断片13「No.Ⅵ:The Lovers」
幾多もの歯車が動き、摩耗し、そして命を終える。常に廻るそんな歯車の事を、ヒトは運命と表現する事がある。
無くてはならない存在が常に隣にある歯車たちは、すなわち結ばれる事を運命づけられた恋人とも言えよう。その歯車たちは、如何に距離を離されようとも、間に何を置かれようとも、その関係は変わらない筈だ。
しかし噛み合う筈の2つの歯車が、寿命でもないのに突然軋み始めたのだとしたら、それは一体何が原因なのだろう。
…異物を入れられた?それも答えの一つだろう。ではその場合の対策は何か、答えてみてほしい。
「だったらその異物を噛み千切る力で回せばいいんだよ!」
手を上げた少女はそう答え、空いた手を使って歯車の回転する速度を上げていく。想定しなかった答えと行動に、私が待ったと声をかける頃には…2つの歯車にヒビが入り、壊れてしまった。
一部の生徒からは悲鳴が上がり、気の利く生徒が箒と塵取りを取り出して掃除する。ため息をつく私の横で、少女は不思議そうな表情を浮かべ…やがて綻ぶ。無邪気な子供のように、その一拍後に少女はこう宣った。
「あーあ、壊れちゃった」




