BAD END LOG03「水の毒に溺れよ」
こちらは第3章14-1「Choose One(Level 2)」のBルート(ifルート)になります。ご注意くださいませ。
ここまでの会話の流れは、さらに一つ前の第3章13「プレイバック・アクアリウム編1」から読んでいただければ幸いです。
『あぁ、そうする』
オレだってこれ以上顔を見たくないと、すぐさま豪華牢屋へと駆けていく。別にこちらから話題を提供する事もないのだ、向こうから会話を打ち切られたら早々に立ち去るのが吉だろう。
それを止める声も、聞こえないのだから。
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こうして戻ってきた豪華牢屋は、マイティの自動人形に壊される前の整った状態でオレを待っていた。
何故?と疑問符を何個も膨らませるも、それを解消してくれそうな女神様は音信不通。全てを見ていたというレイラさんたちも、口を揃えて『オレがやった』と言うのだから、その記憶がないオレには気持ち悪い疑問でしかない。
いくら夢という便利ワードで片付けた所で、オレの中の疑問が解消される訳ではない。実際、夢でも見ているのではなかろうかと頬を抓ってみても、返ってくるのは当然の現実だった。
『オレにそんな超常的な力がある訳ないだろうが…ハァ』
崩れかけた天井や、壊れた調度品はすっかり元通り。以前オレが記憶していた場所に、それらが何事もなかったように収まっている様は、ある種の恐怖すら覚える。
成程、暗殺者が肩を組んでこちらに寄ってくるのも納得がいくというものだ。得体の知れない力をいつ振るわれるか分かったものではない、ならば懐柔してしまおうというハラなのだろう。
『こういう時は寝るに限る。うん、そうしよう』
人間関係のナワバリ争いはもうコリゴリだ、学生時代の派閥争いなんて思い出したくもない。蚊帳の外で可哀そう?結構、人の道さえ外れなければ案外楽に過ごせるものだ。爆弾を抱える数年間を送らずに済んだとポジティブに考えようぜ、これ年長者からのアドバイスな。
それに、整えられたベッドがオレを呼んでいる。…思い返せばここ数日、デスゲームさながらの恐怖体験の渦中にいたのだ。先ほどの飲食も相俟って、脳が休息を欲しているのも無理はあるまい。
疲れきった身体をベッドに滑り込ませ、どうにか堪えていた帳を下ろす。オレの意識が潜航を始めるのは、時間の問題だった。
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ふと、何かのキッカケがあって突然起きてしまう事はないだろうか。オレはよくある。
例えば幼少の頃、罰として朝早くから文字通り叩き起こされて参考書に齧りつかされた時だったり。例えば身体の芯が凍えているのに、脳と身体の表面が沸騰して動けなくなった時だったり。
例えばーー
『んぶッ、ごぇッ』
喉を焼く赤黒い濁流が、オレの口から溢れ出る。吐き出し終わったと思ったら、更に第二陣、第三陣がオレの身体を拒絶するように流れ出ていく。
『は…、ひゅ』
幸か不幸か、込み上がってきた血は全て吐き出せたらしい。窒息するよりはマシだったろうと前向きに考えようとするが、どうやらオレの思考も先の熱に溶かされてしまったらしい。
呼吸の仕方を忘れたように、息が苦しくなる。身体の節々が痛い、焼ける、頭が痛い、汗が凄い。タチの悪い風邪でも引いたのではないかと錯覚したが、しかし同時に何となく察した事もある。
オレは、あの祝勝会の席で。毒を盛られたのだと。
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………………
………
あぁ、ようやく現実に時間が巻き戻ってきた。ここまで戻るのに、ほんの少しの時間だった筈なのに。何故こんなに時間が掛かってしまったのか。
多分、これが今際の際だからだ。この世界から去らなければならないオレへの、ほんの一掬いの真実を神様がくれたのだろう。
そろそろ見慣れてきたこの石の天井も、これで見納めか。最後に、レイラさんの顔だけでも見たかったが…それは過ぎた願いか。
「すみ…せ、レイ、ラさ」
受けた恩を仇で返すなと、何度オレ自身を呪えば気が済むのだろう。三つ子の魂百まで、自らの過ちを繰り返す愚か者には耳の痛い言葉だ。
だが、失敗もこれが最後だ。もう二度と、オレ自身を呪うこの言葉を、使う事はないのだから。
(ちく、しょ)
遂に言葉を作る機能さえ溶かしてしまったオレの脳は、それを合図に命の幕を下ろしていく。
世界から色が失われ、音が消える。まるで深海の底に潜るように、オレの意識も世界から消えていった。
(BAD END LOG03「水の毒に溺れよ」)
●今回の選択ミス
ズバリ、取り込んでしまった毒を放置してしまった事。主人公君の死因は、これに尽きます。いつ毒を盛られたのかって?それについては、正史の方をご覧くださいませ…。
別件に掛かりっきりになる為、レイラの浄化は間に合いません。…毒とか浄化できそうな白い外套があるじゃない、だって?こちらも、とある事情の為にレイラさんは魔力充填をしていません。故に、別の解毒方法を探す必要があります。
また今回の記憶再生は、どう足掻いても避けられない運命となる為、「いつ毒を盛られたのか」は重要にはなりません。盛られてしまったものを、「どうやって解毒するか」に重きを置いて考えていただければ。
毒が回るまでの時間内に、誰と会話をするのか。これが肝となります。
さぁ今こそ、女神様の「講義」を振り返る時間ですよ。
●復元された豪華部屋
「“悪魔”」と繋がった時、過剰に余った魔力の消費法をどうするか…というお話を先日させていただいたと思います。その答えが、廃墟一歩手前にまで成り下がっていた教会の復元です。
主人公君が記憶していた、無事な頃の教会をそのままトレースする、禁断の復元法。膨大な魔力を消費しますが、その記憶の中にあるモノなら完全復元できます。
ただし、記憶から抜け落ちていると復元できず、記憶違いを起こしていると復元に失敗します。これ、本当に「“悪魔”」のタロットの力なんですかねぇ…女神様?
この光景を目撃していたマイティ以外の暗殺者たちには、「絶対に公言しないように」と強くマイティに釘を刺されたとか。
…口外してはならない、というのは妙な話。何か、弱みでも握られているのでしょうか?
それはそれとして…。拠点として今後も長く使用するクライムハート教会、どうせなら心地良く使いたいものですね。折角元通りになったのですから、自分好みに少しずつ形を変えていくのも良いかもしれません。
…なおヒロインちゃんの外套を、崩壊したこの豪華牢屋の中で、第2章終了時点までに回収できていない場合は復元に失敗する為、将来的な詰みポイントになります。ヒェッ。




