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カラーメモリー 【改稿前】  作者: たぬきち
カラーエブリデイ その4
49/59

49色 放課後補習時間

 僕の名前は日紫喜怜太(にしきれいた)。学年一位の成績を誇り勿論、魔導学も優秀だ。

 そんな僕は今、クラスメートの問題児達に勉強を教えていた。


「よーし、おわったー!」

「ぼくも」

「…ん」


 3人の問題児アカリ、クウタ、ミズキはプリントを終わらせたのかリラックスをし始めた。


「お、君達にしちゃ早かったじゃないか」

「もーレータわたしたちをバカにしてる?みくびらないでよね!わたしたちだってやる時にはやるんだよ!」

 三バカの筆頭アカリが訳の分からないことを言い出す。

「そうだね。がんばればなんとかなるってやつだね」

 三バカの天然クウタはバカのドンを担ぎ上げる。

「…ねむ」

 三バカの睡魔ミズキは今にも寝そうだ。正直こいつが一番何を考えているのか分からん。

「まあ、僕の教えが良かっただけさ。さて、君達の回答の確認でもしてみるとするかな………!」

 三人の回答を見た僕は眼に飛び込んできたものに戦慄した。


「…ねえ、君達確認したいんだがこれは本気で回答してるのかな?」

 僕は恐る恐る三人に確認するとアカリとクウタは何を言っているの?といわんばかりに首を傾げる。

「え?そりゃ本気でがんばったよ」

「そうだね」

「…めんどくさい」


 三人の返答に僕は目眩を感じ頭を抱え大きなため息をつく。ていうか一人まじめにやってないのがいたがそんなことはどうでもいい。こいつらやっぱり三バカだ…。


「大丈夫?れいたくん」

「どうしたの?体調悪いの?」

「…いや、気にしないでくれ原因は分かってるから」


 自分達が原因だと気付いてないアカリとクウタは本気で僕を心配する。


「さて、君達、とりあえず復習も兼ねて問題を解いていこうか」


 三人を椅子に座らせて問題用紙を見せる。


「そうだね…アカリ…この図形問題読んでくれるかい?」

「え?うん」


 まずは、アカリに自分の問題を読ませる。


「『線を付け加えて図形を完成させてください』」

「なるほど、文字はしっかり読めると」

「なに、レータ、もしかしてわたしをバカにしてるの?」


 アカリは頬を膨らませるがかわいいとも思わない…何故なら。


「それで君は何を描いた?」

「カラス」

「なぜ?」


 間髪入れずに僕はツッコミを入れてしまう。

 アカリの描いた図形問題は元々長三角形を指定された文に習い問題を解くモノのはずだか、何故か三角形の底辺の下に数本線を描いて足らしき何かを描いていた。しかも、これを『カラス』とこいつはいうのだ。


「……………」


 僕はもう一度しっかりとそれをみる。


「いや、どうみてもカラスに見えないのだか…寧ろ『ロケット』だよね。これ?」


 必死に努力したがどう足掻いてもカラスに見えない。


「ええー!?何いってるの!?ほら、ここみて!クチバシ描いてるでしょ?」


 アカリが指した三角形の中に確かに線が一本引かれていて小さな三角形が出来ていた。これクチバシだったのかよ!ちょっと考えて頑張って描いた線かと思ったよ。少し期待したのに違ったよ!


「いや、それはこっちのセリフなんだが?ていうか何で図形問題にクチバシ付け加えてるんだよ!」

 

 一人目でこれか…僕は少し目眩を覚えながら次の用紙を確認する。


「次、クウタいいかい?」

「うん」


 クウタは元気に返事をすると話を聞く体勢になる。この三人の中では比較的まともでちゃんと頑張っている分類だ。だけど…


「じゃあ、クウタ、この外文を意味をもう一度言ってくれるかい?」


 僕はとある外文を指差す。


「ほら、ここの『Jumpkick』これの意味は?」

「ジャンピングひじキック」

「それはどっちだい?」

「ん?なにが?」

「キックなのかエルボーなのか」

「え?とびひざげりだよ?」


 クウタは何をいっているのか本当に分かってないようだ。


「飛び膝蹴りは分かるかい?」

「うん、足を曲げてジャンプして攻撃するやつだよね」

「そうかそうかそこは理解しているんだね。安心したよ」

「?」


 クウタは頭の上にハテナを沢山浮かべながら首を傾げる。


「じゃあ、もうひとつ聞こう。君は何て言った?」

「え?それはジャンピング『ひじ』キック…あっ!」


 自分の言葉の可笑しさに気づいたのか頭のハテナマークがビックリマークに変わる。そして、頬をかきながら笑う。


「あはは、そういうことね」

「よく気づいたね。偉いよ」

「でも、かっこいいね!」

「え?」

「ジャンピングひじキック、なにかの必殺技みたいだね!人間生きてれば飛び膝蹴りをジャンピングひじキックっていい間違えることもあるよ!」

「前向きで何よりです」


 クウタの問題の間違いに至っては只の天然なのだろう。それをテスト問題に出されては困るが!


「ついでにもう一問いっておこうか。この文を外文にしろの問題をみてくれたまえ」


 もう一問クウタに教えておくことにしてその問題を指差す。


「『今、夜ご飯食べてる』これは君は何て回答した?」

「『今、ナイトライス中ナウ』」

「いろいろおかしいね」

「そうかな?」

「そうなんだ、ひとつひとつは間違ってないんだ。だけど、文になると意味が違うんだよ」

「ふーん、そうなんだ」


 次は一番のある意味問題児にいくことにする。


「ミズキ…この文章問題を見てくれ」

「…ん」


 ミズキはあくびをしながら返事をする。


「『この時、太郎はどう感じた?』」

「『しらない』」

「『この時の次郎は三郎の事をどう感じた?』」

「『次郎じゃないからしるよしはない』」

「『この家族はこの後どうなっていくと感じましたか?』」

「『興味ないね』」


「…なあ、ミズキ…怒らないから教えてくれ何故こんな回答になった?」

「…興味ないから」

「素直でよろしい!」


 僕は、一旦自分の席に座り落ち着くことにする。


「はは…教えるって難しいね」

「れいたくんが虚空をみつめている」


 僕は、しばらく現実逃避をすることを決めた。ていうか、脳筋お嬢様とモリメは何処に行ったんだ!うんこか!?


「あれ?」

「?」


 アカリが何かに気づいたのか声を出す。


「どうしたの?いろのさん」

「時計止まってるね」

「時計?」


 アカリにいわれ僕達は黒板の上に掛けられている時計を確認すると15時5分程で止まっていた。

 今が感覚的に恐らく16時前だとすると30分前後止まっていたことになる。


「まあ、単純な電池切れだろうね」

「なら、取って先生に渡しに行った方がいいかな?」

「それがいいだろうね」

「じゃあ、ぼくが取るよ」

「いや、君の身長じゃ机に乗っても届かなさそうなのと見ているこっちが心配だから僕が取るよ代わりにミズキと二人で机を支えててくれ。頼めるかい?ミズキ?」

「…ん」


 ミズキはそう一言だけ返すと机を時計の下に運んでくれる。こういうことは行動速いな。なんて思いながら僕は机に乗り時計を外す。


「ありがとう助かったよ」


 机から降りると二人に一言お礼をいって時計を確認すると時計の長い方の針が速く動き出した。


「え!?時計の針が急に速くなったよ!?」

「時が加速しだした!ということはもしかして!『天国へ続く道』かも!」

「ただ電波時計の電池不足で一度0時にリセットしてるだけだよ」

「なんだそうなんだ。てっきり『特異点』が関係あるのかと思ったよ」

「れいたくん詳しいね」

「まあ、詳しい訳じゃないが僕は隣町の商店街の本屋が実家だろう?その商店街の中にある時計屋さんが昔教えてくれたんだよ」

「へぇーすごいね」

「別にすごくないさ、他の人から聞いた事を言っただけだからね。とりあえず、職員室の先生に渡して来るよ」

「ありがとうお願いね」




「失礼しました」


 時計を先生に渡してそう一言いって頭を下げると職員室を後にしてそのまま教室に向かっていると微かに聞き覚えのある声が聞こえた。


「この声って…」


 声のした場所に行くと脳筋お嬢様とモリメを見つけた。


「君た…」


 声をかけようとしたけどモリメが勢いよく壁を叩いた。


「!?」


 僕は咄嗟に隠れてしまった。


「………」


 いや、何で隠れたんだ?自分でも自問自答しているとモリメの声が聞こえてきた。


「『悔しい』…」


「?」


 『悔しい』?何が?もしかして、脳筋お嬢様と喧嘩でもしたのか?僕はまったく状況が把握出来てないでいると今度はお嬢が口を開く。


「今の緑風さんがあるのはなぜだと思いますか?」

「?」


 クウタ?クウタの話でもしてたのか?


 お嬢は言葉を続ける。


「『家族』の支えがあったからですわ」

「家族?」

「緑風さんよく家族の話をしてくれました。母と兄は優しいとそれがあったからぼくは『頑張れた』と」

「ゆうちゃんとたっくん」


 その言葉で二人が何を話しているのかを僕は察した。クウタがその言葉を発した時、つまりその話をした時は『あの時』以外『ない』からだ。


「…まじか」


 お嬢がその話をしているということはモリメは『あいつら』と接触したということだ僕はかなり哀しくなってしまった。

 クウタは再開した幼馴染には知られたくなかった『現状』いつかバレると分かっていたけど思ってた以上に早かった。

 クウタは本当に『いい奴』なんだ。そんな奴が迫害される環境…自分のエゴかもしれないけど許せなかった。時折、見せる哀しい眼を僕は見たくなかった。


「この前お会いして確信しましたわ。今の緑風さんが優しくて明るいのはあの二人の支えがあったからこそだって…だから、それが少し羨ましいとも思ってしまいました」

「うらやましい?」

 

 


「魔力が一切ないわたくしは実はあまり貴族の家庭で上手くやっていけてませんでした。それでかなり辛い思いをしてひたすら努力の毎日ですが周りの知人はわたくしを影でバカにするだけ。ですが、彼だけは違いました。彼の言葉がわたくしを『救ってくれた』んですわ。そんなことが云える彼は家族から相当な『優しさ』を学んだのだと思いますわ」

 

 そこまで話すとお嬢は決意の籠った声でいう。


「わたくしを認めてくれた彼に報いる為にわたくしは彼を守ると決めましたわ」

「!?」


 お嬢の言葉を聞いた僕はその場を後にした。


 思いは『同じ』ということを聞いた僕は少し安心した。


「あ、お帰りレータ!」

「ああ」


 教室に戻るとアカリとクウタは補習問題を頑張っていた。しかし、その隣でミズキは寝ていた。


「て、ミズキ!何で寝てるんだい!」


 僕がいってもビクともしない。


「まあ、今は寝かしてあげようよ」

「まったく君は本当に甘いね」

「あはは…」

 

 僕がそういうとクウタは頬をかきながら笑う。


「まあ、だけど、君のその優しさいいと思うよ」

「え?」


 僕の返しが以外だったのかクウタはきょとんとする。


「なんだい?僕だって誉めるところは誉めるぞ」

「ううん、ごめんね、そうじゃなくてね」

「?」


 クウタは手を振りながら言葉を続ける。


「なんだか、今がすごく『楽しく』感じて」

「そうか」


 彼の真意は分からなかったけど笑顔でいうクウタに僕はそう一言だけ返す。


 そしていつか彼の中の『過去の哀しみ』を完全に消せればいいなと思った。

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