第六話 肉以外も喰む寄生虫
本日は二話投稿します。
二話目は午後五時に投稿します。
とりあえず知識の確認をしよう。
もしかしたら修行する必要がないかもしれないし。
「集中」
ありがたいことだが、一気にたくさんの知識を与えられた弊害に、集中して膨大な知識から魔法関連の知識を集中して引っ張り出す作業が必要なのだ。
普段は前世の記憶を補完するようにふわっとした知識を使っているだけで、魔力も本当に魔力と言うかは不明だ。
取説には「わかるように簡単に書いておく」と書かれていたから、多分違う言葉なのだろう。
「なんか歯切れ悪かったしなぁ」
まさか……使えないなんてことはないよね?
嫌だよ? 魔法がある世界で魔法が使えないとか。
「これは早く確認せねば」
──ふむふむ……。なるほど。
「使えはするのか」
ふむ……。そういうことねぇ。
「歯切れが悪かったのはそういうことね」
どうやら俺は「唯一の全属性持ち」にはなるが、現在は無属性だと。
さらに、無属性のうちは世界共通で魔法は使用できない。無属性魔法なんかないし、開発も無意味だから。
止めに魔法は王侯貴族たちが独占していると。
「買えってそういうことか……」
本来は迷宮から得られる特別な力として、神々が人間に与えたらしい。当然だが、上下など作らず平等に。
だけども、自分たちのことを特別だと思い込んでいる者たちは、特別な力を平等に与えるなんて馬鹿げていると思い、魔法を独占し始めた。
何故独占が可能なのかと言うと、魔法の習得は使い切りの魔導書を読み込むだけという道具ありきの習得方法だったからだ。
権力を使って魔導書を回収してしまえば、独占なんて朝飯前だろう。
じゃあバレる前に使ってしまえばいいと思うでしょ?
使えないのよ。
それに、魔導書は属性がないと開くことさえできないらしい。
つまり魔導書が手元にずっと存在するわけだ。
そこそこ大きく嵩張るものが。
貴族の関係者に見つかると危険なものが、ずっと。
邪魔でしょ?
奪おうとする人がいる反面、買い取ってくれる場所もある。
どちらがいいかと聞かれれば、間違いなく後者だろう。
貴族たちとしては独占できればどっちでもいいのよ。
買い取ってもらった場合でも二束三文にしかならないらしいけど、死傷するよりは小銭を手にした方がマシって考えらしい。
命が軽い世界で、わざわざ危険を犯すまでもないってことだ。
一応取り上げることを防ぐ法律が国際法としてあるらしんだけど、ほぼ機能していないらしい。
そりゃそうだって。
悪さしてるのも、法律作ったのも、同じ権力者だもん。
意味ないって。
本当に自分の我を通すなら、権力で潰されない以上の財力か武力が必要になってくる。
俺は武力を選ぶかな。
自分でなんとかできそう。
才能もいただいたしね。
「最強のデブも目指しますか」
その第一歩として竜の体内での修行を頑張ろう。
そう、留学……いや、竜学をする。
授業内容は多岐に渡るが、食育と錬金術に体育でほとんどの時間を費やしてしまうことだろう。
魔法系はあまりやることがないし、危険地帯で剣を振り続けるのもどうかと思うから、神様が勧めてくれた通りに錬金術を優先的に学ぶことにした。
「さて、武術も魔法も錬金術も、共通して理解しなければいけないことを習得しよう」
まずは、俺が魔力と呼んできたものについてだが、半分だけあってた。
自然発生して空気のように大気中に充満している力を【魔力】と呼ぶそうで、個々人が体内に保有している魔力的な力を【命力】と呼ぶらしい。
魔力についてに話は少し横に置いといて。
基礎となる命力の修行から始めよう。
命力の発生源は【命核】といって、魂に紐付けられたものが心臓の近くにあるらしい。
一部の人には禁句らしいが、ちょうど魔物の魔核と同じようなもので、言い換えているだけなんだとか。
そしてこの命核が重要で、命核の質や容量は元より、型なんてものがあるそうだ。
デュー君を例にして言えば、彼は【陽型命力】の所持者で、炎、風、陽型寄りの地属性の魔法のみ使用できる可能性があった。
加えて、才能があれば【生命魔法】という回復系の魔法も使用できたかもしれない。
ただ残念ながら、現在は無属性のままだから当然無理。
それに可能性というだけで、全部を取得できるわけでもない。
一つの型で最大四つまで。
英雄のような傑物が四つ。
才能がある者が三つ。
炎と風の二つでも優秀な部類。
普通に努力すれば炎か風の一つは属性を得られる。
まぁ属性を得られても、魔法は買わなきゃ使えないんだけどね。
では、何で取得する必要があり、属性を得ようとするのか。
それは、魔法の他にも命力を主軸にした手段があり、属性の有無が大きく影響するからだ。
こちらは魔法になぞらえて【闘法】と言い、王侯貴族以外の戦闘職はもれなく使用しているらしい。使用者の中には王侯貴族もいることを考えれば、戦闘職にとって必須の技能だと言っても過言ではないかもしれない。
「これがあるから、魔法を売り渡すんだろうな」
使える武器があるからこそ、使えない武器には固執しない。
武器がなければ何としてでも使えるようにするだろうが、そうじゃないなら権力者の不興を買わないように動くことが賢い世渡りの仕方なのだろう。
「俺は嫌だけどね」
だって魔法だよ?
自分で使いたいじゃん。
せっかくの全属性だもん。
そうそう。全属性についてだけど、俺は【陰型命力】だから水、金、陰型寄りの地が使えるそうだ。
しかも才能持ちだから、十全な地属性と生命魔法に、陰型固有の【魂魄魔法】が使えるらしい。
なお属性は、炎、風、地、水、金の五つで、生命魔法と魂魄魔法には固有の属性はない。
必要なものは、地属性と才能だけだ。
俺は地属性の部分がデュー君と連結していて、他は分離状態にあるらしい。
所謂ひょうたん型というもので、命核自体は二つ保有していることになるらしく、魔力の保有量が単純に考えても常人の二倍。
さらに、陰陽別々の属性の命力を同時に扱うことができるハイスペックなデブでもある。
「これでデブじゃなかったらなぁ……」
一生デブっていう事実は、コンプレックスというよりも呪いだな。
全てにおいてマイナスに考えてしまう。
プラスに、ポジティブに考えよう。
「唯一のメリットは、ダイエットとという無駄時間を過ごさなくて済むってことかな」
だって、どうせ痩せないし。
忍耐力を習得できる以外に実利はないし。
「下手に痩せるって言われなくてよかったかも」
うんうん。そうだ。きっとそうだ。
閑話休題。
今後のことも考えて命核のことをおさらいしておこう。
命核の質は属性取得に関係し、魔力操作で質の向上は可能でも属性は増えないと。
容量はラノベで言うところの魔力量とかかな。
命力を増やす手段はいくつかあるが、命核の容量を拡張する手段はあまり多くないらしい。
これが闘法における一番のネックではないかと思う。
自分が保有している命力しか使えない闘法に対して魔法は、命力を呼び水に魔力を使えるから継戦能力が高い。
基本的に威力が高く射程もあって、継戦能力も高い魔法。ついでに才能があれば回復もしてくれる。
そりゃあ独占するって。
平民に持たせて反逆されたら一溜りもないもんな。
まぁ命核の容量を増やして命力の保有量を増やすことは魔法士たちも避けては通れないらしく、そのための修行環境においても竜の体内というのは最高みたいだ。
というのも、喉の上の方に鎮座し間接照明のように体内を照らしてくれる代わりに熱気を発する灼熱のシャンデリアは、【霊物】と呼ばれるとてつもなく高価な素材らしい。
どれくらい高価かというと、戦争を引き起こして奪い合うレベルだ。
仮に手に入れたとしても、怖くて消費できないけどね。
「使うべきなんだろうけど……もったいない気持ちも……」
灼熱のシャンデリア一つで金持ちになるという目標が達成できてしまうと思うと、ねぇ?
「……でも、多国籍連合軍に襲われるかと思うと……ポッケナイナイが一番かもな」
うん、先行投資をしよう。
「で、結局何に使うんだ?」
錬金術の知識では武具系が一番多く、次点で薬類が多かった。
ただ魔法の知識を引っ張ってくると、そのまま使うのが一番良いようだ。地竜が生きたままだと、消費と回復が繰り返される効果で活性化するらしい。
「魔力吸収……ね」
なるほど。属性も取得できるのか。
地竜クラスの霊物だと、命核の拡張に命力の増加が同時に行えて、素質があれば属性も取得できるらしい。
本来はそれぞれの属性に適した場所で瞑想をして、体内に魔力を取り込むことで命力と融合させられるらしい。
効率の良い順番もあるが、複数属性の取得可能者は少ないから形骸化されているとのこと。
俺は全属性を最大限活用したいから、順序を守るつもりだ。
まぁ普通の人とは違う順序らしいけど。
「地竜って……地属性でいいんだよね? そうなると……」
頭の中で順序の組み合わせを並び替える。
本当はメモしながらが良いんだけど、肉にメモするのはちょっとねぇ。
「たぶん……地、金、水、風、火の順番かな」
地竜の体内、金属を採掘できる洞窟、水辺、森、日光浴が候補地らしい。
洞窟が邪魔してないか。
後半楽な場所だぞ。
地属性も本来なら土に触れていればいいんだから、どこでもできる。
もちろん、それぞれ追加条件を達成する場所があれば質が良い魔力を得られるらしいけど。
「鉱山は基本的に権力者の持ち物だし、どこにあるかもわからん。とりあえず竜学期間を終えたら山に向かおう」
今は地竜学園の講義に集中しよう。
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