第1章10-1「Choose One」
福音という言葉がある。良い報せ、という意味で使われる事が多いのだが、使い方によっては悪い意味で取られる事もある。例えば、異教徒狩り。される側からしてみれば災厄以外の何者でもないが、する側からしてみれば正義の行いと呼ぶのだろう。善意に満ちた人間と、悪意に満ちた人間では、同じ物事の感じ方・捉え方の傾向が全く異なるのだとか。
目の前の司祭は、間違いなく後者側の人間…善悪の倫理観が壊れた人間に違いない。さぞオレの今の悲鳴も、甘美な「福音」に感じた事だろう。
「カケル様、少し離れていてください。すぐに終わらせます」
レイラさんの冷静さが、今は心強い。奥の扉の向こうで行われた後であろう惨劇の数々を、オレと同じく想像したであろうに、それでもオレを守ろうとする意思を優先してくれている。それがとても嬉しく、何もできないオレ自身に腹が立った。
「…分かりました」
当然、武術に縁のないオレは下がる事になる。前に出続けていれば、あの赤い女神像に新しい血を提供するだけだ。
問題は、どこに隠れるか。周囲には会衆席がズラリと並んでいるが、あまり隠れるのには適していなさそうに思える。だが、まだ丈夫そうな柱のある場所まで離れようとすると、今度はレイラさんから遠くなってしまう。上手い塩梅の場所が見つからない。
…もう時間がない。オレの答えを出す時がきた。あの自称女神様の模範解答を聞く時間が惜しい。オレは咄嗟にーー。
Aルート・Bルートと分岐する為、かなり短めです。Bルートはこの後2時に、Aルートは後日の投稿になります。
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●本作の構成
お気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、タイトルに「断片」「閑話」と付いているものがあります。こちらは所謂寄り道のお話です。特に「閑話」タイトルの方は、ほのほの系の内容となっていく予定ですので、シリアスに酔った方はお口直しにどうぞ。
ただし、今回のように「Choose One」が付くものは、主人公君の行動次第で大きくルートが変わる内容となります。こちらは寄り道という訳ではありませんのでご注意くださいませ…。
●今回はどこがターニングポイントなの?
主人公君の、「ヒロインちゃんからどれだけ離れるか」。十分な距離を取る事は大切ですが、ヒロインちゃんは接近戦を主戦場にする上、防御は不得手。
対するファルス司祭は、ヒロインちゃんの弱点を良く知る間柄です。もしヒロインちゃんが背中を向けるような事があれば、即座に行動を起こすでしょう。
…そして、現在ヒロインちゃんは月の国・太陽の国どちらにも狙われる指名犯。出待ちも誰か居そうな気がしますね?




