第1章閑話3(”ヤツヨ”先生の独り言)
彼を再び夢世界へ送り返し、残ったボクは一人背もたれに背中を預ける。ギシ、と音を立て、目を閉じながら懐古の念に浸った。
あぁ、何もかもが懐かしい。この音も、風景も、そして”彼”と過ごした日々も。
「”彼”に似て、本当に世話の焼ける子だねキミも」
独り言ちながら、虚空から小さい石を取り出す。入射光の具合で色が変わる、虹を凝縮したような機械は、今も反応を示してくれない。…当然だ、あの極限状態の世界で急造した模倣品が、二度も奇跡を見せる筈がないのだから。
とはいえ、この世界でもタロットカードが起動できた事は僥倖だった。特に異物の中の異物の筈だが、これも精神構造の似ている者の夢に飛び込んだ所為かもしれない。
「幸い、ここには娯楽がある。想いを馳せる時間もある。だから、今はもう少しだけこのまま…キミの夢を見させてくれ」
今度こそ間違えない。ボクはかつて、”夢守”と称されていた機械を虚空にしまいながら、シフォンケーキと一緒に焼き上げた紅茶パンを口に運んだ。
●結局、あらすじの心の瑕について1章では何も語ってないじゃないか…
地の文で内心を表現する事はありますが、カケルの心の瑕はそれすら隠してしまいます。「カケルの年齢が30を超えている=心の経験をそれなりに積んでいる(瑕への対処法がある)」という事ですね。
実際、カケルの内心は汗だくです。特にレイラを始めとした女子たちとはおろか、会話する時も眼を合わせない程のコミュ障。本編中で指摘されない間、基本的にカケルは相手と眼を合わせようとしません。それっぽく見せているだけです。
社会人スキルの一つ、挨拶された時はネクタイ付近を見なさい。周囲に視線を合わせようとしない人、いませんか?




