせんかの?」


 そんな話をしていると、住処から飛んできたレティがそう突っ込みを入れる。


「あ、レティさん。おはようございますの!」


「おはようございます」


「うむ、おはようじゃ」


「おはよう。まあ、余るだろうな」


 レティに朝の挨拶をしながら、あっさりそう言ってのける耕助。


 綱渡り気味とはいえ、この人数でも今までのやり方で足りていたのだから、増産すれば余るのは当然だろう。


「別に、余れば作るのを止めればいいだけだから、別に問題ないだろう?」


「それはそうなんじゃろうが……」


「そんなにうまくいくのかって言われると、やってみないと分からないとしか言いようがないんだが、まあ大丈夫だろう」


「その根拠はなんじゃ?」


「仮に設備でやるとして、今のところ加工関係は常時稼働してるようなものは出てないからな。塩にしても他の調味料にしても、必要なだけ作れる仕様にはなってるはずだ」


「本当にそうなのかのう……?」


 楽観的なことを言い出す耕助に対し、疑わしそうな視線を向けるレティ。


 立て札が関わっている時点で、そんな都合のいい仕様になっているのかが怪しくてしょうがない。


「レティの警戒も分かるんだけどな。正直な話、この島の仕様や傾向だと、製造のオンオフじゃないところで問題が出る可能性のほうが高いと思うんだよな」


「耕助さんは、どんなところに問題が出ると思われていますの?」


「一番胡散臭いのは、多分味だろうな」


「味、ですの?」


「なんというか、設備が強化されるまではえぐみの強い塩になるとか、そっち方面にペナルティがありそうでなあ……」


〔・さすが耕助、よく分かってる。

 ・エネルギーなしで放置しても無限に生成される系は

 ・水脈掘り当てた時の水とか温泉だけ〕


 耕助の予想に応えるように、にゅっと生えてきた立て札がそう告げる。


〔・ちなみに、レベルもグレードも低い設備だと

 ・塩の味に強いえぐみが残る〕


「えぐみか……。精製しなおしたりでましになるのか?」


〔・耕助の熟練度だったら

 ・完全に消すのは無理だけど

 ・気にならない程度にするのはできる。

 ・料理と錬金術、どっちでも可能で

 ・どっちでやっても同じぐらいのクオリティになる〕


「そうか。やっぱ、錬金術でやったほうが一気にできるか?」


〔・どっちもどっち。

 ・ただ、薪の消費がない分

 ・錬金術のほうがコスパはいいと思う〕


 せっかくだからと、親切にも具体的な問題点や対処について教えてくれる立て札。


 それを聞いていたレティが、設備について具体的な質問をしてくる。


「余るなどの問題は大丈夫なのは分ったがの。具体的に設備のレシピなどは持っておるのか?」


「一応、ちょっと前に唐突に出てきた」


「ふむ。ミッション報酬やガチャ関連ではないのか?」


〔・製塩設備は、条件を満たして習得。

 ・トータルで作った塩の量や設備の数

 ・釣り、罠、採取系とクラフトおよび錬金術の熟練度で

 ・レシピが出てくる感じ。

 ・ちなみに、お約束の塩田ではない〕


「っぽいんだよな。作ったわけじゃないから断言できないんだが、ホースのついた箱みたいな形になってる」


 レティの疑問に、そう答える耕助と立て札。


 その内容を聞いて、レティが微妙な表情を浮かべる。


「箱というのが、意味が分からんのじゃが……」


〔・判で押したように塩田作るのは芸がない。

 ・そういう展開はもう飽きた。

 ・だから、ギャグっぽい感じの設備を用意した〕


「のう、立て札よ。それでいいのか……?」


〔・それもまた、個性〕


 レティの突っ込みに対し、しれっとそんな言葉を表示する立て札。


 どうにも立て札は、お約束ネタばかりが続くのは嫌なようだ。


「耕助さん、耕助さん! 気になるので早く製塩設備を作りましょう!」


「全然想像がつきませんの。そもそも、箱で塩が作れるなんて、聞いたことがありませんの」


「塩田については聞いたことぐらいはありますが、さすがに箱でというのは初めてですね……」


「言われなくても作るから、まずは畑作業と朝飯な」


 正体不明の設備に対して勢いよく食いつくシェリア達に対し、なだめるようにそう告げる耕助。


 作ることに異存はないが、まずは毎朝の作業を終わらせてからであろう。


 耕助になだめられ、収穫作業に入る一同。


「にしても、毎日作ってるラディッシュが、そろそろシャレにならないレベルで余ってきてるな……」


「そんなにたくさん食えるようなものではないからのう……」


「いっそ、この種のもので育つ家畜がいればいいのですが……」


 ラディッシュを収穫しながらぼやく耕助に同意し、同じようにぼやくレティとクリス。


 毎日植えて毎日収穫しているため、収穫量が圧倒的に消費量を上回っている。


 なお、熟練度関係の問題があるため、今のところ栽培しないという選択肢はない。


「家畜、なあ……」


「この島だと、わけのわからない感じの生き物になりそうな気がしますの」


「そういえば変な木の近くに、スライムなのかクマなのかトカゲなのかアリクイなのか分からない感じの、すごく変な生き物が巣を作ってました」


「……速攻でのフラグ回収、ありがとう。まあ、たとえ普通の家畜だったとして、俺達で管理しきれるのかって問題はあるが……」


「そもそも私、動物の世話って経験がありません」


「それに、飼う目的が食肉用だとして、肉は十分在庫がある上に、情が移って食べられなくなるのではないかと思いますの」


「労力に関しては、十分足りてるからなあ……」


 クリスの家畜という言葉を受け、耕助とクリス、シェリアの三人が思うところを口にする。


 現状、定期的にドラゴン肉が手に入るため肉類は特に必要なく、労力にしても畑は今いる人員で余裕をもって十分回っている。


 移動に関しては必要であればレティが運んでくれるので、家畜に頼る必要も薄い。


 しいて何かを飼育するとすれば、卵の安定供給のために家禽の類を飼うか、毛を目当てに羊を飼うかのどちらかだろう。


 なお、一番の問題である家畜をどこから連れてくるかは、現時点では考えないものとする。


「……食う以外の使い道か、もう少し食いやすくなる方法かの、どっちかを探したほうが建設的だな、多分」


「そうじゃな」


 余計なことを考えてもろくなことにならないと判断したのか、とりあえずラディッシュの使い道については棚上げすることにする耕助。


 耕助の判断を、レティも支持する。


 そんなこんなで、いつもより豊作な感じとなった畑作業は、特にトラブルもなく無事に終了するのであった。








「さて、製塩設備の材料は、っと……」


 いつもの朝食も終わり、さっそく設備の製作に取り掛かる耕助。


 何気に、アップグレードではなく一から設備を作るのは久しぶりである。


 なお、エリザベスとクリスは、今日もまた釣りに精を出している。


 レティはいつものように島の調査なので、この場に居るのはシェリアだけだ。


「木材に鉄、銅、石、雑草、魔石か……。鉄と銅は腐食するんじゃないかとか、結局木材なのかとか、いろいろ思うところはあるが、それ差し置いても雑草が謎すぎるな……」


 材料を確認し、そんな風に突っ込んでしまう耕助。


 伝言板の例を挙げるまでもなく、材料と完成品に必ずしも完全な相関関係はないのがこの島のものづくりだ。


 無論、窯や炉のように材料と完成品のイメージが一致するもののほうが多いし、伝言板のような事例でも枠や足など材料そのままの部分があるのが普通なので、全く無関係ともいえないのではあるが。


「まあ、とりあえず作ってみるか。まずは鉄と銅の精錬からだな」


 材料を確認し、準備を始める耕助。


 なんだかんだで溶鉱炉の設備レベルも上がっているため、銅の精錬ぐらいまではほぼ失敗せずに可能である。


 ほぼ、なのは耕助なのでしょうがないところだ。


「耕助さん、鉱石は足りますか?」


「大丈夫だと思う。そもそも、精錬済みのインゴットでも一応一回分はあるし」


 シェリアに聞かれ、そう答える耕助。


 つるはしを持ってうずうずしている様子を見るに、どうやら採掘して持ってきたいらしい。


「てか、シェリア。毎日それなりに採掘してるんだから、そうそう足りなくなることはないぞ?」


「そうですか……」


 耕助の言葉に、しょんぼりするシェリア。


 普通に考えれば耕助の発言はフラグ以外の何物でもないのだが、残念ながら今回に限っては間違いではない。


 何しろ、資源用倉庫だけでは足りず、植物資源倉庫と鉱物資源倉庫のレシピが出てくるほど、毎日大量に素材を回収してきているのだ。


 また、設備レベルと設備総合レベルの恩恵もあって、インゴットの精製やレンガの焼成は一回分の材料で三個から五個の完成品が出来上がる。


 いくら耕助の運がないと言っても、絶対に失敗するペナルティでも発生していない限りは全部使いつぶすのは無理だろう。


 もっと言うなら、枯渇するほど失敗しようと思うと、物理的に時間が足りない。


「とりあえず、銅を精錬している間にパーツづくりだな。まずは木材から……」


「どんな感じになるんでしょうね?」


 シェリアが落ち着いたのを見て、パーツづくりに入る耕助。


 銅の精錬にはそれなりに時間が必要なので、他の作業を並行して行うぐらいのことはできるのだ。


「……よし、できた。で、雑草を編んでホース的なものを作って……。って、これ、漏れたりしないのか?」


「なんか、駄々洩れしそうですよね」


「だよなあ……。まあ、指定されたとおり作るか」


 どうにも不安をそそる代物を、スキルの指示に従って黙々と加工する耕助。


 どうせ組み立てた時には別物になっているのだろうと、無理やり割り切ることにする。


「で、次は鉄と銅のインゴットを石と一緒に砕いて、ほどほどの温度の熱した窯に放り込んで焼き付け、網状に加工」


「こうすると、錆びなくなるんでしょうか?」


「知らん。多分メッキ的な何かなんだろうけど、絶対こんなやり方でもこんな材料の組み合わせでもないだろうし。つうか、メッキだとしたら多分だけど、網に加工してから表面に張り付けるか塗り付けるかするんじゃないかと思うんだが……」


「そうなんですか?」


「いや、俺も専門家じゃないから、詳しくは分らないんだが……」


 続いての作業の突っ込みどころについてそんな話をしながら、在庫の鉄と銅のインゴットを指示通りに加工する耕助。


 なお、耕助の疑念通り、普通錆を防ぐための表面処理というのは、メッキにしろパーカーライジング(黒染めとか防錆とも呼ばれる表面処理)にしろ、加工を終えてから一番最後に行うものである。


 今回指示されたやり方は、どちらかというと合金を作って材料自体を錆びにくくする方法に近い。


 が、言うまでもないことだが、合金というのは基本的に材料を精製する際に成分を調整して作るものであり、こんな風に石と鉄と銅を砕いて一緒に焼くなんてやり方は、素材の面でも作業の面でもありえない。


 ここまでやり方が雑でかつ豪快であれば、専門知識がなくてもおかしくないかと突っ込むのは当然だろう。


「まあ、いい。できた網を最初に作った木材のパーツで囲って固定。最後に木と鉄で箱を作って網をセット、網と網の間に石を詰めて蓋をして、ホース的な何かを接続。魔石を取り付けて魔力を流す、っと」


 指定された工程を最後まで進め、魔力を流し込む耕助。


 いつものパターンでは、この手の面倒くさい構造のアイテムを作る場合、一回目は大体ここでボフンと音がして消滅する。


 今回もそうなると思って身構えていたのだが、最近畑で不運が続いていたからか、珍しく一発で成功する。


 なお、このタイミングで銅の精錬が終わっているが、自動排出なので二人ともとりあえず放置している。


「……これで、本当に塩ができるのか?」


「……さあ?」


 完成した設備を見て、胡散臭そうな表情を隠そうともせずに正直な感想を言い合う耕助とシェリア。


 設備は蛇口のついた木の箱からホースが伸びている、としか表現できない見た目をしていた。


「……まあ、テストしてみるか。多分使い方はこうだよな……」


 完成した以上、テストはしておくべき。


 そう考えて、設備を抱えて海岸へ向かう耕助。


 その後を、塩を入れるための桶を持ってシェリアがついていく。


 海岸に到着してすぐに腰より上の高さになるように適当な場所に設備を置き、ホースを海に突っ込む。


 阿吽の呼吸で蛇口の下にシェリアが桶を置き、何かを警戒するように少し距離を置く。


「シェリア?」


「なんか、いきなり噴き出して塩まみれになりそうな予感が……」


「ああ、うん。シェリアならその懸念は正しいな……」


 シェリアの行動に納得しつつ、蛇口をひねる耕助。


 ポンプにあたる機構は一切内蔵されていないというのに、ぐんぐん海水を吸い上げていく設備。


 その際、ホースがまるで蛇が獲物を飲み込むがごとく膨れたりしぼんだりしている点については、突っ込むだけ無駄であろう。


 なお、言うまでもないことながら、固形物でも吸い上げない限りは、流体が流れるホースがこんな挙動をすることはない。


「うん、塩が出てきたな……」


「わ~、簡単ですね~」


「使うためには魔力がいるみたいだが、そのあたりは溶鉱炉とかも同じだから問題なし。効率はさすがに、錬金釜でやるより圧倒的にいいな」


 塩が無事に出てきたのを見て、そうコメントする耕助とシェリア。


 設備の耐久性にもよるが、とりあえずこれで塩に関しては困ることはなくなったと言っていいだろう。


「で、肝心の味は……。……うん、えぐいな。このまま使うのはきつい」


「ですね~……」


「桶がいっぱいになったら、錬金術での精製を試してみないとな」


 とてもそのままでは使えない味の塩に、そう結論を出す耕助とシェリア。


 すでに桶に満タンになっているので、蛇口を閉めて拠点に戻る。


 なお、塩の精製に関してはこれといったトラブルもなく……


「まあ、こんなもんだよな」


「微妙に変な味がしますけど、お肉とかに振る分には分からなくなるんじゃないでしょうか」


「だよなあ」


 できた塩も及第点という味に仕上がる。


「……設備がシュールなこと以外にこれといっておかしなことが起こらんというのも、それはそれで微妙な気分になるもんじゃのう……」


 いつの間にか戻ってきていたレティがその様子をみて、そんな複雑な思いを吐き出していたのはここだけの話である。

塩田ネタをこすろうかと思って、立て札がそんなお約束をやるわけがないと思いなおしたわけですが。


一話ぐらい、こういう何事もなくスムーズに新しいことが進む話があってもいいかな、ということで、シェリアのエロトラブルも耕助の極端な出目の悪さもお休みしてもらいました。

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― 新着の感想 ―
ドラゴン肉を加熱処理して獣醤作るのが現時点だと素材的には楽に作れそうだけど>醤油
更新、お疲れ様です。 8割から5割、ですか。 これだけ聞くと少ないですが、耕助なら快挙と言って良い成功率かとw 塩は重要ですからね。 いくらあっても良いかと。 味についてはまあしょうがないかと。 …
足りないもののほうがまだまだ多いですが、遠からず詰む未来が見えそうな状態からはもう脱していますね。 とはいえ、天候が変わるようになったら厳しそうですけど。 塩田もなんか耕して海水まいたら塩ができるく…
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