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夢渡の女帝  作者: monoll
第2章 眠れる森と焔の夢
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第2章23「演目1:黒い星が隠すは」

 カタカタと不気味なガラクタたちの振動音わらいごえが聞こえなくなっただけでも、オレの心の容量キャパの大部分に余裕が生まれたらしい。動悸が収まらない心臓を無理やり押さえつけ、すっかり固くなってしまった首の緊張を少しずつ解かしながら、周囲の様子を窺ってみる。


(終わった、んだよな?)


 天井の先で魔法なにかが着弾する度、牢屋へやに反響する破壊音と振動がオレの体と心を縮めていた事すら懐かしく思う。現実の時の流れと体感時間の差をどうにか脳内で埋め終わった頃、ようやくオレは大きく息を吐いて命を拾った事を確認した。偽マイティの襲撃で半壊した地下牢に、ようやく平穏(静寂)が戻ってきたのだ。


(レイラさんたち、無事だと良いけど…)


 このまま生き埋めにされるのではないかと不安がよぎり、つい脱出の足を止めてしまった失敗は、何とか首の皮一枚分繋がっただろうか。

 本来はソレイユと、階段手前おくの牢屋の前まで同行してもらい、階段を駆け上がって礼拝堂で合流する算段だった。ところがソレイユと別れた直後、あの女神様たちの魔法の撃ち合いによる衝撃の連続で階段が崩れてしまったのだ。

 向かい側の地下牢に渡っても良かったのだが、礼拝堂ちじょうから落ちてしまった豪華牢屋ここなら、逆に上階の様子を音で窺い知る事ができるからと。脱出よりも留まる事を選んだのだと、声を大にして弁明したい。…決して、センチメンタルな理由(心細かったから)ではないぞ。他にも理由はある。

 そんな背景があり、こうしてオレは豪華牢屋の中に未だ引き籠っている訳だ。そして引き籠りのサガなのか、レイラさんを始めとした面々が全くこちらを窺う声が聞こえない事に、小さな心臓に一抹の不安どくがシミを作っていく。そして、一度でも気になってしまったら不安どくの廻りも早くなるというもので。


(様子を、見にいくしかない…か)


 白い外套を羽織り、意を決して引き篭もりから脱する。そして、オレが向かい側の地下牢に渡りたがらなかったもう一つの理由と向き合った。

 オレの視線の先には、今にも崩れ落ちそうな隠し通路。偽マイティの破壊活動と地上の戦闘による衝撃を経てもなお、通路の原型を辛うじて留めているそこを、通るか否か。


 まず冷静に考えよう。こんな危険な道を、オレの命を賭けてまで渡りきる胆力と走力がオレにあるのか?答えはノーだ。奇跡的なバランスで体裁を保っているだろう隠し通路とその入り口に、衝撃を加える事なく渡りきる自信がオレにはない。

 では他の選択肢はあるか?この答えはイエスだ、ここよりまだ耐久性が信頼できそうな他の牢の隠し通路を使えばいい。その先にある階段を使えば、問題なく礼拝堂まで辿り着く事は可能だろう。しかし、その選択肢にも問題があった。


(隠し通路の入口ってどこなんだ…?)


 そもそもこの豪華牢屋の隠し通路も、偽マイティによって偶然壊されたから判ったのであって、本来の開錠法ギミックはオレの知識の外だ。当然、他の牢屋の隠し通路の開け方を知る術もない。こんな事なら、ソレイユから開錠法を聞いておけば良かったーー。


「って、そうか!ソレイユが使った通路を追っていけば!」


 考えてみれば、その方法を知っているソレイユが開けた、隠し通路に通じる扉の後を辿れば良いだけの話じゃないか。

 何故こんな簡単な事も考えつかなかったのか…と、パニックに陥っていた少し前のオレに文句を垂らしながらも、頭と足は潰れた階段の近くにある牢屋へと早速向かっていた。脳内反省会は後でいくらでもできるからな!


              ☆ ★ ★ ★ ☆


 心の余裕が生まれただけで、盲目していた周囲の状況も少しずつ観察できるようになってきた。相変わらず崩れた壁や抉れた床でつまずかないよう、細心の注意を払いながら目的の牢屋へやまで意気揚々とやってきたオレは、しかし探し始めてたった数分で調度品から飛び出てきた怪しげなボタンたちに頭を抱えていた。


(脱出ゲーム的なアトラクションをさせられている気分だ…)


 あの手のゲームは、必ず近くに脱出の為のヒントが隠されているものだ。いくら窮屈さを紛らわせる為に調度品を並べるような、現実世界のもてなしの概念も真っ青な牢屋(へや)であっても、閉じ込めておく必要のある人をコッソリと脱出させるような設備ヒントまで充実しているとは思えない。


(火、水、風、土の紋様、かな。昨日レイラさんが話していた『恩恵のメジャーな属性』が並んでいる)


 幸い、直前にソレイユがとあるボタンだけを触っていたらしき痕跡があるので、そこから答えを導き出すしかないだろう。



 果たしてソレイユは、このボタンを何回押したのか。皆は、分かるだろうか。

皆さまも、主人公くんと一緒に考えてみてください。

ヒント?意味ありげなホシって何か気になりますよね。同じ模様がこの章のどこかにもあったような…?


解答編は近い内に投稿します。この問題も、解答もメタ的な視点でしか分かり得ないので、解説はありません。「そんなものか、へ~」と流していただければ幸いです(予防線)


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●突然読者にクイズもどきを出すなよ!

この作者、たまに思いついたように色々な事に手を出すので、生暖かい目で見てやってください…。解法は次話の後書きに載っています。


因みに作者が久々(2024/2/21)にこのページを開いた時、答えがすぐに出てきませんでした。やっぱりクソ問題じゃないか!

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