表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カラーメモリー 【改稿前】  作者: たぬきち
カラーエブリデイ その2
30/59

30色 天海藍の観察日記2

 


 わたしの名前は天海あまみ らんどこにでもいる普通の学生だ。魔導学はすこし優秀な方かもしれないけど一番というわけではなく強いていうならモノを浮かせる魔法が得意だ。今日も今日とて平凡な日々を過ごしていた。


「ただいまー」


 鍵の開いているドアを開けて家にはいり姉の研究所の前を通ると例の如く声が聞こえてきた。


「キミとは本当に意見が合わないね」

「何を今更分かりきったことをいってるんですの?」


(あれ?いつもと違う声だ)


 そう思いこっそりと入口から覗くとおにいちゃんとクウタくんそしてアカリさんの他に綺麗で清楚そうな女性とメガネの男性が睨みあっていた。


「二人とも落ち着いてお茶でも飲んで落ち着こうよ」

「そうそうシーニの紅茶がおいしくなくなっちゃうよ」


 それをクウタくんとアカリさんが止めていた。おにいちゃんは興味がないといった感じでお茶を飲んでいておねえちゃんは離れた場所で仕事をしているみたいだ。


「あの二人またやってるの…」


 黄瀬きのせ 楓夢ふうむさんと日紫喜にしき 怜太れいたさんあの二人はいつもいがみあっているみたいだ。正直人の家にまできてケンカしないでほしいよね…。


「今日のケンカの原因はなんだ?」


 わたしは傍観しながら行く末を見守る。


「紅茶はミルクティーのほうが美味しいに決まっている」

「いえ、ロイヤルミルクティーのほうが美味しいですわ」


 ええ!?そんなことでいがみあってたの!?申し訳ないけど正直どうでもいいよ!


「ロイヤルミルクティーなんて手間が掛かるだけじゃないか!」

「その手間をかけての味がいいんですの!ミルクティーとは違いミルクの舌ざわりがいいんですの!ミルクティーはミルクを後から入れただけではありませんか!」

「逆にそのシンプルさがいいんじゃないか!ロイヤルミルクティーは逆に手間がかかり過ぎなんだよ!時間の無駄じゃないか!」

「貴方みたいなせっかちメガネにはわかりませんわ!手間暇をかけたからこそ味わえる至高の味が!」


 なんだろう、こだわりがあるのはわかるけどすごくどうでもいい。犬派か猫派ぐらいどうでもいい。


「ぼくはどっちもいいと思うよ」

 クウタくんが止めにはいった。


「どっちもいいじゃ納得出来ないんだよ。じゃあ、クウタ、キミはどっちがいいんだい?」

「えーっと…」

「そうですわ!緑風さんはっきりさせてください」

 二人に言い寄られクウタくんはたじたじしてしまう。


「ぼくはストレートティーかな」


 第三勢力でちゃったよ!

 クウタくんなんで勢力をさらに分断させちゃったの!?


「わたしはレモンティーかな」


 第四勢力もでちゃったよ!

 えっ!?今、ミルクティーとロイヤルミルクティーの戦争だったよね!?援軍くるところだったよね?なんでストレートティーとレモンティーの軍がやってきたの!?


「それとぼくミルクティーとロイヤルミルクティーのミルクの後味が苦手なんだよね」


 爆弾発言しちゃったよ!


「わかる。わたしも飲んだあとのにおいもちょっと苦手だな」


 二連鎖!


「あ、でも、牛乳は嫌いじゃないから安心して」

 クウタくんはフォローをいれる。


 違う!クウタくんそうじゃないよ!


「うんうん、牛乳おいしいよね!あんぱんと食べるとおいしいよね!」


 アカリさんにいたってはもう牛乳の話になってるよ!

もしかして二人とも素で爆弾投下したの!?


「………」


 クウタくんとアカリさんの天然返しに二人はポカンとする。


「なあ、ミズキ、キミはどうだい?」

 ニシキさんがおにいちゃんに聞く。


 おにいちゃんはコップをおくと静かに答える。


「飲めればなんでもいい」


 極論いちゃったよ。


「そうだね。わたしもそう思うよ」


 すると、仕事をしていたおねえちゃんが手を止めてやってきた。


「むしろ個性がでていてわたしはいいと思うよ」

「個性?」

「そう、今の話だけで紅茶の飲み方や種類が四つもでたんだよ?つまり、キミたちの人それぞれのいいところ成らぬ好みの味があるってことだよね」

「そうか!『みんな違ってみんないい』ってことだね!」


(!?)


「うん、そうだね」

「じゃあ、みんなの好きな味を飲みあってみるってのはどうかな?」

「みんなのを?」

「飲みあう?」


 クウタくんがそう提案するとニシキさんとキノセさんは互いをみる。


「まあ、悪くないかもね」

「ワタクシ今日はレモンティーの気分かもしれませんわね」

「じゃあ、わたしはストレートティーにお砂糖いれて飲むよ」

「それは微糖だよ」

「それじゃあ、おねえさんが気合をいれて淹れちゃうよ」



「………」


 さっきまでのギスギスした空気はどこへやら。


 わたしは微笑しながらおねえちゃんがいろんな種類の紅茶を淹れているのを見守ると研究所を後にした。


 『みんな違ってみんないい』か…よく聞く言葉だけどなんだか心に引っ掛かっていた。当たり前のことに気付かされたから?それともわたしがなにも取り柄がないことに気付いてしまったから?なんでもそつなくこなす言い換えれば『個性がない』ともいえる。わたしはなにが出来てなにが出来ないのか。『彼女の周りには人が集まる』それがほんのすこしだけ理解が出来た気もしたけど謎も深まってしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ