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勝負下着は

智希との交際がスタートした雪那は……

 雪那は又ダイエットを始めた。

もう無理な節制は止め、堅実な運動療法にした。

後ろ歩きは体のバランス形成にもってこい。

スロージョギングは長時間走れる。

スロースクワットは下半身痩せに一番。

運動の前に、スチール缶。空でもいい、冷やして項に数秒付ける。



智希:『雪那はそのままがいい』

と智希は言う。

それでも、ぷよぷよお腹は見せらんない。

雪那は又頑張った。



雪那:「ん? ぷよぷよお腹、何時見せるの!?」

自分で自分に突っ込んだ雪那。思わず吹き出した。



(そんなのはずっと先!)

思わず照れ笑いをした雪那。



(でも勝負下着位は決めとかないと……)

雪那は密かに、イケないラブを想像していた。



雪那:「ぷよぷよお腹の解消は、力を入れて引っ込める」

新聞記事に一番簡単なウエストシェイプの方法が書いてあった。

ただ意識して、気を付けるだけででも効くと言う。



雪那:「うん、これだ!」

雪那は早速立ち上がった。






 その日の夕食はばっかり食べ。

最初に野菜ばっかり食べる。所謂ベジファーストだ。

食物繊維が、胃の中で余分な油分などを排出してくれる。もし乳酸菌の入った食べ物を最初に口にはこんでしまうと胃酸にヤられて効果が半減していまうらしい。

次に肉ばかり食べる。

最後に主食ばかり食べる。

そうすることで太りにくくなるそうだ。






 糖質オフもやってみることにした。

ハンバーグとステーキではステーキを選ぶと良いそうだ。

ハンバーグには繋ぎに炒めて甘味の増した玉ねぎや、パン粉などの糖質たっぷり素材が沢山入っているからだ。

その繋ぎを茸類に変えると栄養価も上がるそうだ。

乾燥椎茸をさらに天日に干した物を砕いて入れれば骨粗鬆症対策にもなる。

ざる蕎麦と掛け蕎麦では冷たいざる蕎麦に軍配が上がる。

冷たい物は消化され難くいからお腹も減らないからだ。

北海道のコンビニでは『おにぎり、温めますか?』と必ず聞くらしい。

北海道では温めるのが一般的なのだ。でも本当は冷たいままの方がダイエット向きなのだ。

市売の食品の表示で糖質オフ、糖類オフ、ノンシュガーなんて物がある。

糖類は砂糖やブドウ糖。糖質はその糖類の他にでんぷん質やオリゴ糖も含まれる。

だからダイエットには糖質オフを選ぶべきなだ。

ノンシュガーは砂糖が入っていないだけなのだそうだ。

社員食堂の定食も魚の煮付けより生姜焼きの方が糖質は少ないそうだ。

でも味付け一つで糖質は変わる。

煮付けより焼き魚。レモンを搾って掛ければ塩分も抑えられる。

デザートのプリンも果物のゼリーに比べると糖質は低いそうだ。

果物には沢山の糖類が入っているそうだ。

パスタはミートソースよりカルボナーラ。

生クリームとパルメザンチーズが入っていても、半分以上もオフになるらしい。 





 リンパマッサージに加え、糖質オフでのダイエットで雪那の身体はみる間に変わっていったのだ。

本当はそれだけではない。体操やエア運動も効果をもたらせたのだ。

エア運動は縄跳びの紐を意識する。何も持っていないのに手先をぐるぐる回しながら跳ぶのだ。

エアフラフープっある。腰に手を置き輪が回っているイメージでウエストを前後左右に揺らすのだ。

それは『そのままで良い』と言った智希に悪いと思ってはいた。

でも、ぷよぷよお腹では恥ずかしかったのだ。

お腹の芯を意識しながら動かすことで自然に細くなると雪那は思っていた。





 デパートの下着売り場に雪那はいた。

勿論、勝負下着を見つける為だった。



(どれも派手だなー)

雪那はいつも、見た目で可愛いブラを選んでいた。

でもここは一つ智希を喜ばせばようと、悩みに悩んだ末に黒を選んだ。




  雪那は帰り道思い出しては笑った。

そして時々袋の中を見る。

何度確認しても黒い下着。この勝負下着を使う日を頭の中で考えていると、急に自分の行為が愚かに思えた。



(そんなのはずっと先の先!)

もう一度言い聞かせる。



(まだデートもしていないのに……)

今度は落ち込んだ。智希との交際は開始した。でもまだ誘いを受けていなかったのを思い出したのだ。





 シュンとして歩いていると、いきなり後ろから抱き締められた。

驚いて振り向くと、悲しそうな智希がいた。

智希の頬に涙が走った。

智希はさっきからずっと雪那を付けていた。

立ち止まってはニタニタする雪那に気付き、遠くの方から手を振った。

でも雪那は気付かずに、相変わらず笑っている。

きっと側に親しい誰かが居て、楽しい話をしているのだろう。

智希は気が気でなかった。

それは誰なのか?恋人ではないのだろうか?

智希は急いだ。

そしてもう少しで追い付きそうになった時、やっと雪那が一人で歩いている事が確認出来た。




 雪那は突然の智希の行動にたじろぎ、持っていた袋を慌てて後ろ手に隠した。

雪那には、智希の涙の原因が自分にあるなんて分かる筈がなかった。

いきなり抱き締められて、雪那は激しく動揺した。



雪那:「どうしたの?」

それだけやっと聞けた。



智希:「だって……」

智希は言葉を見失った。

ストーカーの気持ちが少しだけ分かった。

好きになった人の後は追ってみたい筈。

迷惑とか考えるゆとりなんてある筈がない。





智希は黙ったまま雪那を抱き締め続けた。

雪那の手にした袋が、智希の手に触れた。

雪那が何度も確認した為なのか?

袋が少し破れ、中身が出ていた。

肩越しに確認すると、それは黒い紐のようだった。





 智希:「何、この黒い紐?」

悪気なく智希が聞く。

雪那は表情を曇らせた。

勝負下着だなんて言える筈がない。



雪那:「あ、母のプレゼント」

咄嗟に嘘をついた。



智希:「えっ、でも袋がボロボロだよ」

その言葉で雪那は慌てて確認した。

智希の言う通り、袋が破れ中身が出ていた。




 雪那は真っ赤になった。

事情を知らない智希はどうする事も出来ず、お道化るつもりで黒い紐をつまんでみた。

袋の中にあったのは、小さな紐パンだった。



智希:「えっ!?」

智希は黒い紐パンを手にしたままフリーズした。

雪那は慌ててそれを奪い返し、袋に押し込んだ。

その拍子に、袋はもっと破れ、一緒に入っていたブラが露出した。

余りの恥ずかしさに、雪那はとうとう泣き出した。





 智希には、抱き締める事意外出来なかった。



智希:「ごめん。ずっと後をつけていたのに、雪那気が付かないんだもん。心配したんだぞ」

智希の優しい言葉に、雪那はもっと号泣した。

何が起こったのかと、野次馬が二人を取り囲み始めた。

智希は雪那の手を掴み、其処から走り出した。





 なす術もなく、雪那をアパートに連れて行った智希。

でも暫くはノックも出来ず佇んでいた。



リーダー:「どうしたの?」

リーダーが突然ドアを開けた。

雪那は驚きの余り又泣き出した。

智希は仕方なく下着の入った袋をリーダーに見せた。



智希:「お袋さんへのプレゼントなんだって」

智希の言葉に反応したリーダーは雪那を見た。その一瞬で見透かされていると確信した雪那は袋も持たずに帰ってしまった。

恥ずかしくて何も言えなかったのだ。






 更衣室。

朝の挨拶を交わしてから、思い切ってリーダーの前に立った雪那。



リーダー:「あっこれ」

雪那が口を開く前に、リーダーが包袋を渡した。

中身は包装した下着らしかった。



雪那:「あっ、ありがとうございます」

それだけ言っただけで雪那は涙ぐんだ。



リーダー:「ごめんね、あの馬鹿」

リーダーはそう言いながら、雪那に近づいた。



(えっ!)

リーダーの内緒話に雪那は耳を疑った。



雪那:「えっ?」

それは嬉しい言葉だった。

雪那は咄嗟に聞こえなかった振りをした。



リーダー:「だからね。あの馬鹿本気なのよ。本気で雪那ちゃんが好きなのよ」

今度はもっと驚いた。

いつの間にか内緒話では無くなっていた。

聞き耳立てた先輩が不敵に笑った。



先輩:「ヘェー。そう。そうゆうー関係?」

雪那に迫る先輩。



先輩:「これ、何か言え」

肩で雪那を突つく。

雪那は頬を真っ赤にしながら、本当は嬉しいからかいに耐えていた。



リーダー:「ごめん、ごめん。さあー仕事が始まるよ。後は終わってから」

リーダーの一言で、場が引き締まった。



(流石リーダー!)

雪那は益々尊敬した。そしてそれは、憧れと言う形に変化して行った。

黒い紐パンは無事雪那の元に戻ってきた。

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