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第20話 技術革新をしよう その3 いろんなものを作ろう

「なんか変なのがある~!」


 採掘から戻ってきたシェリアが、土偶を見て嬉しそうな声を上げる。


 シェリアの声に応えるように、土偶が踊り始める。


「う、動いた!?」


 いきなり動いた土偶を見て、思わず叫ぶ耕助。


 さすがに動くとは思わなかったのだ。


「まあ、動くじゃろうなあ」


〔・設備兼マスコットなんだから

 ・動いて当然〕


「その理屈はおかしくないか!?」


 動いたことに対して平然とそんなことを言い出すレティと立て札に対し、全力でそう突っ込む耕助。


 耕助の気持ちを知ってか知らずか、土偶は悠然とたたずんでいる。


「で、結局これ、なんですか」


「いや、俺もよく分からない。甕を焼いたらなぜかこれができた。何を言っているか分からないと思うが……」


「分からんなら、いらんネタをやる前に鑑定すればよかろう」


「あっ」


 レティに突っ込まれ、鑑定のことがすっかり頭から抜けていたことに気が付く耕助。


 なお、耕助の名誉のために言っておくと、別に耕助はポ〇ナレフ構文として有名な例のネタをやろうと思っていたわけではなく、混乱のあまり素であのセリフが出ている。


 なので、そのまま最後まで続けていたとしても、有名な「もっと恐ろしい何かの」という言葉にはつながらなかったりする。


 余談ながら、そもそも耕助はそこまでネットミームに詳しくない。


「いきなり黄金に輝く土偶が出てきた上に、シェリアの声に反応して踊りだしたもんだから、完全にいろんなことが飛んでた……」


「まあ、現象だけ並べれば、意味は分からんからのう」


〔・でもいい加減

 ・この島だと何が起こっても不思議じゃない

 ・ぐらいの覚悟は欲しい〕


「覚悟してたつもりなんだが、ちょっと覚悟が甘かった……。まあ、鑑定するわ」


 レティの慰めの言葉を、切れ味鋭くぶった切る立て札。


 立て札の言葉に苦い顔でそう告げつつ、とりあえず正体不明の土偶を鑑定する耕助。


 鑑定結果は


”輝ける豊穣の大地母神像:大地母神の姿を抽象的にかたどった陶器製の像。複数の大地母神の神性が少しずつ宿った結果、黄金に輝くことになった。設備とマスコットの機能を持っている。設備としては所有者に加護を与え不幸を遠ざける機能を持ち、マスコットとしては動植物の繁殖力を向上させる機能を持つ。どちらも何かを生産するとレベルが上がっていく。なお、魂や人格のようなものは宿っていない”


 となっていた。


「女神像なんですね」


「まあ、土偶じゃからのう」


〔・一応女性の像というのが、有力な説。

 ・ただし、本当にそうなのかは異論が結構出てる。

 ・いまのところ、確定的な根拠や学説は出てないっぽい〕


「まあ、古代に分類される時代のものだからなあ。ちゃんとした文字の資料も無いような時代のことなんて、はっきりわからなくて当然っちゃ当然だろうな」


 鑑定結果をもとに、そんな話をするシェリア達。


 ちなみに、レティはこの種の知識について、立て札と大体同じものを持っている。


 なので、場合によっては耕助より詳しかったりする。


 なお、女性陣の一番の関心は繁殖力向上なのだが、耕助がその意味に気が付いていないようなので黙っている。


「なんにしても、やたら呪われるのが少しはましになりそうだから、助かるっちゃ助かるな」


〔・しばらくは誤差の範囲〕


「知ってる。で、どこに置くのがいいのやら」


「大地母神の像じゃから、建物の中はやめておけ」


「むしろ、大地にしっかり接したうえで野ざらしにするぐらいのほうが、大地の神様は喜びそうですよね」


「うむ」


 耕助たちがそんな話をしていると、踊っていた土偶がスーッという擬音が付きそうな感じで移動し始め、資材置き場の近くでしっかりと地面を踏みしめるように直立する。


「……あそこがいいらしい」


「おそらく、鉱物資源採掘場があるからじゃろうな」


「畑の近くだと、なんとなく落ち着かなさそうですしね」


 安住の地を見つけたらしく微動だにしなくなった土偶を見て、各々思ったことを口にする耕助たち。


「まあ、土偶のことはもう、これでいいってことで置いとこう。とりあえず、こういう時は伝言板の確認だな」


「そうですね。これだけ派手なことがあったんですから、何かミッションが出てる、もしくは終わってるでしょうし」


 なんとなく状況が終わった気分になったところで、耕助が伝言板を確認しに動く。


 予想通り、伝言板を見るといくつかのミッションが完了状態になっていた。


「やっぱり、あの土偶でもミッションは終わってるな。報酬はよく分からないものだが」


「よく分からないもの? 何をもらったんじゃ?」


「どんなものかもわからない素材を使った剣と鏡と勾玉のレシピ」


〔・耕助、それガチの三種の神器〕


「なるほど、そういうつながりか。とはいえ、そんなもんを作れと言われても困るんだが……」


 まず真っ先に確認した特別ミッションでは、土偶を作った報酬として一見してとんでもなさそうで、だが現状において実質ないのと変わらない報酬が与えられる。


「あの、その三種の神器って、どんなものなんですか?」


「俺の生まれた日本の神話に出てくるものなんだが、剣と鏡と勾玉だってことしか知らないんだよな……」


〔・真実を写したり豊穣をもたらしたりと

 ・いろんな権能を持ってるアイテム。

 ・なお、現実的には日本の象徴たる天皇陛下が代々受け継ぐもので

 ・天皇家の権威の象徴の一部になってる感じ。

 ・古代から受け継がれているという意味ではちゃんと本物だけど

 ・権能がいろいろと抽象的だから

 ・本当に権能が機能してるかどうかは証明できてない感じ。

 ・耕助がもらったレシピが

 ・これと同じものかどうかは分からない〕


「へ~」


 シェリアの質問にちゃんと答えられなかった耕助に代わり、立て札が非常にざっくりした説明をする。


 立て札の説明を聞いて、とりあえず集落全体の秘宝と同じようなものなんだろうという認識をするシェリア。


 なお、シェリアの故郷には、勝ち目がないほど強い外敵に攻められたときに使えと言われている謎のオーブが存在する。


 もっとも、シェリアが最弱という集落で勝ち目がないほどの存在など数えるほどしかいないため、そのオーブが使われたことなど一度もないのだが。


「神器については置いておくとして、だ。他には、石窯をレンガの窯にアップグレードしたから、耐熱レンガのレシピとそれを焼ける窯のレシピが出たな。それと、陶磁器のレシピがいろいろと」


「ふむ。となれば、食器や鍋は充実しそうじゃな」


「レシピは分ったけど、陶磁器に関しては細かい材料が現時点では見つかってないから、結局今作れるのは粘土で作った素焼きの甕とか皿になるな」


「ふむ。よくネタになっとる動物の骨を使ってチャイナボーンというのを、有り余っておるドラゴンの骨でやるとかは考えんのか?」


「試すまでもなく、普通のチャイナボーンの時点で今ある窯じゃ焼けない」


「ぬう……」


 思い付きを耕助にバッサリ切り捨てられて、思わずうなるレティ。


 設備や材料の都合とはいえ、ここまで何もできないとは思わなかったのだ。


「で、食器とか鍋で思い出したけど、かまどとコンロのレシピが出てるから、台所が作れる。ただ、台所を野ざらしってのもどうかと思うから、家を拡張するなりなんなりして室内に用意したいな」


〔・それに関しては

 ・先に作って後からそのまま移設もできるから

 ・スキルや設備レベルのために先に作るのがおすすめ〕


 贅沢なことを言い出した耕助に対し、そんな助言をする立て札。


 家の拡張なんて厄介な作業は、もっと技量を上げてからの話であろう。


「その、あとから移設って、どうやってやるんだ?」


〔・伝言板の設備のページを開いて

 ・オブジェクトコントロールって宣言する。

 ・そうすれば、動かせるものは見てわかるようになる〕


「またしてもゲーム的だな……」


〔・逆に、ゲーム的じゃない処理でどうやれと?〕


「そりゃまあ、そうなんだが……」


 立て札の身も蓋もない言い分に、反論に詰まる耕助。


 そもそも、この島がゲーム的な処理の塊なのはいまさらの話である。


「てか、それで動かせるんだったら、倉庫類は手に持って運んで設置する必要なかったか?」


〔・実はそう。

 ・とはいえ、移動させるには

 ・移動先を何らかの形で正確に認識する必要がある。

 ・なので、長距離移設になると

 ・実質的に手で運んで設置するのと変わらない〕


「そういう制約があるのか。まあ、考えてみれば、設置する場所を把握せずに設置なんてできるわけないか」


〔・ん、そういうこと〕


 立て札に教えられた制約に、心底納得する耕助。


 処理がゲーム的かどうかに関係ない、実に当たり前の話である。


「今聞いておって気になったのじゃが、運んでいる間の倉庫の中身は、どうなっておるんじゃ?」


〔・どうもなにも

 ・その倉庫からは出し入れできない形で

 ・亜空間に収納されっぱなし。

 ・倉庫は「設置」されないと容器にも使えない木箱でしかない〕


「アイテムボックスやアイテムバッグのような使い方はできない、ってことですか?」


〔・そういうこと。

 ・運搬中の出し入れはアイテムボックスもできないけど

 ・倉庫と違ってアイテムバッグやインベントリに収納できる。

 ・後、倉庫は設置する時に設置場所を実効支配してないとだめ。

 ・これは、ワープポータル以外の設備全般の仕様。

 ・アイテムボックスは逆に、スペースさえあればどこにでも置ける〕


「へ~」


「なるほどのう」


 立て札の説明を、興味深そうな表情で聞くシェリアとレティ。


 恐らく、シェリアのほうはちゃんと理解できていない。


「まあ、このあたり一帯に置く分には、深く気にしなくていいってことだな」


〔・ん。

 ・気にする必要が出てくるのは

 ・行動範囲が広がって

 ・飛び地みたいなところを開拓しだしてから〕


 いろいろとややこしい要素が出てきたことについて、そういう感じで雑にまとめる耕助と立て札。


 実際、目視できる範囲ですらまだ十分に有効活用できていないのに、それ以上先のことなど気にしてもしょうがない。


「確認することは確認したから、いろいろ作るか。まずはミッションを終わらせるために、皿と甕からだな」


「また妙なものができるのではなかろうな」


「ないとは言い切れないな。そもそも、あの土偶自体、なんでできたのか分からないし」


〔・あれはぶっちゃけ、ランダム。

 ・たまたま耕助がないも同然の確率を引いただけ〕


「だ、そうだ」


「となると、予測できんな……」


 立て札の説明を聞いて、あっさり匙を投げるレティ。


 耕助の運の悪さと立て札が持つ親譲りの因果律かく乱体質が合わさると、確率が絡むものは何一つ予想がつかない。


「ただ、これだけは言える」


「なんじゃ?」


「なんでしょうか?」


「俺が作る以上、最低でも三分の一は呪われてるか失敗してガラクタになるかのどっちかになるはず」


「「あ~……」」


 力一杯断言する耕助に、納得するしかないレティとシェリア。


 今までの実績的に、それで済めば運がいいのでは、とすら思ってしまう。


「まあ、作るか」


 これ以上グダグダ言っていても何も進まないので、土器づくりに入ることにする耕助。


 まずは初志貫徹で甕作りからだ。


「……さっきも思ったけど、ろくろとか使わずにこの形が作れるの、不思議な気分だわ」


 先ほど同様、割ときれいな形の甕ができたのを見て、なんとも言い難い微妙な表情でそんな感想を漏らす耕助。


 形状としてはシンプルなものではあるが、それでもフリーハンドで作ったとは思えないぐらいにはひずみのない形に成形できている。


 スキルとレシピによる補正だと分かっていても、耕助的にはどうにもしっくりこない。


「ろくろ、ですか?」


「シェリアの郷では使ってないのか?」


「分からないです。こういう焼き物って、ドラゴンの鱗とかと物々交換で手に入れてましたから。そもそも、郷で鍛冶以外に窯を使っていたかどうかも知りませんし。なので、ろくろがどんな道具かも分かりません」


「そりゃそうなるか」


 シェリアの言葉に、そういうこともあるかと納得する耕助。


「のう、耕助よ」


「なんだ?」


「シェリアの部族は世界樹の梢に住んでおるんじゃぞ? 粘土なんぞ採れるわけがないし、そもそも焼き物用の窯なんぞ置く場所はあるまい」


「……そういや、木の上に住んでるんだったら、火の気は厳禁か。……いや、でも、それだったら、鍛冶のための溶鉱炉なんてもってのほかじゃ……」


「世界樹がたかが溶鉱炉の熱ごときで燃えるわけがなかろう。行ったことがないから想像にすぎんが、木の上に住んでおる関係上、窯のようなスペースを食う設備をそんないくつも設置なんぞできまい。溶鉱炉と粘土を焼く窯では仕様が違うから、両方置けんのであれば鉄器の製作だけでなく修理にも使える溶鉱炉のほうになるじゃろうて」


「多分、そういう理由なんだと思います。実際、ドラゴンの体内から粘土が手に入った時も、大体は物々交換に回してましたし」


 レティの推論に、シェリアが同意しながら郷の事情を口にする。


「溶鉱炉については納得したけど、ドラゴンって体内に粘土を持ってるのか?」


「粘土に限らず、鉄鉱石とか宝石類とか、いろんなものを持ってます」


「レッサードラゴンやグレータードラゴンは、かなり特殊な生態をしておるからの。生まれた土地のマナや空気、土壌の性質によって、いろんなものを体内に生成しおるんじゃ。ちなみに、体内と言うてもいわゆる胆石とかそういう感じじゃから、食う時に問題にはならん。ゆえに、ポイズンドラゴン系以外は安心して食うてよいぞ」


「それのどこが安心なんだよ……」


「体に害がないということ以上に、安心できる要素はないと思うんじゃが?」


 甕を窯に放り込みながら、そんな突っ込みを入れる耕助。


 耕助の突込みに対し、しれっと極論を言い切るレティ。


「つうか、ドラゴンの体内に鉄鉱石とか粘土って、どれぐらいあるんだ? 溶鉱炉を使うほどあるんだったら、粘土だって窯を使うぐらいは採れるだろうに」


「十体に一体ぐらいなので、そんなすごい量はないですね。鉄鉱石というか鉄は、他のモンスターからも手に入るので、割と毎日普通に鍛冶をしてました」


「モンスターから鉄が採れるっていうのも、いまいちピンとこない話なんだが……」


「甲羅が鉄でできてるとか、爪が鋼になってるとか、そういうモンスターは結構います」


「ああ、なるほど。そういう……」


「まあ、鉄鉱石を体内に持ってるモンスターもいますけど」


「モンスターってのはすげえな。平気で理解を超える生態を見せつけてきやがる……」


 次の皿を成形しながら、地球ではありえないような生態を持つモンスターについてそうコメントする耕助。


 もっとも、実は地球でも金属の殻をもつ生き物が生息していたりするのだが、割とマニアックな知識なので耕助は当然知らない。


「っと、次が焼けたな。……今回は普通にできたか。鑑定でもちゃんと使えるって出たし」


 焼きあがって窯から放り出された甕を鑑定し、安堵のため息とともにそうコメントする耕助。


 なお、ゲーム的な仕様が影響しているからか、焼きあがった甕は窯から出してすぐに触れる温度まで下がっている。


「やはり、毎回よく分からんものができるわけではないか」


「本当に、確率だけの問題なんだろうな。……よし、スペースも足りてるから、次は小皿を四枚同時にやってみよう」


「そんなに一気に焼いて、大丈夫ですか?」


「実験も兼ねて、だからな。それに、こういうチャレンジで失敗したほうが、安全圏で回数を稼ぐより熟練度が伸びそうな気もしてるし」


「ふむ。そういうチャレンジを積極的に行うのはいいことじゃ」


 珍しく攻めた行動をする耕助に、不安そうにするシェリアと上機嫌なレティ。


 耕助的には、少なくとも焼き物に関しては成功するかどうかは完全に確率なので、四枚を一回ずつ焼いても一気に焼いても大差ないという感覚だ。


 成功率100%以外は、何%でも変わらないのが耕助の運なのである。


「残りの粘土的に、皿とかコップだけを作るならあと二十、土鍋とかを作るなら鍋一個ごとに小物四つ分、ってところか」


〔・後で調理台を作るんだったら

 ・土鍋ぐらいはあったほうがいい。

 ・焚火にとか直接かけるならともかく

 ・コンロに乗っけて調理するには、甕は不便すぎる〕


「ああ、そりゃそうか。てか、土鍋作る作らないに関係なく、鍋つかみか何か用意しとかないと、熱くて火からおろせないよな」


「それに関しては、最悪妾かシェリアがやるという手もあるぞ。ぶっちゃけ、鍋ぐらいの熱さならやけどなんぞせんし」


「毎回それもどうかと思うから、やっぱり鍋つかみは作るわ」


 レティの言葉にそう返事をしながら、次の小皿を作る耕助。


 土鍋にチャレンジするにしても、最低限の数の小皿は用意しておきたいようだ。


「っと、小皿だからか、もう焼きあがったな。……って、何だこりゃ?」


 成形が終わる前に放り出された何かを見て、眉をしかめながらぼやく耕助。


 四枚のうち一枚が、見たこともない様式の正体不明の人形っぽく見える何かに化けていたのだ。


 なお、残りの三枚のうち一枚は見事に割れていて、残り二枚は見た目上はちゃんと焼けてる。


〔・もしかして、それは!?〕


「知ってるのか、立て札?」


〔・民〇書房によると

 ・超古代文明でいけにえの代わりに使われたという

 ・その名も饅頭人形!〕


「いきなり胡散臭いな!」


 どう考えてもネタに走ったとしか思えない立て札の言葉に、思わずそう突っ込む耕助。


〔・ちなみに、ネタなのは民〇書房の部分だけ。

 ・超古代文明でいけにえの代わりに使われてたのは本当。

 ・ただ、その超古代文明はボクの管理する世界ので

 ・地球の文明じゃない〕


「なるほど、そういうことか」


 立て札の説明に納得しつつ、一応鑑定で本当にそうか確認する耕助。


 残念ながらというべきか、鑑定結果は名前も含めて立て札の説明通りであった。


「で、小皿は一枚が割れて一枚が呪われたから、成功したのは一枚か」


「結局、ランダムで妙なものを引いたわけじゃな」


「まあ、全滅とか全部呪われてるとかよりはよかったってことにしよう……」


「ですね~」


 ある種耕助らしい結果にそんなことを言い合いながらも、次の小皿を成形して焼き始める耕助。


 またしても四枚同時である。


 この時、土偶の目が光ったことに誰も気が付いていなかった。


「それはそれとして、耕助さん。変なものができたんだったら、何か変なミッションが達成になってないですか?」


「あ~、ありそうだな。ちょっと見てくるわ」


 シェリアに指摘され、一応ミッションの確認をする耕助。


 シェリアの指摘通り、シークレットミッションが一つ達成状態になっていた。


「超古代文明の物品を再現する、か。ミッション報酬は超古代遺跡群、なあ……」


 どうせろくでもないものだろうと思いつつ、一応完了操作を行い報酬を受け取ることに。


 完了操作を終了すると同時に、ダンジョンと古代遺跡のページが自己主張を始める。


「やっぱそっちか。……増えたのは全部無期限なんだな。で、大部分が未解放なのはいいとして、なんで唯一解放されてる遺跡が『クズ王のピラミッド』なんだよ……」


 いろんな意味ですれすれのろくでもない名称の古代遺跡に、力なくそう突っ込む耕助。


 そのタイミングで、ミッションのページが自己主張を始める。


「今度はなんだ?」


 何の心当たりもないのにミッションが完了状態になったのを見て、首をかしげながら確認をする耕助。


 完了したミッションは


・土偶と埴輪と銅鐸をそろえよう(4/3):倭風古代遺跡および古墳型ダンジョン


 というものであった。


「銅鐸ってなんだよ、銅鐸って……」


 そうぼやきながら、完了操作をして窯のところに戻る耕助。


 そこには、とても立派な埴輪と銅鐸が。


 ちなみに、埴輪は二体ある。


「耕助さん耕助さん耕助さん! とても変なものが出来ました!」


「この土器の置物はともかく、明らかに青銅製のこれは何なんじゃ?」


「どっちも俺の国で古代の遺跡とか大きな墓とかから見つかる祭器とか副葬品だってことは知ってるが、なんで粘土から青銅製のものができたのかなんて俺に聞かれても困る……」


 シェリアとレティの言葉にそう返事をしながら、一応鑑定をしておく耕助。


 鑑定結果は


”埴輪:古墳の副葬品などでよく見つかる、大型の土器人形。輝ける豊穣の大地母神像のそばに設置することで、輝ける豊穣の大地母神像を強化することができる。これ自体には設備レベルは存在しない”

”銅鐸:主に日本で発掘される、青銅製の楽器で祭器だと思われている物品。何気に確定的なことは分っていなかったりする。輝ける豊穣の大地母神像のそばに設置することで、輝ける豊穣の大地母神像を強化することができる。これ自体には設備レベルは存在しない”


 となっていた。


〔・力の流れを見た感じ

 ・輝ける豊穣の大地母神像が何らかの干渉を行ってる〕


「そうなのか? っていうか、あれってあくまで生産とか繁殖とかに補正かけるのと、完成品の呪われ率を下げるだけだよな?」


〔・多分、隠し機能の類だと思う。

 ・知らないところで、何かのトリガーを踏んだっぽい〕


「隠し機能は鑑定では……。そう簡単に分かるなら、隠し機能とは言わないか……」


〔・ん。

 ・がんばって、熟練度上げるべし〕


「だよな……」


 そう言いながら、銅鐸と埴輪を設置する耕助。


 ついでに、もう一度輝ける豊穣の大地母神像を鑑定してみるも、設備レベルが上がっていること以外に特に変化はない。


「……もう一度小皿に挑戦したら、土鍋行ってみるか」


 今日はもうそういう日だと腹をくくり、小皿づくりを続行する耕助。


 使うかどうかは別にして、せめて人数分は欲しいところである。


「さすがに、そこまで連続で変なものに化けたりはしないか」


「見たところ、呪われてはおらんようじゃな」


「すごい、四枚も成功してます!」


「これなら、安心して土鍋にチャレンジできるな」


 なんと、耕助らしくもなく、四枚すべてが呪われもせずに完成する。


 その結果に思わず笑顔を浮かべ、土鍋づくりに入る耕助。


 サイズ的なものか、土鍋は必要な粘土の量が多いだけでなく、焼きあがるまでの時間も小皿より長い。


 その焼き上がり時間を、台所を作る材料を用意しながら期待と不安の入り混じった気持ちで待ち続ける。


「おっ、焼きあがった。……なんで猫?」


「さあ? でも、かわいいからいいと思います」


「じゃのう。この島、こういう可愛らしさとは無縁じゃし」


 そんなこんなで焼きあがった土鍋は猫の顔をデフォルメしたような形状になっており、鑑定結果が


”猫鍋用土鍋:大きめの猫が二匹ほどすっぽり収まれるサイズの、猫鍋にぴったりの土鍋。普通に土鍋として使えるが、ぜひとも猫を入れてじっくり愛でよう。なお、普通に土鍋を作るより難易度とレアリティは高いが、実用面では特に違いはない”


 となっていた。


「普通に土鍋として使えるからいいけど、なんでこんなもんに……」


「今日はそういう日なんですよ」


「別に困るものでもないから、気にせんでええのでは?」


 散々振り回される形となってがっくり来ている耕助に対し、そんな慰めになっているようななっていないような言葉をかけるシェリアとレティ。


 結局、変なレア運に振り回されるだけ振り回されながら、朝の作業を終える耕助であった。

この回の耕助はやたらダイス目がよくてビビりました。

なお、呪われた皿が一枚で済んだのは、間違いなく土偶のおかげです。

後、皇室の三種の神器については、あくまでこの話の中での設定です。

実在のものとは違うのでご注意ください。


クズ王のピラミッドはあれです。

横でおかんがクフ王のピラミッドがらみのテレビ番組見てたせいで引っ張られた感じ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新、お疲れ様です。 >なお、魂や人格のようなものは宿っていない 嘘だ!!! 三種の神器w 耕助が作って大丈夫ですかね? 変に呪われるような気がしますw 移設、魔法的な何かで出来ると思…
[良い点] 遮光器土偶が出てからなミッションが立て続けにクリアになってゲーム的にはずいぶん進んだ感じですね。 また食料ガチャあたりが悲惨なことになりそうです。 [気になる点] シェリアも「猫がかわいい…
[一言] つまり探せばどこぞにイエネコ(ネ申)様がいらっしゃるというフラグですな(´・ω・`)
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