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第16話 アップデートを確認しよう その2

説明回です

「……よし、飯にしよう」


 アップデートの関係でとっ散らかった状況を前に、いろいろ諦めた耕助がそう宣言する。


「飯にするのはいいのじゃが、シェリアが持って帰ってきた食料類はどうするんじゃ?」


「鑑定の結果を信じるなら食えるんだが、熟練度的な意味でいまいち信用しきれないんだよなあ……」


「ふむ。具体的にはどのあたりがじゃ?」


「食えないものを食えると誤認してるかもってのもあるんだが、それ以上に食えるが呪われる、とか、変な効果がついてて一定以上の数を食ったら鱗とか尻尾とかが生えてくる、とか、そういうのが識別できてない気がしてなあ……」


「ああ、それはありそうじゃな。妾やシェリアは種族的にそういうのも大体効かんが、耕助はダイレクトに食らうじゃろうからのう……」


「そういうこと。だから、どうにも食って大丈夫って確信が持てなくてなあ……」


 非常に渋い顔で気になる点を口にする耕助。


 その内容を聞き、耕助は食べないほうが無難だと納得するレティ。


 耕助に限らずヒューマン系はとにかくひ弱なので、油断するとちょっとしたことであっという間に病気になったり死んだりする。


 だからこそ繁殖力が強く、文明の発達も他の種族と比べると圧倒的に早いという強みがあるのだが、無人島で耕助一人となるとその強みは発揮しづらい。


 現状、耕助は拡張性が高い以外何の取り柄もない雑魚なので、避けられるリスクはすべて避けるぐらいでないとどうなるか分かったものではないのだ。


「うお、うお」


「そういや、明日はトウモロコシの収穫か。まあ、今日の朝飯に食える食材は、昨日と同じくジャガイモとイノシシ肉なんだが」


「ドラゴンの妾が言うのもなんじゃが、あまり健康に良くなさそうなメニューじゃのう」


「穀物がないのもさることながら、野菜とか野草がなあ……」


 朝食についてのレティの言葉に、遠い目になりながらそうぼやく耕助。


 残念ながら、この島は食べられる野草とかその類は一切生えていない。


 森には果物があるにはあるが、現状ゆずしか見つかっていないので、実質食糧事情には影響がない。


 なので、ミッションで種をもらったニンジンと大根が収穫できるまで、実質野菜なしという非常に健康に悪そうな食生活にならざるを得ないのである。


「一応聞くけど、レティも朝飯は食うか?」


「悩むところじゃのう。別に十年やそこら何も食わんでも問題はないから、食糧事情がよろしくない相手から馳走になるのは躊躇われるところでのう……」


「気を遣わなくてもいいぞ。少なくとも、肉類は食いきれないほど保管してるし。ただ、肉はともかくイモはまずくはないってレベルでしかないんだが……」


「出されたものに文句をつけるほど礼儀を知らんつもりはないから、味や内容については気にせんでもええ。というより、それが気になるなら、無理に出さんでもええぞ」


 朝食について問われて、正直に思っていることを告げるレティ。


 そもそも、見て分かるほど食糧事情がひっ迫している地域で、厚意からなけなしの食料を差し出してくれる相手に美食を求めるような無神経さは持っていないつもりである。


「だったらレティさんは、さっき拾ってきたものを食べます?」


「そうじゃのう。下手に耕助に食わせられん以上、腐らせるよりは妾が食ったほうがましか」


 シェリアの助け舟に、ありがたく乗っかるレティ。


 とりあえず今日のところは、これで朝食問題は解決する。


「しかし、本気でもうちょっと食材にバリエーションが欲しいな。それも主に野菜類で」


<・そんな耕助に朗報。

 ・アップデート記念ということで

 ・今日から三日間無料十連>


「もともとガチャは無料だっただろうって突っ込むべきか?」


<・むう、反応が冷たい>


「出るガラクタが一個から十個になるだけだって分かってんだから、そりゃこういう反応にもなるわな」


<・三十連もあれば

 ・一個ぐらいはいいのが出るかも>


「どうだろうなあ……」


 立て札の言い分に、あくまでも懐疑的で冷めた反応を崩さない耕助。


 今までが今までだというのもあるが、そもそもガチャなんてあてにならないものの筆頭である。


「まあ、別に損をするものでもないんじゃから、とりあえず回すだけ回せばよかろう」


「もしかしたら、美味しいお肉とか出るかもですし」


「食い物が出るなら正直、肉より米か野菜が欲しい……」


 レティの言葉を受けたシェリアの一言に、そんなボヤキを返す耕助。


 実際問題、肉はシェリアが仕留めてきたドラゴン肉が、それこそ下手をすれば一生かかっても食いきれないほどある。


 それに、四捨五入すれば四十の大台に乗る歳ともなれば、野菜の必要性やありがたみも身に染みてくる歳頃だ。


 問題は、こういうことを言っていると、大体耕助の欲しいものは出てこないことだろうか。


「うお」


「はいはい。ぐちゃぐちゃ言ってないで、さっさと回すわ。という訳で、頼む」


<・りょ>


 どうやらウォーレンにまで諭されたらしく、素直にガチャを回す申請をする耕助。


 耕助の指示を受け、立て札がガチャを表示する。


「……なんか、妖精みたいなのが飛び交ってるんだが……」


<・せっかくだから、ガチャ演出もアップデートしてみた。

 ・ちなみに、この妖精はボクの姿をデフォルメしたもの>


「……自分で自分の姿をデフォルメするのって、どうなんだ?」


<・恥とか以前に

 ・ボクがそんな面倒なこと

 ・自発的にするとでも?>


「つまり、身内の誰かの作品ってことか」


<・ん。

 ・ちなみに、レジェンドレア以上の確定演出で

 ・ボクの本来の姿をチラ見せ>


「急に自己顕示欲を見せつけだしたな、おい」


<・そうしないと、女性であることはおろか

 ・本体は人型だってことも忘れられるというか

 ・信用してもらえないって母に言われた>


「実際、あんまり信用してはないが……」


 急に自己顕示欲を見せ始めた理由を聞き、思わず納得してしまう耕助。


 恐らく立て札自身は耕助から性別や人型か否かを疑われても気にしないのだろうが、親としてはそうもいかなかったのだろう。


「ちなみにレティ。この妖精の再現度合いは?」


「よく特徴をとらえた上で、実に上手にSDに落とし込んでおるの」


 唐突に出てきた妖精について、立て札の本来の姿を知っているレティに確認する耕助。


 耕助の質問に、素直に正確な情報を伝えるレティ。


 神に相当する存在なのでおかしなことではないが、どうやら立て札の中身は相当な美少女のようだ。


 もっとも、この手の話で出てくる神など、大体は超が付くほどの美形か驚くほど不細工かのどちらかと相場は決まっている。


 それ以外だと動物ベースの姿か、そもそも美醜の基準が違う種類の名状しがたい姿をしているかのいずれかがお約束というものだろう。


「なるほど。まあ、続けてくれ」


<・りょ>


 耕助に言われて、ガチャの処理を続ける立て札。


 演出の都合か、十連であろうとレバーを回すのは一回だけらしい。


 立て札の中身らしい存在は現れなかったので、さすがにレジェンドレア以上のものは出なかったようだ。


 が、大量の妖精が祝福するように飛び回って飛び去って行く演出が入ったので高レアリティなアイテムは何か出ている模様である。


 そのまま、カプセル排出口から十個のカプセルが飛び出してくる。


<・ハイレアは三つ出てるっぽい。

 ・何気にウルトラレアも出てる>


「今までの法則からすると、レアリティが高い=使えないものなんだが……。まあ、開けてくれ」


<・りょ>


 耕助の指示に従い、次々にカプセルを開封していく立て札。


 出てきたものは……


”ファ〇コン内蔵型テレビ”

”スーパーファ〇コン内蔵型テレビ”

”ツインファ〇コン”

”電熱式焼き芋メーカー”

”高級ブランド塩”

”松坂牛イチボステーキ100グラム”

”バンゲ〇ングベイ”

”1/8負け犬ゴブリンのフィギュア”

”VHSテープ「幻の一戦 力〇山&井上〇弥VSカール・〇ッチ&マイク・タ〇ソン 無制限一本勝負」”

”卑猥なおもちゃシリーズ・電動式で振動するピンク色の新ショウガ”


 の十点であった。


 なお、アップグレードの影響か、わざわざ鑑定しなくても出たものの名称だけは表示してくれるようになっていたりする。


「ちょっと待て、最後の!」


<・ちなみに、レアリティはノーマル>


「どんなセクハラだよ、おい!」


「まあ、そんなもんはせいぜい耕助が気まずい思いをする程度の実害しかないからいいが、やたらテレビが多いのう」


<・ちなみに、ファ〇コン内蔵型テレビとツインファ〇コンは

 ・現状実質的に同じもの。

 ・何しろソフトが一つしかない>


「……一応、これらがハイレアってことでいいのか?」


<・ん。

 ・それより、ボク的にはウルトラレアの

 ・VHSソフトが非常に気になる>


「奇遇だな。俺も気になる……」


「妾としては、電気さえあれば機能する組み合わせが出てきたことが一番の驚きじゃがな」


 出てきたものについて、そんな風に講評する耕助とレティ、立て札。


 自分に関係があるものが一つも出てこなかったので、ウォーレンは興味を失ってラジオ体操をしている。


「えっと、これって何ですか?」


「シェリアがダンジョンで拾ってきたテレビで使えるアイテムでな、この中に映像、で通じるのか? が記録されているんだ」


「遠見の魔法で見る景色みたいなものが、その中に記録されている、という感じでいいですか?」


「遠見の魔法がどんな感じなのか分からないから断言できないが、多分似たようなもんだと思う」


 VHSソフトについてよく分かっていないシェリアに対し、うまい説明が思いつかずに単純な事実をそのまま話す耕助。


 映像なんて言われても当然理解できないシェリアだが、島の通訳システムにより伝わったニュアンスから、耕助が言わんとすることはなんとなく分かったようだ。


「てか、力〇山って井上〇弥が生まれる前に亡くなってるのに、どうやって試合成立させてんだよ……」


<・そこは詳しくは鑑定で>


「ソフトの中身まで分かるのか?」


 立て札に言われて、首をかしげながらビデオテープを鑑定する耕助。


 鑑定してみると


”VHSテープ「幻の一戦 力〇山&井上〇弥VSカール・〇ッチ&マイク・タ〇ソン 無制限一本勝負」:神の力を無駄遣いして実現させた、本来絶対に成立しえない夢の一戦。ルールは総合格闘技のものを使用するため、ボクサーとプロレスラー、どちらにもなにがしかの制約はかかる。なお、記録メディアがVHSなのは、担当した神の趣味。VHDとかではないだけ有情だと思おう”


 となっていた。


「こんなことに神の力を使っていいのかよ……」


<・多分、英霊的な奴を使ってるから

 ・さほどエネルギーとかは使ってないはず。

 ・というかこれ

 ・英霊コロシアムで撮影してると思う>


「英霊コロシアムってなんだよ……」


<・暇してる神とか悪魔とかが

 ・世界の記憶の一形態である英霊に

 ・いろんなルールで勝負させる施設というかシステム。

 ・なお、人気なのが

 ・いわゆる文科系の身体能力が低い英霊に

 ・高難易度のアトラクションやらせる系の企画>


「やめてやれよ……」


 神々らしいあまりにえげつない行為に、思わずそう突っ込む耕助。


 それが仕事の芸人ならまだしも、英霊と呼ばれるほどの存在に至った人物にやらせることではない。


「まあ、疑問も解決したことだし、今度こそ飯だな」


「今のところ問題は出ておらんが、食事がらみにアップデートの影響が出ておらんとは言い切れん。一応注意するのじゃぞ」


「……そういうフラグ建てるの、やめてくれないか……」


 食事の準備に入る耕助に、そんなフラグ満載の注意を口にするレティ。


 もっとも、使う食材は昨日までに収穫を終えているジャガイモと備蓄のイノシシ肉だ。


 さすがにこれらにはアップデートの影響は出ていないようで、鑑定しても特に問題となる記述はなかった。


「大丈夫そうだな。さすがにこれが腐ってたり呪われてたりしたらシャレにならん」


<・採取とか収穫が終わったものには

 ・影響が出てないはず。

 ・影響が出るのは、今日以降リポップしたもの>


「ということは、ガチャで出たものも安心はできない、っていうことですよね?」


<・ん、そうなる。

 ・まあ、ガチャ産アイテムだと

 ・そもそも問題になりそうなものを引くかどうかが……>


「言うな……」


 ジャガイモを茹でながら、そんな話をする耕助、立て札、シェリア。


 今のところ、妙な付加効果の有無に関係なく、現状では役に立たないものしか出ていない。


「ガチャ産といえば、あそこにあるミキサー車、適当に分解して資材にするとかは考えておらんのか?」


「工具が現物もレシピもないから、ばらそうって考えは全然出てこなかったな……」


「シェリアのパワーなら、工具なんぞなくてもナットぐらいなら素手で外せようが……」


<・残念ながら、そういうずるはできない。

 ・最初から完成品だったものは

 ・取り付けとか設置、使用に必要な部分以外

 ・外したりはできなくなってる。

 ・耕助が修理・解体|(乗用車)とか覚えて

 ・工具類を入手すれば解体できるかも>


「なるほどのう」


 立て札の説明に、そういうシステムかと納得するレティ。


 この島はスキルを持っていないと、あちらこちらでできることが制限される仕様になっているようだ。


「今までそれどころじゃなかったから後回しにしてたけど、もうちょいその辺の仕様とか確認したほうがよさそうだな」


「ですねえ」


「そのほうがよさそうじゃな。一番仕様をしっかり把握しておる立て札は、聞かれんと答えんじゃろうからのう」


<・何が分かってないのか分からないから

 ・聞かれないと答えようがない>


 ジャガイモとイノシシベーコンを皿に取り分けながらの耕助の言葉に、全面的に同意するシェリアとレティ。


 なお、レティの皿には、先ほどシェリアが拾ってきた茹で卵とクロワッサンが盛られている。


 そのレティの指摘に、一応それらしい言い訳をする立て札。


「まあ実際、この島の仕様を一から十まで全部説明されても理解できないだろうし、仮に理解できたとしても全部は覚えきれないだろうからなあ」


「ですね。少なくとも私は、十聞いても一度に三つぐらいしか覚えきれないと思います」


「まあ、普通そんなもんだろうな。俺だって、聞いたときは理解して覚えてるつもりでも、後から思い出そうとすると全然って状態になる確信があるし」


 立て札の言い分を認めるように、自分たちの側の問題を口にする耕助。


 あんまりやることが多くて仕様が複雑なゲームは、チュートリアルやマニュアルを見ても理解しきれないものである。


「という訳で、飯食ったらまずは、生存に直結する農業周りと今後の活動に影響がデカい製作関係の確認だな」


<・そのあたりは、割とアプデの影響も出てる>


「だろうな」


 そう言って、朝食に手を付ける耕助。


 なおウォーレンは、さっき自分が生えていた穴にもう一度植わっている。


 大規模アップデート初日は、朝食前に大いにドタバタするのであった。








「まず大前提として、畑と認識される正確な基準って何なんだ?」


 ジャガイモを収穫しながら、本来なら最初に確認しておくべきことをいまさら立て札に質問する耕助。


 なお、シェリアはもう一度森のほうを調査しに飛び立っており、レティは住居を整えに山の中腹に行っている。


<・ん、情報解禁の基準を満たしてて

 ・もう説明しても大丈夫だから説明すると

 ・畝を作った上で大根とか蕪とかお化けカボチャが植われる面積を

 ・十センチ以上の深さで耕すと畑として扱われる>


「そんな基準だったのか」


<・後、前にも説明したと思うけど

 ・何度も耕して収穫すると

 ・土の硬さ自体はどんどん柔らかくなっていく>


「ああ、それは覚えてる」


 情報解禁に条件があることを匂わせつつ、耕助の質問に答える立て札。


 そのことを頭の片隅に置きつつ、次の質問を考える耕助。


「じゃあ、次。今ある作物は全部、一日経てば一律で一定の生育度合いまで育つ仕様だけど、一日経ったっていう判定はどこで行われている?」


<・作物に限らず、システム上の一日の区切りは今は毎朝五時。

 ・これは午前四時五十九分に植えた作物でも

 ・午前五時になれば一段階育つ。

 ・後、これも聞きたいだろうから先に答えると

 ・外の作物みたいに徐々に育つ普通の植物は

 ・午前五時だからいきなり芽が出るとかはない。

 ・ちなみにこの午前五時は

 ・アプデとかによって変わることもある>


「要は、外の植物を植えたら普通の育ち方をするってことでいいんだ?」


<・ん>


「ちなみに、ここまでの情報は、農業始めたときに質問したら答えてくれたか?」


<・時間の区切りは、前にも一度答えてる。

 ・外の植物についてと午前五時をまたいでの挙動は

 ・ラディッシュ収穫後なら答えてた。

 ・その前だと、まずは実際にどうなるかを見ないと理解できないだろうから

 ・情報開示の対象外。

 ・畑になる判定基準は、開示条件がジャガイモ収穫後>


「なるほど。確かに、区切りをまたいでの挙動と外の植物に関してはそりゃそうだよな」


 実感しないと理解できないと言う立て札の言い分に、一応納得はする耕助。


 そのまま、次の質問に移る。


「土の状態とか作物の正確な生育状況とかって、鑑定で分かるようになるのか?」


<・……回答するのに微妙なラインだけど、まあおまけで。

 ・熟練度が上がればそのうち分かるようになる。

 ・ただし、当然のことだけど

 ・鑑定の熟練度が低いと分かる項目は増えないし

 ・農業の熟練度が低いと正確な数値は分らない。

 ・これは農業に限らず、全ての分野で共通>


「了解。まあ、農業のノウハウも持ってないのに、鑑定の腕がいいだけでなんでも把握できるのもおかしいわな」


<・そういうこと。

 ・この辺りに関しては

 ・さすがに直感的におかしいと思う仕様にはなってない>


 耕助の疑問に答えつつ、念のためそう主張する立て札。


 実際問題、ゲーム的に考えた場合、鑑定だけで全部分かるパターンも、鑑定と各種専門スキルの組み合わせが必要なパターンも両方普通にあるので、どっちだったとしても直感的におかしいと思うほどではない。


「この辺りは、ってことは、他のことに関しては普通にあるのか……」


<・物理演算的な部分では

 ・直感的におかしい内容はいくらでも>


「……あ~」


 立て札が挙げた要素に、思わず納得の声を上げる耕助。


 実際、初日に伐った木が倒れる方向に突っ込みを入れたりと、物理演算的な要素に関してはいろいろと覚えがある。


「……っと、ジャガイモに呪いと祝福と病気が各一個か。ラディッシュは問題なし。三つとも同じ株から出てるけど、これはこういうものなのか?」


<・野菜や果物に関しては、

 ・収穫のタイミングでそういうのが付く。

 ・だから、同じ株でも病気と健康なのが入り混じる>


「ってことは、この病気は他の株には伝染しないってことか?」


<・このタイミングで付く病気はそう。

 ・生育途中でかかる病気は

 ・普通の病気と同じで他の株にも伝染する>


「それが普通とはいえ、厄介だな……」


<・ちなみに、生育途中の病気に関しては

 ・アップデート後から発生するようになった。

 ・これまでは保護期間みたいなもの。

 ・まあ、無人島品種は原種だと

 ・そういう病気にはならないけど>


「そういや、連作障害とかもなかったな。これってアップデート前には存在しなかったのか、そもそも無人島品種には連作障害って概念がないのか、どっちだ?」


<・両方。

 ・食物連鎖と同じで、アプデ前はその手の要素はカットしてた。

 ・それとは別に、無人島品種は農業訓練用の救済作物だから

 ・原種の時点では病気とか連作障害とかの

 ・ややこしい要素は一切ない。

 ・品種改良して原種じゃなくなると

 ・連作障害が出たり生育途中で病気になったりするように>


「きついな、それ……。まあ、今のところ品種改良も何もあったもんじゃないから、当分は気にしなくていいか」


 立て札から聞いた情報に、思わず顔をしかめる耕助。


 そこに、再び畑から這い出てきたウォーレンが声をかける。


「うお、うお」


「ああ、ウォーレンがいれば、作物の病気はある程度発病を抑制できるのか」


「うお」


「ちなみに、ウォーレンは農作業はできるのか?」


「うお、うおうお」


「ああ、それは俺がやらにゃいかんのね。つうことは、俺の作業は今まで通りってことか?」


「うお、うお」


「なるほど。じゃあ、種にする作物はウォーレンに渡すわ」


 傍で聞いている人間を置き去りにする感じで、ウォーレンと盛り上がる耕助。


 とりあえずウォーレンは直接的な作業ができない、というのは耕助のセリフから何となく分かる。


 が、ウォーレンの言葉が耕助以外に理解できないため、どうにもカオスな空気になってしまう。


<・耕助、耕助。

 ・それだと、ボクはともかく

 ・見てる人に全然伝わらない>


「お、おう。ウォーレンが言うには、畑に干渉して土を良くしたり病気を防いだりはできるけど、畑仕事そのものはできないそうだ。その代わり、俺が錬金術で作物を種に変えるよりは、ウォーレンがやったほうが種の品質が良くなってバッドステータスも付かなくなるんだと」


<・まあ、そんなところだと思う>


「そういや、病気と呪いが付いたジャガイモがあったけど、ウォーレンの力はもう効いてるのか?」


「うお」


「ああ、効いてなかったら、もっとすごい数が呪われてるか病気になってるのか」


<・それはそう。

 ・今の耕助の能力的に

 ・良くも悪くも何の補正もないから

 ・耕助の運だと下手すると畑の半分ぐらいは

 ・呪いか病気に……>


「ひい!」


 立て札の言葉に、心底ビビる耕助。


 そんなことになったら、それこそ飢え死にである。


「うおうお」


 耕助と立て札の漫才に、何やら呪われたジャガイモを拾っていじっていたウォーレンが割り込む。


「ん? ああ、さっきの呪われたイモを種芋にしたのか。……やっぱり、呪いは継承するんだな」


「うおうお」


「これを育てたらどうなるのかって? なあ、立て札。この場合、呪いは継承するのか?」


<・耕助とウォーレン次第。

 ・農作物に限らず、加工のたびに継承するかの判定がある。

 ・だから、病気になった種を育てたから病気とは限らないし

 ・もっと言うと祝福された種で育てたイモとか蕪が

 ・祝福されつつ呪われて病気と毒を持つとかいうことも>


「何そのカオス……」


<・クラフト台で加工するものも

 ・似たようなことになる。

 ・なので、今後作ることになるであろう設備類も

 ・呪いとかの対象になるから注意。

 ・呪いも祝福も付かないのは

 ・立て札パワーで作るクラフト台だけ>


 本日は妙に情報開示が甘い立て札が、先回りするようにそんなことを教えてくれる。


「呪われた設備とか道具で作ったものって、やっぱり呪われるのか?」


<・それはもちろん>


「呪いを解除する方法は?」


<・聖水か浄化系のスキル>


「つまり、当分はどうにもできないってことか」


<・ん。

 ・ミッションかガチャで出るのを待つしかない>


「うお」


 呪いについての情報を一通り聞き、そう結論を出す耕助。


 そんな耕助に、同調するように立て札とウォーレンがそう声をかける。


 なお、ウォーレンの言葉を意訳すると、頑張って呪いと毒と病気は抑えるという感じになる。


「耕助さん耕助さん!」


 そんな耕助の元へ、大いに慌てた様子でシェリアが戻ってくる。


「どうした、シェリア?」


「森の中央付近の湖近くに、変な生き物の集落が!」


「へえ~」


「なんか、反応が薄い!?」


「そもそも、森の中央って時点で距離がすごいから、こっちから絡みにいかない限りはあんまり関係ないかな、って……」


「あ~……」


 シェリアが持ち込んだビッグニュースに、そんな感じでローテンションで返す耕助。


 そこに、立て札が口を挟む。


<・それ、アプデで発生した原住種族。

 ・どんなものが発生したかはボクも特定できない。

 ・ただ、できるだけ友好的な関係をもったほうが

 ・今後楽ができるはず>


「なるほど。まあ、今日明日どうなるってこともないから、もうしばらくは様子見だな」


「分かりました」


「うお」


「ただ、もしかしたら急な遭遇でってこともあるから、交易に使えそうなものぐらいは用意しとくか」


<・ん、そのほうがいい>


 耕助の結論に、立て札が太鼓判を押す。


 いろいろあって腹が座ったのか、シェリアがもたらした厄介そうな情報にも、おのれのペースを崩すことはなかった耕助であった。

緑髪のエレアは(以下略


なお、大方の予想通り、拾い食いをためらわないシェリアは遺跡やダンジョンでどんどんおいしいものを拾っては食べるわけですが、こうしてみるとやっぱり耕助はまだまだ不憫だのう。

本当に鑑定結果通り問題なくても、耕助は拾い食いで腹を壊しそうな気がしてならないのですが。


ちなみに、ランダムでつく呪いの場合、同じアイテムでもどんな呪いがかかるかは特に固定されていない=持つたびに呪いの内容が変わるので、いろいろなものを組み合わせて呪いを有効活用とかは現状不可能です。

呪われたアイテムを有効活用したいなら、そんな呪いの干渉などへでもないわってぐらいの耐性か浄化能力を持たねばならないわけで……


何だろう、レティはもとよりシェリアも全く問題なさそうというか、耕助以外呪いの影響受けるキャラいないんじゃなかろうか。

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― 新着の感想 ―
この話だけ看板のセリフが[]じゃなくて<>になってる?
[一言] 更新お疲れ様です。 レティ食べなくても大丈夫なんですか。 難しいですね。 耕助なら「食べてない」ということを気に病むでしょうから。 けど、限りある食料を消費するのもまた厳しい。 どっちつか…
[一言] 単なる種族敵特徴でしかないのに耕助だけ呪いにかかったりバッドステータスになること自体が呪いに思えてきました。 あと、呪われたときのSEはドラ◯エのあれですよね・
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