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転生したら豚農民だったけど、全属性持ちを活用してバラ色の人生を送ります  作者: 暇人太一
第二章 地獄への道は豚の善意で舗装されている
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第十四話 一寸豚児、旅支度をする

お待たせして申し訳ございませんでした。

 二度目の夢世界からの覚醒は爽やかとは程遠いものだった。

 前日の地竜との戦いもそうだが、大戦から解放された安心感により蓄積された疲労や筋肉痛が一気に溢れ出したのだろう。

 自身ではあまり感じない見た目通りの重さが体を襲い、その場から動くことを躊躇わせていた。

 天井がない洞窟みたいなところに隆起した岩がベッドらしく、全裸で寝るには向いていない。

 そんな場所から離れたいから、できればすぐに動き出したい。……が、体が動かない。


「とりあえず、紅の秘薬を飲みながらメモでも見ようかな。何故か頭が痛いんだよね」


 バックパックからメモを取り出し簡単に一番下まで読み進めてみたところ、想像していたよりすごいものをもらっていたらしいことが判明した。

 地竜を選ばなかった自分を褒めたい。


「行き先は予想通りだったな」


 元々頂いていた知識により、デブが生きづらい場所があることは知っていた。

 差別はどこにでもあるが、御国柄というものがある。

 バーベ村を領土に持つ国家は【豊穣国】と呼ばれ、食糧生産が強みの国だ。当然デブが多く、デブだから即差別とはなりにくい国らしい。

 対して、これから行く【迷宮国連邦】は、武術と闘法が人気の国であるためデブに対する風当たりは特に強いらしい。


 俺も思うよ。

 前世で運動が得意だというおデブさんは見たことないからね。

 百歩譲って、例え武術をしていたとしても肉盾役だろう。


「その国にこれから行くのか……」


 若干憂鬱になるが、武闘神様のお勧めの場所だ。

 是が非でも行こう。


「国や貴族とはあまり関係ない道場らしいし、基本的に平民なら組手でやり返せるかな?」


 二つ目の地図は、スマホのマップが紙の地図になったみたいな感じといえば良いのか。

 とにかく全体的に茶色の巻物を開くと自分を示す赤いピンが立ち、ピン自体が動くらしい。これは出発するときに確認しよう。


 三つ目の対価は、目玉商品である地竜の知覚と知識。

 絶対にしたくないし、やり方がわからないけど、地竜の脳は霊物らしく吸収すると地竜の知覚と知識が得られるらしい。


 頭痛の原因が地竜の知覚と知識による負荷だということは判明したが、何故このようなものを頂いたのだろうかという疑問が湧いた。

 もちろん、それもメモに書かれている。


 そもそも地竜を討伐したということは偉業だと。

 そして地竜の体から得られるものは本来俺の権利なんだと。

 財宝やウ〇コに、転がっている素材も含めて武闘神様の許可は必要ない。

 使い方を知らなかったり持っていけなかったりというのは関係なく、他にも得られたものを取り上げておいて地竜の素材を対価とするのは公平ではない。

 でも、行き先や地図だけでは釣り合わない。

 ゆえに俺の役に立ちそうで、一番難度が高い処理を行う必要があるものを選んで与えてくれたそうだ。


 というのも、神様の贈り物には上限があるらしい。

 神様一柱につき、一度に三つまで。

 だから、創造神様の宝物も三つだったわけだ。

 才能とかは生まれる前につけるから関係ないらしい。


「まだ、よくわかんないけど。頭痛が治まったらわかるのかな?」


 メモを読み終わるころには秘薬の効果が出てきたため、なんとか動くことができた。


「何からやるかな。大変だけど、素材を一箇所に集めようかな」


 ついでに住処の掃除を兼ねた仕分けも行おう。

 そこら中に財宝や素材が散らばっていて、何があるか全く分からない。

 すぐに出ていくから汚くてもいいけど、簡単に来れる場所じゃないからこそ見落としはしたくない。


「明るい内に外からやろうかな」


 洞窟の中から天変地異の様子が見えていたけど、洞窟は天井以外無事だ。

 天井も洞窟内の様子から、元からの可能性が高いけど。

 どちらにしろ外の惨状を見ると少し胸が痛む。

 地竜にではなく、山に対して。


「環境破壊だもんなぁ」


 何かできることはないかと思いながら、比較的無事な洞窟周辺に素材を集めていく。

 作業の最中に思ったことだが、地竜の体内に入ったところから現在に至るまでの流れが「一寸法師」に似ている気がする。

 一寸法師の方が平和的だったけど、最後に財宝を手にする機会を得たところは大差ないと思う。


「俺は一寸豚児とでも言うべきかな」


 自分では上手いこと言ったと思ったが、評価してくれる者は居らず。

 虚しさを噛み締め、ただただ鱗を拾い続けた。

 途中心が折れそうになったけど、なんとか目立つ大きさの素材は集め終わったと思う。

 しかし集めたところでっていう問題はある。


 デブが竜種の素材を使った装備を身に着けているところを想像すれば、それがどういう結果を生むのか考えるまでもないだろう。

 難癖をつけられて奪われるだけだ。

 では何故集めたのかというと、第三者が調査に来たときに拾われたりしたら嫌だから。


「どうするか考えよう」


 その間に宝物の物色でもしようか。

 肥溜めのように臭かった胃の内容物も、武闘神様がサービスで洗浄してくれたし、ウ〇コとは別のところに置いてくれていた。

 始めは臭いからいらないと思っていたが、洗浄済みなら話は変わってくる。


「基本的に鉱物系が多いけど、地竜の胃酸で溶けないというのはすごい」


 錬金術で精錬して持っていこうかと思い、落ちていた枝を旗のように立ててキープの目印にする。

 他の目ぼしいものは魔導書が二つと、巨大な水晶の塊みたいな茶色の巨岩があった。


「嬉しいけど、アレがない。……貨幣が」


 これからデブに優しくない人里に行くのに……。

 売れるような、面倒を呼ばないような素材を道中で採取していかないと。


「まずは念願の魔導書でしょ」


 黄色の表紙から察するに地属性の魔法だ。

 地属性の魔力を吸収した今では習得可能だが、正確に言えば両方を習得できる理由は俺だからこそらしい。

 というのも、地属性は農業系の陽と狩猟系の陰とで分類されている。自分の適性によっては地属性でも使えないものがあるという。


 今回発見した魔導書は《土塊操作》が陽で、《岩石操作》が陰らしい。

 ともに三星級の魔法で、初級魔法に分類される。

 この三星級というのが重要で、たとえ地属性の適性があったとしても三星級に達していなかった場合、魔導書があっても使うことすらできないらしい。


 測り方は簡単。

 生来の魔力吸収前の命核が、零星級。

 生来の命核に魔力を吸収させた状態が、一星級。

 生来の命核の周囲に小さな星が一つ回っている状態が、二星級。ちょうど惑星と衛星の関係に近いかな。

 そこから一つずつ増えていくごとに、一つずつ星級が上がっていくらしい。


 ちなみに俺は二星級。

 本来ならば習得できないわけだ。


「だがしかしっ。神様と地竜に感謝をっ」


 特殊な肉体がある上で、俺の工夫により偶然獲得した【竜核】が素晴らしい能力をもたらした。

 神様もその特殊性を認め、この能力に名付けまでしてくれた。

 その名も【全地全能】。


 現状地属性に限り、星級による制限は消滅。

 人間が習得可能な地属性魔法は、習熟も含めて難易度がかなり下がるらしい。

 もちろん、地竜の魔法も鍛錬次第で使えるようになるらしい。


 つまり、どちらも習得可能であるということだ。


「いやぁ~苦労が報われるなぁ」


 睡眠不足になりつつも連戦した日々が、本当に自身の血肉になっていると思うと感慨深いものがある。


「さて、やりますか」


 魔導書の使い方は叡智神様からの知識によって付与されており、命力を込めながら開こうとすればいいらしい。

 可能なら魔導書が開き、魔法陣が吸収される。

 不可能なら魔導書は開かない。


「──おぉぉぉぉっ」


 普通の本のように簡単に開き、魔法陣が本の上に現れて光ったと思っていたら、あっという間に消えた。魔導書もろとも。


「大願成就っ! 魔法ゲットだぜーーーっ!」


 ただ、魔法を使えるようにはなったが魔法士とは呼ばれない。

 魔法士の条件は二星級以上で、一つ以上の攻撃魔法の習得が必須条件だからだ。

 今回習得した《土塊操作》と《岩石操作》は、地面を掘ったり鉱石を探知したりと土木作業に向いた魔法だから、罠等の攻撃に使えたとしても攻撃魔法ではない。


 闘法士でもないから、結局何者でもない。


「いや、豚法士ではあるかも」


 と、くだらないことを自問自答しながら茶色の巨岩を知識から引っ張り出す。

 すると、巨岩は塩の塊だということがわかった。

 今までは自分の汗から塩を精製して凌いできたが、ついに念願の塩を獲得できたのだ。それも竜種も好む高級岩塩である。


「今日は一泊してハツ刺しと焼肉だっ」


 その前に大きくて使いづらいから細かく割らないといけないけど、ごちそうが待っているとわかっていれば頑張れるというものだ。

 問題は何で砕くかである。

 試しに折れた竜角で叩いてみてもびくともしなかった。


「武術の達人だったら剣で切れるのかもしれないけど」


 一番確実な方法は、錬金術師なりきりセットの錬金盤を使って粉砕すること。

 幸いなことに、粉砕の魔法陣はある。

 だが、使ったことがない上、サイズが合わない。


 蒸留器のときのように地面に書いてもいいのだが、粉微塵になったら砂から塩を回収する手間が発生する。


「うーん……。まぁやるか」


 宝物を使用しないで地面に描くという方法以外に思いつかず、また地面に直接描く形での錬金術は、宝物使った錬金術よりも精度が落ちるということが判明している。

 ならば、危惧しているような粉微塵になることはないだろうと思い、この方法を採用することにした。

 希望的観測によるものが根拠となっているが、自信はある。


「錬金術をするなら他のもやっちゃうか」


 まずは巨岩の粉砕。

 これは予想通りバレーボールくらいの大きさに割れ、錬金盤に載るサイズになった。

 次は胃の中の鉱石や住処の鉱石を精錬し、バックパックに収納する。数量が多かったこと以外は特に問題なく済んだ。

 三つ目は、見て見ぬふりをしてきた大蛇の死体とウ〇コの山だ。幸いなことに地竜の素材ということで、竜糞堆肥の製作方法も知識としてある。


 そこに大蛇の素材を混ぜて竜蛇堆肥を作り、荒れた地面に撒けば緑化できるのではないかと思いついたのだ。

 バーベ村以外の人にも竜糞堆肥を渡したくないから、個人的にはかなりいい考えだと思っている。


「そのためには水源を確保しなければ」


 地竜の住処には元々水源はなかったみたいだが、今回の天変地異のおかげでクレーターのいくつかが泉となりつつあるようだ。少しずつ水嵩が増えている気がする。


 上手く行くかわからないけど、穴掘りに向いた魔法を手に入れたから後押ししてみよう。

 

「ちょうど魔法の練習もしてみたかったしね」


 地属性魔法は基本的に大地の力を借りることから、地面に体の一部をつけて発動することが条件とも言われるほど基礎的な常識となっているそうだ。

 なお、規格外の俺には不要な行動だが、今回は初めての魔法発動ということで基本に忠実で行こうと思う。


「ってことは、手の方がいいかな」


 今も全裸だからそのまま立っていても足の裏が地面についているけど、手のひら以外からの発動は達人の域にならないと難しいらしい。

 少し面倒だが、仕方がない。


「なんか……手を着くと豚みたいに見えてる気がする……」


 周囲には誰もいないけど、客観的に見た自分は豚なんだろうなと思うわけだよ。

 しかも、片手だと体重を支えられないから両手をつかざるを得ない。それがなおさら豚に見える要因になっていると思う。


「──《土塊操作》」


 脳内から豚の映像を追い出し、泉の底に穴が開いているという結果を想像して魔法を発動した。

 発動に際して、命核から命力を引っ張り出し、大気中の魔力に命力をくっつけるように意識する。自分の中で繋がったという感覚が生まれたときに、結果を想像して魔法を発動する。


 ところで、魔法を使用する上で忘れてはならないのは恥ずかしい詠唱。

 魔法陣が第三の目と呼ばれる辺りに吸収されたことで発動だけに焦点を当てた場合、詠唱は特に必要としないらしい。

 でも慣れないうちは詠唱したり魔法名を言ったりすることが推奨されているし、結果の細かい設定を決める上で詠唱は重要らしい。

 慣れれば魔力操作だけでイメージ通り発動するらしいが、こちらも達人並みの熟練度を必要とするらしい。


 是非ともその域まで行きたい。

 せっかく応用が利きそうな魔法なのに、魔法名を言ってバレることを思えば使うことを躊躇ってしまうはず。

 無言発動が可能なら、土下座しているときにでも仕返しができるわけだ。


 ──最高じゃんっ!


 土下座という本来屈辱的な時間が、仕返しし放題という御褒美時間になるのだ。嬉しくないわけない。

 デブを土下座させて喜ぶ下衆は少なくないみたいだし。


「おぉぉぉぉっ。じ、地震だっ!」


 と思った次の瞬間、巨大なクレーターの底から水が噴き出してきた。

 空高く噴き出した水は雨のように周囲を濡らしつつ、クレーターに水を注いでいく。その勢いは凄まじく、今にも溢れ出しそうになっている。


「冷たっ!」


 俺の体もウ〇コも同じように水を浴び、湿るどころかずぶ濡れになっていた。が、溢れ出したらずぶ濡れで済みそうにないため、急いで人工河川予定地と繋げる。

 この人工河川は地竜のブレスによって造られたらしく、四方八方に向かって溝が掘られている。


 今回は、他を埋め立て南側の溝のみに水を流す予定だ。

 理由はいくつかある。

 順番に挙げていく。

 一つ目、一番長く遠くに続いていそうだから。

 二つ目、あわよくば船で一気に森を縦断できるかもしれないと思ったから。

 地竜の巣穴の近くに、少し修理すれば使える手漕ぎボートがあった。それを使えば危険地帯を歩く必要もないだろう。


 そして三つ目、他を封鎖すれば水の速度を維持できるはず。

 いつまで湧いているか分からないわけだから、水はできるだけ節約したい。


 仮に下流に水害が起きたとしても、そこは大樹海の中だから問題ないと思っている。

 未だ森林火災が収まっていないところもあることを考えれば、消化と防火になるのではないかと自己中心的なことを思いながら工事をしている。


 もちろん自己中心的という自覚はあるから、罪悪感を埋めるために緑化するときに必要になる小川を敷設した。

 大河川は竜工河川だったが、小川は豚工河川だ。

 豚竜大戦の影響で破壊された環境を当事者二人で直すという、当たり前だけど素晴らしい行為に少しだけ胸が温かくなった。


「地竜よ、和平条約の締結ということでいいかな? 賠償はもう終わったから、転生したら俺のことを忘れて幸せに暮らすと良い」


 緑化政策を行っているうちに勝手に地竜と分かり合えたと感じ、今頃武闘神様に説教をされているだろう地竜に冥福の祈りを捧げるのだった。





お読みいただき、ありがとうございます。

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