プロローグ 住所不定無職、異世界の無人島へ
というわけで新作です。
なんと、珍しくプロローグが1000文字ぐらいしかありません。
「まじかよ……」
最近いろいろついていない荒田耕助は、燃え上がるアパートを前に思わずへたり込んでしまう。
今日の夕食を調達しに三十分ほど留守にしている間に、彼は今着ている服と靴、財布とスマホ以外の財産のほとんどを失ってしまった。
幸か不幸か財布の中にキャッシュカードが入っているので、手持ちの現金以外無一文という状況は避けられたが、口座の中身も現状を打破するには心もとない残高しかない。
「……どうしたらいいんだよ、これ……」
消防自動車がアパートに放水しているのを眺めながら、呆然とする耕助。
アパートは既に、ほぼ全焼というしかないレベルで焼け落ちている。
このアパートに置いてあったものは、恐らく何一つ残っていないだろう。
最長で見てもたった三十分ほどでここまで燃えるというのもすごいが、そもそも耐震基準を満たしているかどうかも怪しい木造のボロアパートなので、ちょっとの失火で全焼という結果自体は納得しかない。
が、小火が原因で全焼する可能性は納得できても、それで衣と住を完全に失うことを納得できるかというとそんなわけはない。
「これ、補償とかどうなるんだろうな……。いや、それ以前に、住所不定だと就職活動、どうにもならないんじゃないか……?」
最近勤めていた会社が倒産して失業保険をもらいながらせっせと就職活動を行っている耕助にとって、住むところがなくなるというのはかなり致命的な問題だ。
そうでなくても三十五歳という絶妙な年齢ゆえにはなから募集要項を満たしていないことも多いというのに、住所不定となると絶望的としか言いようがない。
新たな入居先を探すにしても、保証人のあても収入もない今、いい物件が見つかるとも思えない。
最悪事故物件でも構わないのだが、そういう物件を探すにしても明日からになるだろう。
「……どっかで、買った酒飲むか……」
普段は金がなくて酒など買わない耕助だが、今日はなぜか目に入った大安売りのビール風アルコール飲料、いわゆる第三のビールとかああいう系統のものを買っていた。
なぜそんな値段だったのかは不明だが、輸入品の安い銘柄の缶コーラなどと同じような値段だったのでつい買ってしまったのだ。
一応被害者なのだからこの場にいなくてはいけないのではとちらりと思ったが、ショックが大きすぎてここにいるのもつらいのだ。
そうと決めたら、きっちりエコバッグを持ってそっとその場を立ち去り、徒歩二分ほどの距離にある近所の公園へ行こうとする耕助。
その公園に足を踏み入れようとして、なぜか意識が暗転し……
「ここ、どこだよ……。てか、太陽が二つあってクジラが飛んでるように見えるんだけど、見間違いか……?」
耕助はなぜか海岸に倒れていたのであった。
これ以上話を広げられなかったぜ(がくり
さすがに短すぎるということで、本日はもう一話、同時に投稿しています。