46色 幼馴染は思い出す
「なんだか、懐かし夢をみていた気がする」
上半身を起こしてベッドに座り直したクロロンはそういうとモリメさんの方をみる。
「ひさしぶり《はーちゃん》」
クロロンは満面の笑顔でいう。
「クウくん…!!」
モリメさんは感極まって泣きそうになっていた。
「よかったあ!!」
そして、クロロンに抱きつく。
「ひぐぅっ!?」
抱きつかれたクロロンは驚きの声をあげてベッドに倒れ少し青ざめた顔になる。
「は…はーちゃん…ごめん…えっと…」
青ざめていたクロロンをみたシアンとフラウムは慌ててモリメさんをクロロンから離す。
「モリメさん気持ちは分かりますが、緑風さんにはトラウマがありますので離れて下さい」
「記憶が戻っても触れられるのはまだ駄目みたいだね」
「ご、ごめん…」
クロロンは起き上がりながら謝る。
「あ、いや、わたしこそ嬉しくてつい…それと、改めてごめんね」
モリメさんは深く頭を下げる。
「ううん、ぼくこそごめんね。こんな大切なことを忘れるなんて本当にごめんね」
クロロンも頭を下げる。
「仕方ないじゃろう、魔法をかけられておったんじゃ、当然じゃろう」
おねえさんはフォローを入れる。
「でも、それでも悔しいんです」
「悔しい?」
「はい、魔法をかけられて忘れてしまうほどぼくの心が弱かったんです。だから、ぼくに《誰》っていわれたはーちゃんはどんな気持ちだったかと考えると本当に申し訳ないと思って」
クロロンは言葉をかみしめる様にいう。
「いや、クウくんは悪くないよ!悪いのはわたしで!」
モリメさんもクロロンをフォローする。
「なら、互いに《悪かった》でいいじゃないか」
「え?」
互いに自分を責め合う二人をみていたレータがいう。
「こう言っちゃなんだが正直互いが謝罪し続けるのを見てるとイライラするんだよね」
「メガネ!なにをいうんですの!?」
レータの発言にフラウムは怒るけどレータは気にせずに言葉を続ける。
「クウタ、キミが人を攻めれない性格だってことは分かっているよ。それがキミの優しさだってこともね。だけど、その優しさが時に相手を苦しめることも理解するんだね」
「…う、うん」
レータの言葉にクロロンはたじろぐ。
「互いに互いの悪かった所を受け止めるそれでいいじゃないか。人間誰しも必ず正しい行動が出来る訳ではないしね」
言葉は厳しめだったけどレータからは優しさが感じられた。
「うん、ありがとう。れいたくん。今回ははーちゃんがわるい!そして、ぼくもわるい!それでいいよね?」
レータの言葉を受けてクロロンはモリメさんに向かって笑顔でいう。
「うん!クウくんも悪い!わたしも悪い!だね!」
モリメさんも元気に返す。
「まあ、本来ならクウタさんが謝る必要は1ミリもないんじゃがのう」
「それがクウタくんの優しさだよ」
おねえさんとシーニはその光景を微笑ましそうにみる。
「ねえ、いろのさん」
「ふぇ?」
突然話しかけられてわたしはマヌケな声を出してしまう。
「なに?モリメさん」
そして、改めて聞く。
「えっと、なんていうかその」
「?」
モリメさんは少し言いづらそうにしていたが意を決して。
「わたしにもニックネームつけてくれないかな?」
「え?」
突然の申し出にわたしは首を傾げる。
「急にごめんね、なんというかわたしもみんなみたいにニックネームがほしいなと思って…そしたら、仲良くなれるかなと…」
モリメさんは少し照れくさそうにいう。
「うん!いいよ!わたしもあなたと仲良くなりたいと思ってたから!」
わたしは元気に返す。
「ちょっとまっててね」
そして、少し考えると頭に浮かんだ名前を口にする。
「『リーン』なんてどうかな?」
「リーン?」
モリメさんは頭にハテナを浮かべながら聞き返してくる。
「うん!モリメさんの名前って『葉月』でしょ?だから、《葉》の意味の《リーフ》、《月》って意味の《ムーン》、そして、《緑》って意味の《グリーン》この3つをあわせて『リーン』だよ!」
わたしが説明するとモリメさんは少し考える様な仕草をして微笑みながら口を開く。
「うん!気に入ったよ!わたしのニックネームは『リーン』だね!」
モリメさんは笑顔で返してくれた。
「じゃあ、わたしもいろのさんのニックネームつけてもいいかな?」
「うん、いいよ!」
わたしが元気に返すとリーンは少し考える。
「『あっちゃん』だとあおいちゃんと被っちゃうから…よし、じゃあ、『あかりん』でいいかな?」
「うん、いいよ!かわいいね!」
わたしもすごい気に入った。
「じゃあ、改めてよろしくね!リーン!」
「うん、よろしく!あかりん」
わたしとリーンは握手をかわした。




