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第19話 技術革新をしよう その2 レンガで窯を作ろう

「……はっ! 殺気!?」


〔・むう、見切られた……〕


 アップデートの翌朝。妙な気配を感じて体をひねった耕助に対し、実に残念そうに立て札が言う。


〔・でもまあ

 ・これはこれで美味しい状況だからよし〕


「……えっ?」


〔・腕の中を見るべし〕


「……あっ」


 立て札に指摘されて、シェリアに思いっきり覆いかぶさっている事に気が付く耕助。


 シェリアがいつものように腕にしがみついているので、攻撃を回避できるよう体をひねれば必然的に覆いかぶさる形になるのだが、そこまでは頭になかったようだ。


 しかも、耕助はパンイチ(しかもなぜか微妙にずれて見えかかっている)で、シェリアは今の動きで服がめくれてかなりあれな格好である。


 一般的にこの状況を一言で表すなら、最中もしくは事後であろう。


〔・という訳でここで一言。

 ・昨夜はおたのしみでしたね〕


「俺は無実だ!!」


 こういう時のお約束ともいえるセリフを放つ立て札に対し、単にいじられているだけだと知りつつ絶叫する耕助。


 その声に、この期に及んで爆睡していたシェリアが目を覚ます。


「……ほえ?」


「ああ、うん。シェリアはちゃんと起きような」


 いつものようにあざとい幼げな寝ぼけ声をあげるシェリアに、とりあえずそう声をかける耕助。


 こういう部分も、耕助がシェリアに手を出す踏ん切りがつかない原因の一つだ。


 シェリアの束縛が緩んだところで、体を起こしてさっさと退避する。


「それで、立て札よ。今日は何をするつもりだったんだ?」


〔・フライング立て札プレス〕


「まさかの物理!?」


 唐突に出てきた物騒な単語に、思わず絶叫する耕助。


 さすがに物理攻撃が飛んでくるとは思わなかった。


〔・不発になった攻撃だから、スルーで〕


「いやまあ、いいんだけど……」


〔・正直、ネタが切れたので

 ・物理に走った〕


「つうか、なぜに無理に起こす……」


〔・一度始めた以上はやらないとという

 ・特に必要ないであろう使命感から〕


「捨ててしまえ、そんな使命感……」


 例の蛮族ルックに着替えながら、そうばっさり切り捨てる耕助。


 今までもそうだが、実のところ立て札に起こされるまえになんとなく目が覚めている。


 なので、本当にわざわざ無理に起こす必要はないのだ。


〔・とりあえず、ネタが思いつく限りは起こす〕


「さよか……」


〔・という訳で、さっさと外に出て

 ・本日の十連ガチャ〕


「はいはい」


「あっ、待ってくださ~い」


 立て札に急かされ、ガチャのためだけに家を出る耕助とシェリア。


 こうして、いろんなものが初収穫となるアップデート二日目が始まるのであった。








「うお!」


「ああ、おはよう」


 家を出て伝言板の前まで行くと、ラジオ体操をしていたウォーレンからあいさつをされる。


 なお、レティはまだ寝ているようで、こちらには来ていない。


「そういや、今日はトウモロコシとかが収穫だったよな。どんな感じだ?」


「うお、うお!」


「ちゃんと育ってるならよかった」


 ウォーレンから報告を受け、ほっと胸をなでおろす耕助。


 無人島品種は水をやるのさえ忘れなければ育つとはいえ、運がないことを自覚している耕助の場合、何か防ぎようのない事態で枯れる可能性が常に頭をちらついていたのだ。


 特にトウモロコシは栽培した時点でぎりぎり育てられる範囲、ニンジンと大根はうまくいくかどうか分からないぐらいの難易度だったので、どうしても不安が大きかったのだ。


〔・作物のことは、農作業の時考える。

 ・まずはガチャ〕


「そうですよ、耕助さん。もしかしたら、ご飯のためにいいものが出るかもしれないんですから」


「分かった分かった。とっととガチャを回してくれ」


〔・りょ〕


 耕助に言われ、ガチャを回す立て札。


 結局処理をするのは立て札なのだから勝手に回してもよさそうなものだが、それは何らかの理由でタブーになっているようだ。


 いつものように、ハイレア以上の確定演出が入る。


「レアリティだけを言うなら、俺のガチャ運すごいんだけどなあ……」


「なんだか、変なものばかり出てますからねえ」


「一応あれらは、大半が使えるようになりさえすればものすごく便利なものなんだぞ?」


「そうなんですか?」


「ああ。問題は、使うために必要な電気が用意できないってことだが……」


 レアリティ演出を眺めながら、そんな話をする耕助とシェリア。


 その間に一瞬だけ百五十センチほどの金髪の美少女(何気に巨乳)がちらっと映り、どんどんカプセルが排出される。


 カプセルの排出が終わり、どんどん開封が進んでいく。


 本日のガチャ結果は


”日〇食品株主優待Dセット”

”おもちゃの〇詰 平成五年度版”

”ピ〇ン@”

”唐揚げ粉”

”ジェネレーター付き超大口径ビーム砲”

”簡易量産型ダイアズマー”

”PGスト〇イクフ〇ーダム”

”種もみ(ジャポニカ米)”

”吉〇家の優待券三千円分”

”卑猥なおもちゃシリーズ・卑猥な動きをする松茸”


 であった。


「……とりあえず、十連回したら一個は卑猥なおもちゃが出ないといけない法則でもあるのか?」


「あの、耕助さん。卑猥なおもちゃシリーズって、どういうところが卑猥なんでしょう?」


「……それ、本気で言ってるか?」


「? はい」


「だとしたら、それこそ説明しづらいんだが……」


 純真な瞳でそんな厄介な質問をしてくるシェリアに対し、追い詰められた表情でそう答えるしかない耕助。


 何か一つエピソードを積み上げるたびに手を出しづらくなるあたり、さすがとしか言いようがない。


〔・そんなことより、大分ヤバいものが出た……〕


「やばいものって、なに?」


〔・簡易量産型ダイアズマー。

 ・いわゆる勇者ロボ的巨大ロボ。

 ・父のおもちゃの中でもヤバめのもの。

 ・その量産型の中でも一番グレードが低い奴〕


「一番グレードが低くてもヤバいのか……」


〔・ん。

 ・ぶっちゃけ、耕助でもシェリアぐらいには強くなる〕


「その言い方だと、そのダイアズマーとやらがすごいのか、それともシェリアが何気にイメージより大したことないのか、判断に困るんだが……」


〔・仮に耕助がメインパイロットだとしても

 ・グレータードラゴンぐらい一ひねり〕


「……マジか?」


〔・ん。

 ・まあ、一番の問題はサイズが大きすぎて

 ・現状この島のどこに置いても邪魔でしょうがないこと。

 ・さすがにレティの本体よりは小さいけど

 ・それでも全長三十メートルはだいぶ邪魔〕


「デカいな……。いや、スーパー系のロボの場合、むしろ小さいほうなのか?」


〔・耕助も、何気にそういうの履修済み?〕


「就職する前は、某ロボ大戦も遊んだことがあるからな。まあ、俺の知識はその頃でほぼ止まってるけど」


〔・なるほど。

 ・何気に就職前からオタク寄りの生活だったと。

 ・まあ、それは置いといて

 ・ダイアズマーとビーム砲は邪魔だから

 ・とりあえず亜空間収納で仕舞っておく。

 ・必要なら呼べば出てくるようにしてるから〕


「それはいいんだが、動くのか?」


〔・ん、今回のはどっちも動く。

 ・ビーム砲の問題だった、どうやって持ち上げるのかも

 ・ダイアズマーに接続すれば問題ないし〕


「そうか……」


 よく分かっていないシェリアとウォーレンを置き去りにし、ダイアズマーなる謎のもので盛り上がる立て札と耕助。


 その間にウォーレンは種もみを回収し、シェリアはひよこのマークが印刷された段ボール箱を興味深そうに観察していた。


 シェリアは自分を引き合いに出されているというのに、全く気にする様子を見せていない。


「とりあえず、高レアリティのアイテムが初めて使用可能な状態で手に入った、ってことでいいか?」


〔・ん。

 ・ただ、サイズの問題もあるけど

 ・規格とかそのあたりの関係で

 ・家電製品を使うための発電機にはできない〕


「だろうな。その手の抜け道はないってわかってるから、気にするな」


 シェリア達を置き去りにしすぎていると気が付いた耕助が、そんな風に話をまとめる。


 話が終わったと判断したウォーレンが、タイミングを見て声をかけてくる。


「うお、うお」


「そういや、種もみも出てたんだな。俺に栽培できそうか?」


「うお」


「やっぱ、まだ無理か。そもそも、水田どうすんだって話だしなあ……」


「うお、うお」


「ダイアズマーで何とかできないか、かあ……。それで水田をどうにか作っても、結局俺の腕が伴っていないから、うまく育たずに枯れそうなんだよなあ……」


「うお……」


 耕助の自己分析を否定できず、がっくりした様子を見せるウォーレン。


 稲作に手を染めるのは、今ある無人島品種を全部まともに育てられるようになってからだろう。


「耕助さん、耕助さん。なんかいろいろ入ってる感じの箱がいくつかあるんですが、これなんでしょう?」


「あんまり自信はないが、ひよこの絵の箱は多分、インスタントラーメンがいろいろ入ってるんじゃないか? それ以外はゲーム機だったりおもちゃだったりだから、食い物ではない」


「そうなんですか?」


「ああ。ちなみにそのひよこ、円盤型のインスタント焼きそばとか元祖鶏がらとかのメーカーのマスコットだから、その箱の中身もそのメーカーの商品がいろいろ入ってる、はず」


〔・なぜ断定しない?〕


「株主優待の中身なんて、縁がなさ過ぎてよく分からないんだよ……」


 立て札からの突込みに対し、渋い顔でそう告げる耕助。


 念のために説明しておくと、株主優待とは一定以上の株を持っている株主に対し、自社製品などを贈って株を手放さないように、もしくはもっとたくさん買ってもらうようにする施策である。


 このぐらいのことは株に全く縁がない貧乏人の耕助でも知っているが、では具体的にどんなものがもらえるのかというと、耕助に限らず株主ではない一般人にはよく分からないのが普通であろう。


 一応その会社のホームページを調べれば、その時点で施行が終わっている最新の株主優待の内容は掲載されているのだが、優待狙いで株を買おうという人間以外はわざわざそんなものを調べないので、耕助がよく分からないのもおかしな話ではない。


 というよりむしろ、知っているほうが不自然だ。


「でもまあ、元祖鶏がらのメーカーのなら、長期保存もできるだろうからありがたいっちゃありがたいな」


〔・ん。

 ・状況的に

 ・冷凍食品とか出られても困る〕


「だよな」


 立て札の言葉に、しみじみうなずく耕助。


 ものによってはレンジ必須であり、何より長期保存には冷凍庫が必須となる冷凍食品は、現状では非常に扱いが難しいアイテムである。


 その点、元祖鶏がらのメーカーが出している常温保存可能なインスタント食品は、大部分がお湯を注いで待つか混ぜるだけで食べられ、それ以外も基本的には沸騰したお湯で数分茹でるだけのものだ。


 保存期間も長く、今の環境でも食べるのに苦労するものは少ない。


 ガチャから出るものとしては、大当たりの部類なのは間違いない。


 ちなみに、元祖鶏ガラのメーカーも冷凍食品はいろいろ出しているが、株主優待の詰め合わせ商品には含まれていない。


〔・今回の結果だと

 ・完全にゴミなのは使う店が存在しない

 ・優待券三千円分だけ〕


「個人的には、卑猥なおもちゃシリーズは全部ゴミだと思うんだが……」


〔・シェリア相手に使えばいい

 ・という冗談は置いとくとして

 ・あれ、一部の相手にはすごい需要がある。

 ・もしかしたら、交易相手に出てくるかも〕


「交易は捨てた……」


 コンプラ的には完全にアウトな冗談を交えつつ、耕助に気まずい思いをさせた卑猥なおもちゃシリーズについて一応擁護する立て札。


 そんな立て札の擁護を、血を吐くような表情で切り捨てる耕助。


 どうにも、今後も理解できない種族ばかり引くイメージしかわかないのだ。


「耕助さん、耕助さん。ぼ〇ち揚げってなんですか?」


「そういう名前のお菓子だが、そんなものどこにあったんだ?」


「ひよこの絵の箱を開けたら、インスタントラーメンの中に混ざってました」


「あれ、あのメーカーの系列だったのか……」


〔・それはボクも知らなかった……〕


「うお、うお」


「ポテチにコーンフレーク、だと……?」


〔・正確にはグラノーラっぽいけど

 ・まあ、カテゴリーとしては同じか〕


 いまいちイメージと違う商品が出てきたことに、大いに戦慄する耕助と立て札。


 なんだかんだで耕助とは思えない大戦果に盛り上がり、せっかくだからと朝食にカップ麺を一つずつ選んで食べる耕助とシェリアであった。








「野ざらしになってるガラクタ的な意味で、宝物庫を作りたい気がしなくもないが、やっぱ先にもっといいレンガや土器を焼ける窯だよな」


〔・ん。

 ・この後もレンガは大量に使うから

 ・まずは少しでもいい窯を作るべき〕


 朝食後の畑仕事も終え、この後の予定を立て札と相談する耕助。


 シェリアはすでに昨日の採掘ポイントまで移動しており、ウォーレンは収穫した作物の一部をせっせと種に変えている。


 レティはまだこちらには来ていない。


「溶鉱炉のことを考えたら、耐熱レンガを焼けるようにならないとだめなんだが、それって設備のレベルを上げるだけでいけるのか?」


〔・さすがにそっちは

 ・材料もそろえてアップグレードするか

 ・新規に高性能な窯を作らないとだめ〕


「そうか。どっちがいいかは、作ってから考えるか」


 窯の仕様について確認し、窯の中で火を熾してそのまま作業に入る耕助。


 すでに昨日、石窯で数十個のレンガを作っているが、うち半分は呪われていたため砕いて捨てている。


 そう聞くと粘土はとうに底をついていそうに思えるが、クラフト台の一回分の材料で、石窯だと設備総合レベルの補正込みで五個以上できる。


 その代わりクラフト台より完成まで時間がかかるので、昨日レティ達が掘ってきた材料の半分も使い終わっていなかったりする。


「さて、昨日はやたら呪われたレンガができたが、今日はちょっとはましになってるのやら……」


〔・石窯のレベルは上がってるから

 ・ペナルティは減ってるはず〕


「俺のほうは昨日の生産時間じゃ、まず上がってないだろうしなあ」


〔・石窯だと、焼けるまでの時間も長いから

 ・回数稼げない〕


「本当に、それな……」


 粘土をこねて成型しながら、立て札の言葉に同意する耕助。


 設備レベルや設備総合レベル、耕助の熟練度、さらには窯の性能や個別のレベルでも焼きあがるまでの時間は短縮されるとはいえ、現状では一回で三分程度の時間がかかる。


 石窯と薪燃料という条件を考えると、恐らくこれでも破格の速さなのだろうが、熟練度を上げるという観点では非常につらい時間である。


 それでも、一番最初のころは耕助にスキルが生えておらず五分以上かかっていたので、ずいぶん短縮はされている。


「今だと、時間効率考えたらクラフト台のほうが圧倒的に生産量上なのも泣けてくるよな……」


〔・一応待ち時間の間に塩でも作れば

 ・錬金釜のレベルが上がるから

 ・設備総合レベルもちょっとはましに〕


「塩も作らにゃいかんから、できるんだったらそれがいいんだが。海水汲みに行くほど待ち時間ないんだよな、これが」


〔・確かに〕


 最初の成型分を窯に放り込みながら、立て札のアイデアに対し惜しそうにそう答える耕助。


 海岸までの距離は大したことないとはいえ、意外と海水を汲むのに時間がかかることを考えると、三分では行って帰ってこれるかが微妙なところだ。


「救いといえば、材料を放り込んでしまえば、完成品が勝手に窯から排出されることだな。おかげで、焼けたかどうか悩まなくていい」


〔・そのあたりはゲーム仕様になってるから

 ・焼き時間とか調整できる設備になるまで

 ・基本の時間で自動排出〕


「毎度のことながら、この島の物理法則はありがたいところはとことんありがたいのが、痛しかゆしだよなあ……」


〔・痛いだけじゃなくて

 ・ちゃんとありがたい仕様があるだけでもまし〕


「それは分ってる。ただ、ところどころ理不尽の方向性がゲームバランスとして見てもどうなのかとか、ゲーム仕様かどうかに関係なくダメじゃないかって感じなのがなあ……」


〔・そこは否定できない……〕


 耕助の言葉に、痛いところを突かれたという感じで言葉を漏らす立て札。


 特に物理演算において顕著なのだが、ところどころどう見てもバグっているとしか言いようがない要素が転がっている。


 発見のたびに調整したりつぶしたりはしているのだが、この手のバグがそう簡単に撲滅できるわけもない。


 能力的にも性格的にも耕助があまりアクティブに動かないから発見数も少ないが、シェリアが飛び回っているときなどなかなかひどい有様になっていたりする。


「やっておるの」


「ああ、レティか。おはよう」


「うむ、おはようなのじゃ」


「今日は遅かったんだな」


「少々、巣で野暮用がの」


 微妙な待ち時間をどう潰そうかと迷っていると、ようやくレティが巣から飛んできた。


「という訳で、土産じゃ」


「……魔石?」


「うむ、野暮用というのがそれじゃ」


 それだけで、なんとなくいろいろ察してしまう耕助。


 恐らく、巣にダンジョンが出来たのだろう。


「ちなみに、良さそうなドロップはあったか?」


「まあ、ため込んでおいてもいいかと思うような光り物はあったの。少なくとも、シェリアが拾ってきたアクセサリよりはセンスがいいものじゃ」


「そうか。まあ、今それをもらってもどうしようもないから、レティの好きにしてくれればいい。というか、レティが制覇したダンジョンの成果物なんだから、レティが全部の権利もつのが普通だろ?」


「そう言うと思って、こちらで使いそうにないもので気に入ったものは確保させてもらっておる」


 そういって、ニカッと笑うレティ。


 二千歳を超えるドラゴンなのに、とても子供っぽく見える表情だ。


「まあ、魔石は妾には使い道がないからの。他に種とか機材、素材として使えそうなものはこちらに持ってくるつもりじゃ」


「それは助かる」


 レティの申し出に、心の底からありがたそうにそう答える耕助。


 ついでに魔石を鑑定すると、なんと50点という大きな数値が。


「……これは悩むな。石窯に使って生産速度を上げるか、それとも採掘場のレベルを上げて採掘量を増やすか……」


「妾としては、レンガをちんたら焼く時間がもったいないから、とっとと石窯を強化したほうがいいと思うがの」


「そうなんだけど、どうせすぐアップグレードするから、いろいろ無駄になりそうなのが悩ましいんだよな」


 そう言いながら、石窯の経験値を確認する耕助。


 一回の加工に時間がかかる影響か、それともグレードが低い設備だからか、石窯は1レベル上がるのに必要な加工回数はまだ五回ぐらいである。


 さすがにずっと五回で上がるとは思えないので、この魔石を突っ込んでも一気に10レベル上がるわけではないだろうが、それでも数レベル上昇するのは間違いない。


「……よし。今後も魔石は手に入ると思って、石窯を強化するか」


 少し悩んで、今回は石窯に魔石を投入することにする耕助。


 加工中はその手の作業はできないので、今焼いているレンガが焼きあがるのを待つことに。


「そういや、今ある設備を素材使ってアップグレードする場合、呪われたりとかするのか?」


「せっかく育てた設備がアップグレードしたせいで呪われるとか、地獄じゃのう」


〔・材料が呪われてない限りは大丈夫〕


「そうか、それならよかった」


 立て札の説明に、心底ほっとする耕助。


 いくら石窯というカテゴリーのレベルは残るといっても、呪われたので破壊したとなると今使っている石窯自体のレベルは無駄になるのだから、ランダムで付与されるのは勘弁願いたいところだ。


「となると、今後も新しいカテゴリーの設備を作る場合、一番ランクが低くて簡単に作れるやつを作ってそれを育てていったほうが安全だな」


「じゃのう」


 今までの呪われ率を踏まえ、そんな結論を出す耕助とレティ。


 実際、手間はかかるが下位の設備からアップグレードしていったほうが、呪いの問題以外にも設備総合レベルが上がったりといった利点がある。


 ゲームだろうがリアルだろうが、この種のやりこみ要素が無駄に充実しているものに関しては、途中を省略しないほうがいいと相場が決まっているのだ。


「よし、できたな」


 レンガができたのを確認し、魔石を突っ込む耕助。


 予想通り、一気に石窯のレベルが上がる。


「一気に15まで上がったからか、アップグレード可能になったな」


「うむ、目論見通りじゃな」


「ただ、アップグレードにはレンガが足りないんだが」


「なら、どんどん作るのじゃ」


「だな」


 レティに言われるまでもなくレンガを焼き始める耕助。


 その間に、焼きあがった六個のレンガをチェックしていく。


「二つ、呪われてるな」


「まあ、そんなもんじゃろ」


「間違えて使わないように、砕いておくか」


「妾がやろう。それぐらい、素手で楽勝じゃし」


「頼む」


「うむ」


 呪われたレンガを受け取り、軽く握りつぶすレティ。


 その間に次のレンガを成型しながら、現在何個あるか確認する耕助。


「後二十個はいらないか。……おっ?」


「む? もう焼けたのか?」


「みたいだが、えらく速いな……」


 四十秒ほどでいきなり焼きあがったレンガを、怪訝な顔で確認する耕助とレティ。


 そこに、立て札がネタバレをぶっこんでくる。


〔・10レベルと15レベルで

 ・焼きあがるまでの時間が二回半分になってる。

 ・つまり、元から比較すると四分の一。

 ・キリ番で特別なボーナスが入るのはよくあること〕


「あ~、そういうことか……」


 立て札の説明に、ゲームならよくある話かと納得する耕助。


 ならばと、どんどんレンガを焼いていく。


 そして五分後、結構な数の呪われたレンガができたものの、必要数を超える数が完成する。


「よし、これで数は足りるな」


〔・おつ〕


「うむ。早速アップグレードするのじゃ」


「おう」


 レティに言われ、さっさとアップグレード作業に入る耕助。


 普通に考えれば、中の火を消して冷ましてからでなければアップグレードなどできそうもないのだが、この島なので問題ないようだ。


「……よし、終わった。試しになんか焼くか」


〔・だったら、ここは土器で〕


「そうだな、土器も作らにゃならなかった」


 立て札に言われて、とりあえず教科書で見た煮炊きに使っていたらしい甕を作ってみることにする耕助。


 レンガと違い、ちゃんと作りたい形にしておく必要があるため、焼く前からなかなかの難易度である。


「……よし、焼いてみるか」


「うむ」


 十分後。ようやく成型が終わり、焼成に入る。


 土器だからかそれともレンガの窯になってレベルが下がっているからか、先ほどレンガが焼きあがった時間では終わらない。


「……長いな」


〔・それはそう。

 ・多分、これ一回でレベルが上がる〕


「ふむ。先ほどは回数勝負じゃったが、今回はそうとも限らんのか?」


〔・ん。最初の石窯は大したもの焼けないから

 ・どれ焼いても回数勝負だけど

 ・この窯から焼くものによって入る経験値が違う〕


 待ち時間の暇潰しもかねて、設備の経験値事情についてネタバレをする立て札。


 その間に、なぜか石窯が輝き始める。


「な、なんだ!?」


〔・ああ、これは

 ・変なものができる兆候。

 ・ちなみに、この現象が発生すると

 ・完成までの時間が短縮される〕


「待て待て待て!」


 突然の怪現象に対する立て札の解説に、思わず突っ込みを入れる耕助。


 そのタイミングで完成品が排出される。


「なんで土偶なんだよ!?」


「恐ろしく複雑で優美な造形をしておるのう」


〔・ちなみに、一応設備兼マスコット〕


「だからなんでだよ!」


 なぜか完成した黄金に輝く遮光器土偶について、そんな突っ込みを入れる耕助。


 どうにもこの日は、乱数がレアな方向に荒れ気味な耕助であった。

高レアリティほどゴミってのもどうなんだって意見があったので、高レアリティでちゃんと実用になるものを用意してみました。

なお、今回判定の手順としてレアリティ決定を10回>カテゴリー決定を10回>その結果を見て適当にレアリティとカテゴリーを組み合わせて内容を考える、という感じでやってます。

で、今回はレジェンダリーとロボが出てきたので、自分が著作権持ってて堂々と出せるダイアズマーにお出ましいただくことに。


余談ですが、宏の権能の強さや使いこなしの練度が絡む問題で、簡易量産型でもフェアクロ本編初出の時のダイアズマーよりハイスペックです。

具体的に言うと


この話の時の元祖ダイアズマー>越えられない壁>簡易量産型ダイアズマー>ロールアウト時の元祖ダイアズマー


となります。


株主優待を出したのはふと思いついたからとしか言えませんが、内容確認すると結構いろいろ驚きの事実が。

ぼんち食品と湖池屋、いつの間に日清食品ホールディングスに加わってたのか……。

明星は結構大きなニュースになってたから知ってたけど、この二社は全然知らなかった……。


ラストで出した土偶ですが、埴輪にしなかったのは黄金に輝く埴輪だと、大阪に本社がある老舗エロゲーメーカーが複数の作品で出している金色の魔法無効でハニーフラッシュとかやってくるあれのイメージが強すぎまして……。



最後に業務連絡です。

実は四月末に母が入院して手術を受けることになりまして。

その絡みで通院関係でちょっとバタバタしているのと、母がやっている仕事のうちできそうなものを肩代わりするため、今まで一切使ったことがない機械を扱う訓練をはじめました。

そのため、現在今までの比ではないぐらい執筆時間と体力が確保できておりません。

差し当たっては入院前の検査が終わって結果も出て一息つける4/13まで投稿のほうを休ませていただきます。

多分、その後も手術が終わって退院してくるまで執筆が大いに滞ると思いますので、その先はゴールデンウィーク明けに投稿ということになるかと思います。


申し訳ありませんが、ご理解の上今後も応援していただけたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 シェリアはもういっそ、襲ってしまったほうが良いかもですねw 間違いなく失敗するでしょうけど、危機感煽るのは丁度良いかと。 ラジオ体操w なぜ突っ込まないのかwww …
[一言] ダイアズマーは実質プロトタイプの時代はまだ人造兵器の域だったけど簡易量産型はそこから魔改造とブラッシュアップを最低でも二百年以上繰り返した末の技術を使った『神造兵器』だから本人にはオモチャ程…
[一言] 更新はリアル優先でどうぞ。 アリスソフ○、「夜が来る○」のリマスター出すって話ですね。なついです。
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