花と機械の少女は愛のボタンになって
私は女の子と会話をしている。
彼女は未来から来たというヒューマノイドロボットだ。
流暢な日本語で私と会話している姿は、一目でロボットだとは到底思えない。
「ねえねえ!なんか好きな花ある?」
花の化身とも言える私もまた、一目でそんな存在とは思えないくらい人間に似ている。
「うーん、やっぱり牡丹が好きだね!」
特に理由なんてない。ただなんとなく牡丹が好きだ。
「へぇ、牡丹かあ。」
彼女は牡丹を知っている。知っているから続きを返せる。
そんな単純なものであっても私は眼前のロボットを取り込みたい。
機械とひとつになって、より美しい花になりたい。
そう思った時、彼女の背中にボタンを見つける。
「これ何?」
「これ?ボタンだよ。スイッチって言えばいいのかな?」
「ふーん。」
考える間もなく、私はそれを押した。
「あっ、体が火照ってきたよう。」
その機械は私を弱く抱く。
顔を赤らめながら、私に口をつける。
「私、ボタンを押される前から、君のことを花だって分かっていながら好きになってた。
君とひとつになるためにやって来たんだから。」
未来の機械は、一目惚れさえするんだ。
なんて賢いんだろう。
彼女の言葉で未来の知性を理解した私は、尻尾のようになっている私そのものから花を咲かせ、からだと彼女を取り込んでいく。
本能的に、彼女が欲しかった。
彼女は自身がぐしゃぐしゃにされると分かっていながらも、抵抗することなく私を抱き締め続ける。
数年後、私たちはひとつになれた。
時間はかかったけれど、私は機械と完全に融合した全く新しい植物になった。
「おはよう、今日も元気に過ごそう!」
「おはよう、私!」
ひとつの口からふたつの声が、交互に出る。これが今の私たち。
あたたかいお日様のもと、光合成と太陽光発電を同時に行っていく。
「今日も新しい花を咲かせたよ!」
私の花は、牡丹に限りなく近い、半機械植物だった。