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第22話 技術革新をしよう その4 鉄で道具を作ろう

大変遅くなりました……

さすがに二回もバグるとは思わなかった……

〔・●REC〕


 十日目の朝。目を覚ました耕助の目に入ったのは、いつものように妙なことをしている立て札の姿であった。


「……なにやってるんだ?」


〔・見ての通り、撮影してる〕


 寝起きだけに何となく切れが悪い耕助の疑問に、そう答える立て札。


 ご丁寧にも、わざわざLEDが点灯しているビデオカメラの絵をでかでかと表示しているあたり、こういうことには手間を惜しまないようだ。


「……何の?」


〔・耕助の痴態。

 ・住所不定無職三十五歳、異世界で性的に襲われる。

 ・相手は身体能力特化系種族の十六歳美少女〕


「いろいろシャレになってねえ!!」


 立て札のえげつない一言に、思わず絶叫する耕助。


 ある意味において耕助の一番の弱点を、無遠慮につつきまわされた形である。


 その耕助の絶叫で、いつものように腕にしがみついていたシェリアが目を覚ます。


「うにゅう……」


 いつものようにあざとい鳴き声を漏らしながら、シェリアが耕助を解放して体を起こす。


 その上半身が、なかなかとんでもないことになっていた。


「シェリア! 服、服!」


「ふぇ?」


 慌てて目をそらしながら、シェリアを促す耕助。


 耕助に言われて、胸がもろ出しになっていることを確認するシェリア。


 とりあえずこのままではまずいので、一応身づくろいをする。


 とはいえ、もともと見られること自体をあまり気にしていないので、寝起きで頭が回っていないこともあってその動きは鈍い。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


 そんな中、唐突にウォーレンの叫び声が聞こえてくる。


 その声にびくっとし、思わず玄関扉に目を向けてしまう耕助。


 なおこの時、シェリアはなぜか玄関扉の前で身づくろいをしており、しかもどういう訳かウォーレンの叫びに反応して耕助のほうへと向きを変えていた。


「耕助さん、今の声は」


「ウォーレンだろうけど、その前に服!」


「あっ、はい」


 再び視線をそらしながらシェリアにそう指示を出す耕助。


 中途半端な身づくろいの結果、シェリアの格好は起き抜けの時よりさらにエロくなっていたのだ。


〔・今日はいつもより

 ・サービスが旺盛。

 ・地球の動画配信サービスだと

 ・BAN確定〕


「俺のせいじゃないからな!?」


 余計なことをさえずる立て札に、全力でそう突っ込んでおく耕助。


 そんなこんなで、十日目(キリ番)だからか、普段よりエロトラブルマシマシで一日が始まるのであった。








「で、朝っぱらから、ウォーレンは何を騒いで……。なんだありゃ?」


「なんかいますね?」


「いるな。ウォーレンよりは正体不明じゃない感じのが」


 ウォーレンの絶叫から五分後。ようやく家から外に出た耕助たちは、すぐに絶叫の原因を見つける。


「どり~、どり~♪」


「うぉ、うぉ……」


 緑の髪に茶色の肌の、一目で植物系の種族と分かるビジュアルの二頭身の幼女が、ウォーレンに付きまとっていたのだ。


「なあ、ウォーレン。そいつ、どっから生えてきた?」


「うぉ、うぉ……」


「あ~……。そういや昨日、壊れかけの鍬に止めさすために、何も植えない畑を耕したなあ……」


 ウォーレンの言葉に、昨日空き区画を一つ作ったのを思い出す耕助。


 だが、空き区画に何かが生えるのに、三日かかるはずだ。


 昨日の今日で何かが生えてくるのはおかしい。


「いやいやいや。ウォーレンだって、生えてくるまで三日かかったんだ。何でもう生えてるんだ?」


〔・ごく低確率で、三日たたずに何かが生えることはある。

 ・あくまで、耕す前の状態に戻るまでに

 ・三日かかるだけ〕


「そういう仕様なのか……」


〔・ん。

 ・でも、耕助の運を考えると

 ・悪い内容ならともかくいいほうで

 ・そんな低確率を引くとは思えない。

 ・多分、何かが干渉してる〕


「俺の運じゃありえないってのは同感だが、ウォーレンの時はどうだったんだ? って疑問がな……」


〔・あれはアプデがらみで

 ・因果律が一時的に無茶苦茶になってたから。

 ・ああいうときは割と、普段起きないことが起こる〕


「逆に言うと、そういう時でもないとウォーレンみたいなのは生えてこないと……」


〔・ん。

 ・というか、そういう理由なしで

 ・普通に生えてこられても困る〕


「そりゃまあ、そうか……」


 立て札の説明に納得しつつ、ウォーレンと幼女のほうに視線を向ける耕助。


 幼女は、ひたすらウォーレンになついていた。


「で、あれも正体は分らないのか?」


「あれはドライアドの類じゃろう」


 再び立て札のほうを向いてそう確認した耕助に、いつの間にか来ていたレティがそんな答えを告げる。


「おはよう、レティ。来てたのか」


「うむ、おはよう。ちょうど今来たところじゃ」


「で、ドライアドってよく聞く種族だけど、あんな感じなのか?」


「全部ではないが、ああいう感じの種もおるの」


「なるほど。他の可能性は?」


「似たような種族としてはアルラウネもおるが、あ奴の気はどちらかというと樹木じゃからな。アルラウネならもっと草の気が強いから、まず間違いなくドライアドじゃろう」


「ふむふむ」


 耕助の質問に、そう断言するレティ。


 レティの説明に、感心しながら納得する耕助。


 とはいえ、実際のところ、耕助からしてみればドライアドだろうがアルラウネだろうがそれ自体はどうでもよく、重要なのはこの島や自分たちに害があるかどうかである。


「で、さっき立て札も言ってたんだが、あんなのが一日で生えてくるのはおかしい。多分何者かが干渉してるんだが、何がどういう理由でっていうのが分からなくて、不気味でしょうがない」


「あの、耕助さん」


「どうした、シェリア?」


「あっちの土偶の目がずっと点滅してて、埴輪がくるくる回ってるんですけど、何か関係があるんでしょうか?」


「……間違いなく、あれが関係してるってことだな」


 シェリアの報告に、疲れた顔でそうぼやく耕助。


 よくよく考えれば、例の土偶は土器づくりの時に銅鐸や埴輪を作るように干渉していたのだから、今回も干渉していてもおかしくない。


 どういう基準で干渉してくるのかはいまいち分からないが、この分では今後もことあるごとに何かやらかしそうだ。


「本当にあれ、魂も人格もないのか……?」


〔・今のところ、それっぽいものはない感じ〕


「マジかよ……」


〔・多分、何らかの条件が整うと

 ・いろいろ干渉してくる仕様だと思う。

 ・システムが複雑すぎて

 ・今の状況だと手が足りなくて完全な解析できないけど

 ・島と耕助の不利になるようなことはしないから

 ・そういうものだとスルーする方針で〕


「……了解」


 いまいち腑に落ちないながらも、とりあえず立て札の言い分にうなずいておく耕助。


 どうにも信用できない代物だが、土偶ができてから製作物の呪われ率が明確に下がっているのも事実だ。


 今回のドライアドにしても、面倒なだけで今のところ特に害はないので、とりあえず土偶のすることは気にしないことにするしかないだろう。


〔・原因が分かったところで

 ・そろそろあのドライアドをどうするか考える〕


「どうするつっても、まずは話してみないと何も分からないぞ」


〔・それをやるのが、耕助の仕事。

 ・そのためのニュアンス理解〕


「立て札やレティは、あのドライアドの言葉は分らないのか?」


「残念ながら、鳴き声系の言語で妾が理解できるのは、進化段階が両生類以上の動物だけじゃ。虫や植物は管轄外じゃな」


〔・あのドライアド、ウォーレンと同じで

 ・ボクのルーツがある世界には存在しない言葉使ってる。

 ・ウォーレンの言葉すらまだ解析が終わってないから

 ・ぶっちゃけ無理〕


「そうか……。なんとなく翼人族は特別に言語能力に優れてる感じしないから、たぶんシェリアも無理だよな……」


「はい。正直ウォーレンさんもあのドライアドさんも、何を言ってるか全然分かりません」


「だろうな。まあ、ちょっと話してくるわ」


 立て札達の反応を見て、そう告げる耕助。


 そのまま、ウォーレンにまとわりついているドライアドに声をかける。


「なあ、ちょっといいか?」


「どり?」


「お前さんはドライアドでいいのか? 後、なんでこの島に居るんだ?」


「どり、どりどり」


「あ~、やっぱ分からないか」


「どり、どり」


「本人の意思さえ尊重してくれるなら、別にウォーレンとそういう仲になりたいのは構わないけどな。お前さんは推定樹木でウォーレンは一応草だろ? 交配なんてできるのか?」


「どり!」


「できるのか……。なら、本人たちの好きにすればいい」


 耕助の結論を聞き、ショックを受けた様子を見せるウォーレン。


 そんなウォーレンをスルーし、話を続ける耕助。


 正直、他人の恋愛に口を挟むとろくなことにならないので、断固として拒否したい。


「じゃあ、悪いけど特殊テイムさせてもらっていいか?」


「どり♪」


「えっと名前とかはあるのか?」


「どり」


「ないのか……。じゃあ、ドライアドでどりどり鳴くから、安直だけどドリーってことで」


「どり~♪」


「って、やっぱりもうテイムが終わってる感じなんだが……」


〔・特殊テイムは、そういうもの

 ・今回は名前も付けてるから〕


「名前かあ……」


 どうにも達成感も区切りらしさもない展開に、遠い目をせざるを得ない耕助。


 そんな耕助に対し、シェリアが声をかける。


「それで、耕助さん。ドリーさんが仲間になったんだったら、何かミッションが終わってるんじゃないでしょうか?」


「ああ、そうだな」


 シェリアに言われ、ミッションを確認する耕助。


 シェリアの予想通り、”シークレットミッション:ドライアド神種の栽培”と”住民を増やそう その3”の二つがミッション完了となっていた。


「また神種か、ってのは置いといて、報酬は樹木栽培スキルと植物資源採取場ねえ……」


「また何か採れるものが増えたようじゃの」


「らしいな。ただ、植物資源って言われても範囲が広すぎて、正直何が採れるのか全く分からないが……」


「それは、採ってみれば分かるんじゃないでしょうか」


「だな」


「うむ。鉱物資源の時もそうじゃったし、どうせ字面だけでは何も分からん」


 新たに増えた謎の設備に対し、間違ってはいないが脳筋っぽい提案をするシェリア。


 シェリアの提案に、まあそれしかないかと相違する耕助とレティ。


 そこに、ドリーが割って入る。


「どり、どりどり!」


「ぼろい石の鎌じゃなくて、ちゃんとした道具を用意してからにしろってか……」


「どり!」


「となると、まずは石窯を溶鉱炉にアップグレードして、鉄を精錬してみてからか?」


 ドリーに待ったをかけられ、とりあえず設備の強化を考える耕助。


「耕助よ。先に朝食にしてはどうかの?」


「ああ、そうだな。じゃあ、窯をアップグレードして、鉄鉱石突っ込んだら飯の準備するわ」


「うむ」


 レティに言われて、とりあえず区切りがよさそうなところで止めることにする耕助。


 石窯からレンガの窯へアップグレードしたときのことを考えると、鉄鉱石を鉄に製錬するのに間違いなく結構な時間がかかるはずだ。


「……アップグレードは問題なし。じゃあ、鉄鉱石をぶち込んで……」


 クズ王のピラミッドで回収した低性能耐熱レンガを使って溶鉱炉にアップグレードし、機能を確認して一つうなずく耕助。


 溶鉱炉の鑑定結果は


”初期型溶鉱炉:低性能耐熱レンガを用いた、初歩的な製鉄が可能な溶鉱炉。低品質な鉄のインゴットを製錬可能。製錬および精錬回数と製錬した金属の種類や品質その他に応じて設備経験値が入る。設備レベルおよび設備総合レベルによって失敗確率が下がって品質が向上するほか、一度に投入できる鉱石の数も増える。また、設備総合レベルの補正により、確率で一回分の鉱石から製錬される金属の数と種類が増えることがある。次のレベルまでの必要経験値は5”


 となっていた。


 なお、レンガの窯は溶鉱炉のほか、耐熱レンガの窯へとアップグレードすることもできる。


「朝飯は、代わり映えしないけどジャガイモとイノシシ肉かな」


 溶鉱炉へ鉄鉱石を放り込み、火を熾して料理を始める耕助。


 もっとも、料理と言ってもイノシシもしくはドラゴン肉に塩を振ってあぶるのと、ジャガイモを焼くか茹でるかしかできることはないのだが。


「じゃあ、私は適当に木材とか集めておきます」


「妾もそっちに付き合うかの」


 朝食ができるまでの間、暇になったからと採取活動に入るシェリアとレティ。


 それを見送ってから、再び調理に戻る耕助。


 なお、いつの間にか静かになっていたウォーレンとドリーは、現在仲良く寄り添って光合成をしている。


 ウォーレンが何となく諦めたような表情をしている点については、深く突っ込まないのが優しさであろう。


「そろそろ、釣りか罠で魚を捕るべきか……」


 ジャガイモのゆで具合を確認しつつ、そんなことを考えてしまう。


 ドラゴンのおかげで肉はたっぷりあり、ジャガイモも順調に備蓄が増えている。


 なので、少なくとも数日は飢える心配はない。


 特にドラゴン肉は耕助の食事量を基準とした場合、一体分で数千食分にはなる。


 燃費の悪いシェリアでも、よほど激しい戦闘でもしない限りは一回でいいところ五食から六食分で十分だ


 なお、レティは基本的に食おうと思えばいくらでも食えるし、逆に百年単位で何も食わなくても全く問題ない。


 そんなこんなで十五分ほど。ジャガイモが茹で上がったところで、ゴトンという音が聞こえてくる。


「おっ? 鉄ができたか?」


 音を聞きつけ、ジャガイモを鍋から取り出してインベントリに仕舞い、溶鉱炉を見に行く耕助。


 溶鉱炉の前には、立派な鉄のインゴットが転がっていた。


「一個だけだが、ちゃんとできたんだな」


 そう呟きながら、できたインゴットを鑑定する耕助。


 鑑定結果は


”鉄のインゴット(最低品質):腕の悪い人間が低品質の鉄鉱石を性能の低い溶鉱炉で製錬した鉄。最低品質でも鉄は鉄なので、刃物を作る分には石に勝る。ここからでも精錬をすることで、ある程度までは品質を上げることができる”


 となっていた。


「精錬か。まあ、やるにしても飯食ってからだな」


 そう決めて、資源用倉庫にインゴットを放り込み、次の鉄鉱石を溶鉱炉に投入して料理に戻る耕助。


 溶鉱炉から出てきてすぐだというのに、手で持てるぐらいの熱さだった点については気にしてはいけない。


「飯ができたぞ~!」


「は~い!」


「うむ」


 その数分後には肉も焼き終わり、次の鉄が出来上がる前に朝食に入る耕助たちであった。








「さて、鉄のインゴットが無事にできたのはいいんだが、ちょっと悩むところができてな……」


「ふむ、どうしたのじゃ?」


「インゴットを鑑定したところ、精錬をすれば品質が上がるって出てるんだが、それをどうするかを迷ってる」


 サクッと朝食を終え、二回目の精錬が終わるまでの待ち時間。


 もう一度取り出したインゴットを見せながら、耕助がそんな話をする。


「素材の品質か」


「ああ。今のところ、鉄は材料の都合でそんなにたくさん作れないだろ? だから、熟練度と設備レベルを上げるために精錬をするかどうするかをちょっと迷ってる」


〔・ぶっちゃけ、大した差は出ない。

 ・精錬したところで最低品質が最低品質+1になるだけだし

 ・そのくらいだと回数での設備経験値しか入らない。

 ・製品に加工した際にどうせ最低品質最低性能になる。

 ・経験値的にも溶鉱炉は石窯やレンガの窯と同じで、

 ・一回の作業時間が長い分、一度に入る経験値が高め。

 ・へたくその精錬なんて、最終的に誤差の範囲〕


「やりたければやればいい、ということじゃな」


〔・ん、そういうこと〕


 立て札のかなり身も蓋もない意見に、なるほどという感じでうなずくレティ。


 なお、シェリアはわくわくした顔で溶鉱炉を観察していて、耕助たちの会話は完全スルーである。


「ちなみに、精錬を繰り返したら、どのぐらいまで品質をあげられるんだ?」


〔・この溶鉱炉で耕助の技量だと

 ・レベルアップ分を含めても

 ・ギリギリ低品質まではいかない。

 ・で、そこまで行くのに

 ・十回ぐらい精錬する必要がある〕


「二時間半ぐらいかかってそんなもんか……」


〔・ついでに言うと

 ・最低品質が低品質になったところで

 ・クラフト台で加工する限りは最低品質確定。

 ・鍛造とか鋳造で加工しても

 ・今の耕助の技量だとやっぱり最低品質〕


「……よし。今ある鉄鉱石を使い切るまでは、精錬はなしにするか」


 そう宣言したタイミングで、溶鉱炉からインゴットが二つ転がり出てくる。


「おっと、今回は二つか。……片方、鉄じゃないんじゃないか?」


「ですねえ」


「じゃのう。色からするに銅ではないか?」


「……だな。最低品質の銅だ。ちなみに呪われている」


 そう言いつつ、次の鉄鉱石を溶鉱炉に突っ込む耕助。


 そのまま、伝言板のほうへと移動する。


「……よしよし。いろいろレシピが出てるな」


 溶鉱炉を作り、鉄と銅を製錬したことで、様々なレシピを入手した耕助。


 次に鉄製品を作れというミッションが出ているのを確認し、クラフト台へと向かう。


「何を作るつもりじゃ?」


「いろいろ考えたんだが、まずはつるはしを作る」


「つるはしですか?」


「ああ。もしかしたら、鉄のつるはしになったら鉱物資源採掘場で掘れる数とか種類とかが増えないかなと思ったんだ」


 そういいながら、クラフト台で鉄のつるはしを作り上げる耕助。


 できたつるはしは


”鉄のつるはし(最低品質):鉄で作ったつるはし。性能としては最低レベルだが、腐っても鉄製。粗雑なつくりの石のつるはしと比較すると、十倍以上の耐久度を持つ。また、最低品質とはいえ道具のクオリティは格段に上がっているため、採掘物の数と品質に大きな補正が入る”


 となっていた。


「よし、目論見通り!」


「これ、使ってみていいですか!?」


「ああ。これで鉱物資源採掘場を掘ってみてくれ」


「はい!」


 耕助に言われ、嬉々として採掘に向かうシェリア。


 その間に、鉄製に置き換えられる道具を一通り完成させる耕助。


 何気に、レシピがある斧、ハンマー、鎌、鍬までは、インゴット二つで十分賄えたようだ。


「よし、これでミッションは終わったはず」


「じゃのう。これで何が解放されるんじゃ?」


「鍛冶スキルと鍛冶道具のレシピだな。ちなみに、さっき作った道具類に関しては、鍛冶で作るためのレシピも一緒にもらってる」


「ほう。では、次からは鍛冶で道具を作るわけじゃな?」


「そうなるはず。まあ、クラフト台でしか作れないものもまだまだあるし、材料的にも全部が全部鍛冶でってわけじゃないけど」


 そういいつつ、伝言板でミッション完了の操作をする耕助。


 予定通り、鍛冶スキルと鍛冶道具およびいくつかの鍛造製品のレシピを入手する。


 そこで、立て札が口を挟んでくる。


〔・耕助に恐らく朗報。

 ・鉄を安定して加工できるようになったから

 ・ミニアップデートが発生〕


「ミニアプデねえ……」


「いったい何が起こるのじゃ?」


〔・漂着物システムが解放される。

 ・これは、砂浜にランダムでいろんなものが流れ着く

 ・いわゆるある種のガチャ〕


「これ以上ガチャ的なものが増えてもなあ……」


〔・ここで朗報なのが

 ・漂着するのは、高確率で海藻類

 ・特に昆布とわかめの確率は高め〕


「そいつは確かに朗報だな。主にだし的な意味で」


 立て札の説明に、心底嬉しそうな表情を浮かべる耕助。


 ようやく待望の新たな調味料なのだから、喜びも大きい。


「どうせこっちの作業は製錬待ちだし、シェリアが戻ってきたら海岸を見に行くか」


「じゃのう。ついでに、海水を汲んで塩を作っておいてはどうじゃ?」


「そうだな」


 そう話していると、シェリアが嬉しそうに戻ってくる。


「耕助さん耕助さん! このつるはしすごいです! 一回で二十個ぐらい一気に取れました!」


「そりゃすごいな」


「全部倉庫に入れておきましたので、後で確認してください!」


「了解。そうそう、立て札によると、今からミニアプデで砂浜に漂着物が流れ着くようになるらしい。せっかくだからそれを見に行くかってレティと話しててな」


「行きます行きます!」


 耕助に誘われ、即座に食いつくシェリア。


 そのタイミングで、伝言板が派手に点滅する。


〔・ん、アプデ終わった〕


「じゃあ、見に行くか」


「そうじゃな」


「行きましょう!」


 アプデ終了を聞き、一応システムメッセージだけ確認してさっさと砂浜へと移動する耕助たち。


 砂浜には、まだ何も流れ着いていなかった。


「さすがに、アプデ直後に何かが流れ着くってことはないか」


「どうやら、その種のご祝儀は無いようじゃの」


「……あの、何かがこっちに向かって流れてきてるんですけど……」


 シェリアの指摘に、慌てて水平線のほうへと視線を向ける耕助とレティ。


「……うむ。確かにこっちに向かってきておるの。……あれは筏じゃな。人が乗っておるようじゃが、まだ詳細が見えるほどではないのう」


「そうなのか? 俺にはまだ見えないんだが……」


「人間の視力じゃと、つらいかもしれんの」


「私たちは空を飛ぶ都合上、ものすごく遠くまで見えますからねえ……」


 そんな話をしているうちに、どんどん海岸に近づいてくる筏。


 シェリアが発見してから、およそ一分ほどで耕助にもはっきり見えるようになる。


「……なんか、筏に乗って漂流してる人物としては、非常にミスマッチな服装をしてる気がするんだが……」


「そうじゃのう……」


「なんか、すっごく豪華な服ですよねえ」


「だな。後、一人はともかくもう一人は、年齢的にも筏で海を漂流なんてしてちゃいけないんじゃないかと思うんだが……」


「じゃのう。で、どうする? こちらから迎えに行くか?」


「いや、あれが漂着物システムで流れ着くものだとしたら、バグが怖い。無事漂着してくるまで待とう」


 耕助の言葉に、今まであった数々の怪しい物理演算やら何やらを思い出してうなずくレティとシェリア。


 下手に救助しようとして転覆でもしたら、目も当てられない。


 そんな話をしているうちに、筏は普通に声が届く距離まで近づいてくる。


「お~い、大丈夫か!?」


「まだ生きてますの~!」


「私も姫様も、大声を出せる程度の体力は残っております!」


 耕助の呼びかけに、筏に乗っていた二人の人物が大声で返事をする。


 筏に乗っていたのは、豪華なドレスに身を包んだ縦ロールのお姫様としか表現できない八歳ぐらいの少女と、メイド服に身を包んだシェリアよりいくつか年上だと思われる女性であった。


「それで、ここは……」


 砂浜に漂着し、ふらつきながら立ち上がって質問をしようとするメイド服の女性。


 そこに割り込むように立て札が海岸に生え


〔・ようこそ、元無人島へ!〕


 そんな一言ともにクラッカーや花びらのイラストを大量に表示し、でかでかと歓迎の文字を浮かび上がらせるのであった。

二回目はあっちこっちにバックアップ取ってたので、飛んだのが3kb程度で済んだのが助かったわけですが。


しかし、ドリーが出てから一気に筆が乗りまして。

最後の筏はあれです。縦ロールの令嬢とメイドさんが筏に乗って漂着してきたらシュールだろうなあ、と思った。


後、なろう小説なんだから悪役令嬢を出したかった。

この子がどんな感じの悪役令嬢だったのかは次回以降で。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 エロイベント満載ですね。 ウォーレンにとっては試練ですがw このまま行くと土偶もヒロインになりそうですね。 外見変化せずにそのままでw インゴット、今は貴重品ですがそ…
[一言] 漂流物じゃなくて島流し(追放)だろって笑いました。筏は漂流物なんだけどなぁ、上の3人はどうなんだ? にしても、島がどんどん賑やかになってきてて、今後の展開が楽しみです。
[一言] 悪役令嬢(追放済み)が来たかー
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