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住所不定無職の異世界無人島開拓記  作者: 埴輪星人


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第11話 家を建てる準備をしよう その1 もう少し食料関係をよくしよう

〔・耕助さん、朝ですよ

 ・起きてください〕


「……あっちこっちで見た気がする起こし方って時点で、ネタ切れなのはわかった」


〔・……むう。

 ・一発で元ネタが分かる特徴的な起こし方って

 ・思ったより多くない〕


 五日目の朝。なぜか左半身を柔らかい感触に包まれた耕助は、いつものように立て札に妙なネタで起こされる。


〔・それで、耕助。

 ・何も言わずに左を見る〕


「……えっ? ……なんでだよ!?」


 立て札に言われて左を見ると、至近距離にシェリアの顔が。


 慌てて離れようとして、身動きが取れないことに気が付く。


 どうやら耕助は、シェリアの抱き枕にされているようだ。


「確か、結構離れて寝てたよな……?」


〔・人肌が恋しかったのかそれとも単に寒かったのか

 ・夜中に起きたシェリアがふらふらと抱き着きに。

 ・もしかしたら、抱き枕がないと安眠できない派かも〕


「理由はどうでもいい。問題は、この絵面が非常にやばいということだ……」


〔・襲って子孫繁栄も

 ・それはそれで〕


「無茶言うな……」


 とんでもないことを言い出す立て札に対し、とんでもない状況に理性をがりがり削られていることを自覚しながら力なくそう突っ込む耕助。


 握手とかのレベルですら女体に触れた経験が乏しい耕助にとって、このレベルでの密着はいろんな意味で毒だ。


 なお、一番の猛毒は腕に押し付けられた大きくてやわらかくて張りがあり、奥に芯のような硬さが残る感触である。


〔・シェリアが起きた時の反応が楽しみ〕


「……俺、死んだかな? いや、死ななくても死のう……」


〔・別に浮気がばれたとかじゃないんだから

 ・いちいち死のうとか言わない〕


「……浮気とか以前に、四捨五入すれば四十のおっさんが、同意なしにミドルティーンの子供相手に手を出したと思われてもしょうがない状況にいる時点でいろいろアウトだろう……」


〔・大丈夫。

 ・状況的に襲ったのはシェリアだし

 ・そもそも、無人島では日本の条例関係ない〕


 いちいち初心というか堅い耕助の反応に、半ば面白がりながらはやし立てる立て札。


 まだ出会って一日ほどだとか、シェリアがどう思っているのかとか、そういう要素は全部無視である。


「……ほえ?」


 そんなことをわちゃわちゃやっていると、シェリアがようやく目を覚ます。


〔・うわあ、あざとい〕


「それは思ったが、ぶっちゃけそんなことはどうでもいい……」


 いまいち状況が呑み込めていないらしいシェリアの反応に、思わずという感じで正直な感想を口にする立て札。


 立て札の感想に同意しつつ、この後どう転んでもろくなことにならない予感しかせず遠い目になる耕助。


〔・というかこの子、特別ぶりっこってわけでもないけど

 ・なんとなく同性からは嫌われてそう〕


「分からんではないが、それ、今言うことか?」


〔・むしろ、今茶化さないと〕


「茶化されても困る……」


〔・ちなみに、一人に対してべたべたするなら

 ・べたべたしてる相手とのもともとの距離感次第。

 ・男にだけいい顔したりべたべたするパターンは

 ・サークルクラッシャーなので嫌われる。

 ・最悪なのは、狙った相手以外に無茶苦茶態度悪いパターン〕


「だからそれ、今言うことか……?」


 まだ寝ぼけている感じのシェリアが完全に覚醒する前に、とばかりに、いらんことを言いまくる立て札。


 そんな立て札の言葉に、ある種悟りを開いたような表情で苦情を言う耕助。


 なお、郷ではどういう扱いだったかというと、ちょくちょく勢いだけでやらかすアホの子的行動から、どちらかというとペット的なポジションだったりする。


 そんなどうでもいい脱線をしているうちに、ようやくシェリアが完全に目覚める。


「えっと、あの……、なんかごめんなさい……」


 自分がとんでもない状態で寝ていたことに気が付き、真っ赤になりながら謝罪しつついそいそと耕助から離れるシェリア。


「なあ、シェリア。俺だからよかったけど、普通の男相手だったら取り返しのつかないことになってたぞ?」


「……そうですね。そうですよね……」


「まあ、子供さえできれば相手はどうでもいいって言うんだったら、話は別だけどな……」


「さすがにそれは、最後の手段です!」


「どうしようもなかったら、やるつもりはあるのか……」


 結構不名誉な扱いを受け、思わず大声で否定しようとするシェリア。


 もっとも、最後の手段として候補に挙がっている時点で、何の否定にもなっていないのは言うまでもないだろう。


「あ、その、それについては種族的に、個人の好みとか夫婦関係とかそういう要素より、圧倒的に子どもを産むことのほうが重要なので……」


〔・まあ、ゴブリンやオークを襲撃するぐらいだから

 ・あえてそういう連中に体を差し出すぐらいは

 ・特に疑問でもないかも〕


 耕助の突っ込みにしどろもどろになりながら、弁明になっていない弁明を口にするシェリア。


 シェリアの言葉に、翼人族のあれな事例をもとにさもありなんと納得する立て札。


「で、なんで抱き着いてたんだ?」


「昔から、何かを抱いてないとよく眠れなくて……」


「……早急に、抱き枕を作らなきゃいけないな、そりゃ」


 シェリアの理由を聞き、そんな結論を出す耕助。


 いろんな意味で手を出すのが怖い相手なので、理性が負ける前に対策を取る必要があるのだ。


〔・いっそ手を出すのもありじゃ?〕


「なんというか、好感度が足りないのに手を出したら、子供授かるまで搾り取ってから相手を始末しそうな空気があってなあ……」


〔・ああ、翼人族ならやるかも……〕


「さすがに耕助さんにはやりませんよ!」


「それ、ならず者とか相手だったらやるって言ってるようなもんだぞ……」


「あっ……」


 語るに落ちたシェリアに対し、厳しく突っ込みを入れる耕助。


 立て札は同性から嫌われてそうと言っていたが、この手のアホの子的言動が素で出てくる間はそこまででもなさそうである。


「まあ、そのあたりは置いておこう。とっとと朝のガチャを済ませて朝飯食うぞ」


〔・了解。ガチャを回す〕


 耕助に言われ、さくっとガチャを回す立て札。


 例によってハイレア以上の演出が発生する。


 出てきたものを見て、困ったように耕助に確認する。


〔・かなりの大物が出たけど、どこに出す?〕


「どこって、そうだな……」


 唐突にそう聞かれ、どうしたものかと迷う耕助。


 ざっと周囲を見渡して考え、将来的に手を付けなくても困らないであろうスペースを指定する。


「……あのへんだな。あそこらへんだったら、拠点を広げることになっても使わないはず」


〔・了解〕


 海岸線沿いの、微妙な感じで飛び出たエリアを指定する耕助。


 耕助の指定を受け、ガチャの中身を出す立て札。


 出てきたのは、ミキサー車であった。


「……使えねえ……」


〔・使えないのは予想通り。

 ・問題は、屋根としても使い勝手悪いこと〕


「……そんなにか?」


〔・詳しくは鑑定で〕


 立て札に言われ、ミキサー車を鑑定すると


”ミキサー車:コンクリートを練りながら現場まで運ぶ車。アメリカ製。最初期の型なので、乗り心地その他はお察し。なお、エアコンなんて贅沢なものは存在しない。当然のことながらMT車”


 という内容が。


「本気で使えねえ……」


〔・ん。

 ・仮にガソリンと生コンがあったとして

 ・どっちにしてもあんまり使わないというか使えない。

 ・いや、このタイプはディーゼルだったかも〕


「使うのがガソリンだろうが軽油だろうが、関係ないぞ……」


 立て札のセリフに、耕助がそう突っ込む。


 実際問題、現状で動かせないことにも動かせても大して役に立たないのも変わりないので、使う燃料が何であっても関係はない。


 さらに言うなら、耕助の免許はAT限定でMT車に乗ったことはなく、ギヤチェンジの操作ができないので燃料があっても動かせない。


「あの、これなんですか?」


「ああ、これは自動車っつって、馬なしで走る馬車みたいなもんだ」


「へえ、すごいですね!」


「が、こいつは特定用途に特化してるから、乗れるのは運転手とせいぜい助手席にもう一人。また、特定用途に特化してるせいで荷物もほぼ積めない。動かすために必要な燃料は、現状この島ではどうやっても手に入らない。止めに開発された一番最初のタイプだから、構造に気が利いてないところが多くて故障も多い」


「……は、はあ……」


「という訳で、こいつは今のところ、どうやってもスペースを食うだけのガラクタなんだよな」


 耕助の説明を、やや引きながら聞くシェリア。


 もともとどういうものなのか、どう動くのかが分からないので、詳しく説明されてもピンとこないのだ。


「まあ、出てくるのがガラクタなのは分かってたから、ガチャ結果は置いておこう。まずは朝飯だが、せっかくだからジャガイモ掘って茹でるか」


〔・ん、それがいい。

 ・たとえ微妙な味でも、熟練度にはなる。

 ・後、ミッションも出てる〕


 いまいち分かっていないシェリアを置いて、朝の予定を口にする耕助。


 耕助の選択に、いいね! という感じのマークを表示しながらそう告げる立て札。


「という訳だから、シェリア。火を起こしておくから管理とお湯沸かすの頼む」


「はい!」


 耕助に仕事を振られ、元気に返事をするシェリア。


 こうして、シェリアを迎え入れてから初めての朝は、どうにか平常通りの流れに戻るのであった。








「あっ、早かったんですね」


 収穫作業を始めてから十数分後。


 しっかり洗ったジャガイモを五個ほどと、土がついたままのジャガイモが数十個入った籠を持って、耕助が戻ってくる。


「全部は収穫してないけどな。無人島とつく作物は、どうやら栽培も収穫もものすごく簡単にできるらしいんだ。その分、味はお察しらしいけど……」


 そう言いつつ、いい具合に沸騰しているお湯に大雑把に適量と思われる塩を放り込み、ちょっと待ってからジャガイモを投入する。


「さて、あとは茹で上がるのを待つだけ、なんだが……」


「早く茹で上がる、とかはないんですか?」


「さすがに、それはなさそうだな」


〔・そもそも、火を通す時間の短縮は

 ・農業じゃなくて料理スキルの区分〕


「だよなあ」


 シェリアの疑問に対し、そう答える耕助と立て札。


 その間にも、ジャガイモには順調に火が通っていく。


「……そろそろか?」


 数分後。串を刺して茹で加減を確認し、大丈夫だと判断してジャガイモを鍋からすくい上げる耕助。


 それを、期待のこもった目で見つめるシェリア。


「味が足りなかったら塩を振ってくれ」


「はい!」


 差し出された大ぶりなジャガイモが三つ乗った皿を前に、嬉しそうにそう返事をするシェリア。


 早速、熱さも何も気にせずにイモを素手で割り、何のためらいもなく皮ごとかじる。


「……どうだ?」


「……ん~、こんなものじゃないでしょうか? 確かにすごく美味しいっていうことはありませんが、個人的に茹でただけのジャガイモなんてこんなもんじゃないかなって思いますよ」


「なるほど。シェリア的には普通、っと」


 シェリアの反応を参考に、自分の分を慎重に冷ましながら箸で割って、どうせ茹でただけのイモは大した味などしないと軽く塩を振って口に入れる。


「……まあ、食えなくはないな。確かにかなり微妙だが」


〔・いくら三日で育つイモでも

 ・ジャガイモはジャガイモ。

 ・食べられないほどまずいものはできない〕


「まあ、鑑定結果も微妙とは書いてあっても、まずいとは書いてないからなあ……」


 耕助の正直な感想に、立て札がそんなことを言う。


 立て札の言葉に同意しつつ、これが続くのもつらいのはつらい、などと頭の片隅で考える耕助。


 確かにまずいわけではないのだが、かといって毎日食べられる味かというとそんなこともない。


 美味しいものは飽きやすいというのは事実だが、だからと言って微妙なものが飽きないわけではなく、このジャガイモの味は微妙な癖に何となく飽きやすいという絶妙なポジションにいる。


 そういう意味でも、無人島ジャガイモは非常に微妙な存在である。


「……やっぱ、もっといろいろ調味料が欲しいなあ……」


「そうですか?」


「塩だけだと、絶対飽きる自信があるぞ」


「そんなことはないと思うんですけど……」


〔・耕助は、ミニス〇ックゴールドの国から来た〕


「……ああ……」


 耕助の反応に首をかしげていたシェリアが、立て札の一言ですぐに納得する。


 ああいうものがあふれかえっていれば、このジャガイモの味に飽きるというのも分からなくはない。


「とはいえ、調味料より前に家と服を何とかしないといけないからなあ」


〔・それはそう。

 ・いつまでも葉っぱ一枚のホームレスはダメ〕


「ちゃんとした服は家より後でいいとしても、正直せめてパンツだけでも欲しい。でないと、服を着る生活に戻れなくなりそうで……」


〔・それ、だいぶ深刻な問題のような……。

 ・あと、当面は腰蓑なりパン一なりでよくても

 ・ちゃんとした服は早めに何とかしないとだめ。

 ・でないと、シェリアもいずれ全裸に……〕


「一応この服は、魔力を通せばある程度きれいになりはしますけどね」


〔・その手の自己修復も、限界はある〕


「家より後になるにしても、かなり早めに何とかしなきゃいかんか……」


 立て札の言葉に、渋い顔でそう結論を出す耕助。


 この分では、塩以外の調味料の安定確保に手を付けるのは、かなり先のことになりそうだ。


「まあ、何するにしても、今日のところはミッションに合わせて行動するしかないな。家を作るにしても、そのほうが結果的に早く終わるだろうし」


〔・ん。

 ・という訳で、現時点でのミッションを確認〕


「だな」


 今日の指針を決めるために、現在どんなミッションが出ているかを確認する耕助。


 出ていたミッションは


・今日中に畑作業を10回完了せよ(3/10):食料品もしくは調味料

・木材を100確保せよ(20/100):インベントリスキル

・石材を100確保せよ(20/100):アイテムボックス及びアイテムバッグのレシピ

・収穫したジャガイモを種芋に加工せよ(0/10):ニンジンの種、大根の種

・収穫した作物を種に加工せよ(0/10):ランダムな種

・イノシシを仕留めよ(0/1):解体用器具、解体用器具のレシピ


 というものであった。


「イノシシはまあ、シェリアにやってもらうとして。すぐ終わるのは畑作業のデイリーと種芋だな」


「そうですね」


「ちょっと気になったんだが、イノシシをシェリアが仕留めて、ミッションクリア扱いになるのか?」


〔・それは大丈夫。

 ・島にいる協力関係にある誰かがこなせば

 ・ミッションを達成した扱いになる。

 ・ただ、それとは別に

 ・二人分になったから、塩の在庫は注意〕


「そこまで全然気が回ってなかったな。よし、午前中はその辺を優先して進めるか。シェリア、悪いけど畑仕事してる間に、使ってない桶全部に海水汲んできてくれないか? できるだけ砂が混ざらないようにしてくれると助かる」


「はい」


 耕助の指示を受け、両手に桶を持って砂浜まで移動するシェリア。


 それを見送った後、中途半端に収穫を済ませていた作物を、次々に収穫していく。


「さて、耕す前にジャガイモとラディッシュを種に加工だな。ジャガイモはまあ、適当に切り分ければ種芋になるとして、ラディッシュか……」


〔・もしかして、やり方が分からない?〕


「いや、たぶんこうなんだろうっていうのはあるんだ。ただ、なんとなく釈然としないというか……」


〔・それはもう、今更では?〕


「まあ、そうなんだけどな」


 そう言いながら、ラディッシュを適当にいくつか掴んで、クラフト台に向かう耕助。


 そのまま、クラフト台にラディッシュを並べて魔力を注ぎ込む。


 魔力を注ぎ込まれたラディッシュは、あっという間に三つほどの種に化ける。


 どうやら一個ずつやらなければいけないということもなかったようで、クラフト台に載せてあったラディッシュが全部種に変換される。


 今回変換したラディッシュは七個で、種は十九個になった。


 この結果から察するに、今の耕助の能力とラディッシュの品質では、種に変換した場合二個か三個になるようだ。


「……やっぱりこれでよかったか。しかし、なんでこれで種になるんだ?」


〔・無人島とつく作物は基本、そんなもの。

 ・むしろ、一般的なジャガイモと同じやり方する

 ・無人島ジャガイモが例外〕


 なかなかに胡散臭い挙動をしてのけるクラフト台に、どうしても釈然としない耕助。


 そんな耕助に、そういうものだと思えと言い切る立て札。


 なんにせよ、あとはジャガイモを切り分ければ、畑関連はいったんミッションクリアである。


「しかし、今日のデイリーはまた畑仕事だったんだな」


〔・所詮ランダムだから〕


「そりゃまあ、そうか」


 そう言いながらサッサとジャガイモを切り分けて全部のミッションを完了できる状態にしてから、デイリーミッションの完了操作をする耕助。


 手に入ったのは、スーパーのスパイスコーナーに並んでいる小瓶入りのクミンシードであった。


「……確かに調味料だけど、使い方が分からない……」


〔・雑に味変としてぶち込むほか

 ・他のスパイスを集めてうまく調合すれば

 ・なんとカレー粉に〕


「それ知ってる。ある程度の配合比を知ってないと、まともなものにならないんだよな、確か」


〔・そのとおり。

 ・勘だけで適当に作ってとかは無理だと思う。

 ・というか、それで作れたら

 ・インドとイギリスの歴史に全面的にケンカ売ってる〕


「だろうな。つまり、俺には無理ってことだな」


〔・もしかしたら、そのうちレシピが手に入る可能性が〕


「ミッションの固定報酬でもない限り、俺の運でそんなものは一切期待できない」


〔・実は、ボクもそう思う〕


 レシピ入手確率について、そんな風に意見の一致をみる耕助と立て札。


 これまでのことを考えると、当然の判断であろう。


「後は、種をいろいろもらって、と。……ランダムのはトウモロコシとほうれん草か」


〔・トウモロコシおめ。

 ・技量的に、たぶんぎりぎり作れると思う〕


「おめあり。てか、一種類じゃないんだな」


〔・この手のランダムは、二種類から四種類。

 ・今回はたぶん、二種類固定。

 ・ただし、候補は無人島品種限定で百種類ぐらい〕


「……ああ、何種類出るかもランダムなケースもあるわけか」


〔・ん。

 ・ちなみに、ほうれん草とほうれん草みたいな出方は

 ・しないようになってる。

 ・二種類なら二種類、必ず違うものが出る〕


「そりゃありがたい」


 などと言っている間に、三往復目に出ていたシェリアが戻ってくる。


「これで、全部終わりました」


「ああ、おつか……」


 シェリアからの報告に、ねぎらいの言葉をかけながら振り返る耕助。


 シェリアの姿を見た瞬間、言葉を失う。


〔・まあ、エロトラブル体質のドジっ子に

 ・海で水を汲むなんて作業を任せれば

 ・落ちて濡れ透け状態になるのは当然だと思う〕

 シェリアの姿に対し、そんな非情なコメントをする立て札。

 そう。現在シェリアはずぶ濡れになっており、服がぴったりと張り付いた上に見事にいろいろ透けているのだ。


〔・なお、耕助。

 ・死のうネタは禁止。

 ・どうせ今後、これぐらいのエロトラブルは

 ・日常茶飯事になる〕


「……だろうな。というかシェリア、せめて服だけでもなんとかしてくれ……」


「あっ、はい」


 耕助の苦情を受け、服に魔力を通してきれいにするシェリア。


 なお、実のところ、シェリアは海に落ちたのではなく、最初から濡れる前提で波をかぶるぐらいの高さを飛ぶやり方で海水を汲んでいる。


 なので、今回はドジったのではなく、濡れたらどうなるかに全く気が向いていなかったというのが正しい。


「まあ、塩を作るか」


 シェリアが汲んできた桶六杯ほどの海水を錬金窯に入れ、塩に変えていく耕助。


 できた量を見て、小さくため息をつく。


「やっぱ、桶で汲める程度だと知れてるなあ」


「もっといっぱい汲んできますね」


「頼む。あっ、今度はできるだけ濡れないように」


「頑張ってみます」


 耕助の懇願に、まったくあてにならない返事をして飛び去るシェリア。


「効率を考えると、シェリアが戻るのを待ったほうがいいんだろうけどなあ……」


〔・畑が気になるのも分かる。

 ・けど、今は塩を優先したほうがいい〕


「だよなあ……」


 立て札にたしなめられ、畑仕事を後回しにする耕助。


 飛んでいるだけあって、シェリアの往復速度はとても早く、そんな会話をしている間に最初の二杯が到着する。


「さっきより大分早いな……」


「さっきはどこがいいか、探りながら汲んでましたから」


「なるほどな」


 耕助の疑問に、そう答えるシェリア。


 どうやら先ほどの時点で大体ベストな場所を見つけていたらしく、そことの往復で済ませることにしたようだ。


 なお、ベストな場所だけあってか、今回は特に濡れていない。


「じゃあ、どんどん作っていくから、どんどん汲んできてくれ」


「はい!」


 耕助の指示に元気よく答え、ひたすら海と拠点を往復するシェリア。


 シェリアが汲んできた海水を、せっせと塩に変えていく耕助。


 なんだかんだでこれ以上はエロトラブルの類もなく、耕助の魔力が尽きるまでの二時間ほどで、桶二杯分ぐらいの塩を作るのに成功するのであった。








「さて、塩は十分できたから、シェリアは最初の予定通りイノシシを仕留めてきてくれ。俺は畑作業を終えたら籠罠を確認して、木と石を集める」


「はい、行ってきます!」


 塩づくりを終え、十分休憩したところで、次の作業に移る耕助とシェリア。


 早くインベントリやアイテムバッグのミッションをこなしたいところだが、ジャガイモは収穫までに三日かかる。


 詰み防止のためにも、毎日の収穫と栽培の作業は必須である。


「大根とニンジンをどうするかが悩ましいところだよな。鑑定した感じ、どうやら五日ぐらいかかるらしいし」


 畑を耕し、ラディッシュとジャガイモを植え、技量的にぎりぎり可能だという立て札の言葉を信じてトウモロコシ畑を作ったところで、そんな悩みを口にする耕助。


 どうも、ちゃんと育つかどうかがかなりきわどい気がしてならないのだ。


 これはラディッシュやジャガイモ、トウモロコシには感じなかった感覚である。


 なお、ほうれん草は絶対無理という感覚があるので、今回は全く悩んでいない。


「……種の数的には十回分ぐらいあるから、失敗覚悟で一個ずつ植えてみるか。ついでだし、ランダムのほうも試そう」


 しばし迷った末に、そう決める耕助。


 ついでだからと、何も植えない畑を十単位ぐらい耕しておく。


「これだけ用意すれば、最低でも一か所ぐらいは雑草になるはず」


 耕し終えた畑を前に、満足そうに全く期待していないと分かることを言う耕助。


 普通に考えれば半分雑草、一か所か二か所が作物の自生という結果になるのだが、自身の運だとそれすら上出来だと思っている様子がうかがえるのが涙を誘う。


「後は、籠罠の確認だな」


 まだシェリアは帰ってこないようだと判断し、海岸の籠罠をチェックしに行く耕助。


 河口のほうはちょっと遠いので、シェリアが戻ってから考えることにする。


「おっ、貝とエビがかかってる。こいつは昼飯だな」


 籠罠をチェックすると、なんと今回はウツボを一個引いただけであった。


 しかも、驚くべき幸運でエビは二匹、貝は六個も入っている。


 今までの成果を考えると、びっくりするほどの大漁である。


「さて、戻るか」


 再び罠を海に沈め、獲物の入った桶を手にえっちらおっちら戻っていく耕助。


 そのタイミングで、ちょうどシェリアも戻ってくるのが見える。


「……また、でかいのを仕留めてきたんだな……」


 シェリアがぶら下げているイノシシを見て、思わず乾いた声でつぶやく耕助。


 シェリアが仕留めたイノシシは、どう見ても耕助よりデカい、というより下手をすれば二メートル近くある大物であった。


「あっ、耕助さん。ちゃんと仕留めてきました」


「……ああ、お疲れさま。……なんかそのイノシシ、首筋にでっかい切り傷があるんだが……」


「血抜きのために切りました」


「……どうやって?」


「こう、手刀でスパッと。さすがに解体には使えない技なんですけどね」


「……そうか」


「あと、冷やす作業も魔法で終わらせました。これも、戦闘には使えないぐらいの威力なんですけど、肉の質をよくするのには便利なんですよね」


「……なるほどな」


 とても便利な能力を自慢げに説明するシェリアに対し、思わず遠い目をしながらそう返事をする耕助。


 あまりにもいろいろとかけ離れすぎていて、どうコメントしていいか分からなかったのだ。


「……じゃあ、ミッションを終わらせて、解体道具を確保だな」


「はい。そこからは、任せていただければ!」


「……本当なら、俺も練習しておいたほうがいいんだろうけど、たぶん邪魔になるだけだろうな……」


 シェリアの言葉に、そんな結論を出す耕助。


 結局、この耕助の考えは見事に当たっており……


「すげえな……。手を出す余地が全くなかった……」


〔・まあ、日本人の場合

 ・そういう仕事してないと無理なのはしょうがない〕


「というか、そういう人たちでも、ここまで簡単に終わるものなのか?」


〔・一部例外を除いて、解体用ナイフでやる場合は無理だと思う〕


「だよな……」


 ものすごくデカいイノシシだというのに、わずか十分ほどで解体してのけるシェリアであった。

あざとさと脳筋が同居する女、シェリア。

なお、脳筋なので計算でやっているわけではないというか、計算できる能力はない。

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― 新着の感想 ―
[一言] ミキサー車…普通に当たりでは?(素材的にw ボディ:鉄素材(パイプ状のものもあるはず) タイヤ:ゴム素材(加工が難しいか) シート:合皮素材(うまくいけば服作れる) フロント・窓ガラス:ガ…
[一言] 更新お疲れ様です。 >腕に押し付けられた大きくてやわらかくて張りがあり、奥に芯のような硬さが残る感触である。 つまりまだ成長の余地があるってことですね。 期待してますw シェリアには木の…
[良い点] ほんと―にうまい具合に外して来ますね(笑) 燃料手に入れられて、荷車作れれば徒歩よりも荷物運べそうですが、多分この先タイミング的に「それでもマシ」な時期は殆どないのでしょうね。 バラせる…
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