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カラーメモリー 【改稿前】  作者: たぬきち
アカリとフシギなタマゴ編
11/59

11色 シーニの試練


「さて、少し変わった魔力の流れを感じるのはこのあたりかな」


 二人と別れてわたしが辿り着いた場所はナニかの神社のような場所だった。

 はじめは少し離れた場所に出たんだけどここから不思議な魔力を感じて歩いてきたのだ。


「たぶんここだよね?」

 わたしは恐らくここに神獣がいるのではないかと思い周りを見回す。


「きましたね」

「!?」

 わたしの周りに声が響き少し離れた場所に鳥居が現れてそこから銀色のキレイな四足歩行の生物が現れた。


「キレイ…」

 思わず口に出してしまう。


 その生物は尖った耳と鼻が特徴的な動物『キツネ』に似ていた。だが、尻尾が一本ではなく九本あった。それから連想される生物は…


「もしかして『九尾きゅうび』?」

「ハイ、ワタシは『九尾の狐』の一種『白面金毛はくめんこんもう』と申します。この度はアマミアオイさんアナタの試練の相手をさせてもらいます」

「九尾って本当に存在してたんだね。わたしって運がいいかもしれえないね」

「運がいい?」

「神獣なんて普通出会える存在じゃないからなおさらそう感じるよ」

「ワタシ達、神獣も出来るだけ人間の生態系を乱さない様あまり人間とは関わらない様にしていますからね。それに、今と昔とでは大きく関係が変わってしまいました」

「今と昔とでは?」

「ええ、疑問に思ったことはありませんか?何故、伝奇や昔話でワタシ達神獣が語り継がれているのか。それは、昔は人間と暮らしていたからです」

「ええ!?そうなの!?」

 突然衝撃的なことをいわれてわたしは驚く。


「数はそこまで多くはありませんでしたが人間の暮らしを助けたりこちらも助けてもらったりととても有意義な時間を過ごしていました」

「でも、なにかがあったってこと?」

「察しがいいですね。ハイ、結論から云うと人間がワタシ達神獣に《恐怖》したんです」

「恐怖?」

「ええ、チカラあるものに恐怖する。生物としてあたり前のことです」

「……」

「そして、そんな人間に迷惑をかけない様にワタシ達神獣は人間との関わりを出来る限り遮断しました」

 わたしは驚いていたけどなにかが引っ掛かっていた。


「まあ、長話もなんですので試練の内容を簡潔にいいましょう」

「え?」


 正直聞きたいことがいくつかあったけどまずは試練だよね。


「《ワタシがアナタのチカラを認めれば合格》です」

「それってどういう…」

「例えばこうです」


 わたしが質問する前に一本の尻尾から魔弾らしきモノをわたしにむかって撃ち込んできた。


「イッ!?」


 わたしは咄嗟に腰の杖を抜いて魔弾を撃ち相殺する。


「いっいきなりなにするんだよ!?」

「すみません言葉で説明するより手っ取り早いかと」

「だからっていきなり魔弾を撃ってこないでよ!」

 わたしは抗議の言葉をいう。


「しかしながら思ったより素早い反応ですね」

「生命の危機を感じたからね」 

 わたしは咄嗟に掴んだ杖を持ち直す。


「アナタからワタシに攻撃してきても大丈夫ですのでどうぞアマミアオイさんアナタの実力がどれ程のものかみせてください」

「そんなこといわれても対したチカラはわたしにはないけどなぁ。まあ、でもとりあえずやってみるよ」


 杖で円を描き魔空間からホウキを取り出してその上に立って乗る。


「準備完了だよハク」

「ハク?」

「うん、白面金毛って呼びにくいしいわゆる種の呼び方でしょ?だから、白から取って《ハク》ってね」

「アマミアオイさんアナタは面白いことをいいますね。いいでしょう気に入りました」

「それはよかった」

 ハクは頷き「では行きます」と一本の尾から魔弾を撃ちだす。

 わたしはホウキで飛びそれを避けそのまま空中を飛びまわる。すると、避けた魔弾は方向を変えてわたしに再度むかってきた。


「え!?追尾型!?」


 わたしはハクの方を確認すると魔弾を撃ちだした尾が動いていた。

 そして、二本目の尾から魔弾を打ち出してきてわたしはそれもかわすが過ぎた先から方向転換をしてわたしの方にむかってくる。


「一本ひとつの魔弾操作が出来るのか」

 飛びまわりながらも出来るだけハクの尻尾を確認すると三本目の尾からも魔弾が撃ちだされた。それも、かわしたが追尾してきた二つの魔弾が当たりそうになる。


「おっと!?」

 それをギリギリのところでかわす。


「さすがにこれ以上はきついね…」

これ以上弾数を増やされたらマズイと思い杖を追尾してきたひとつの魔弾にむける。


「ハッ!」

 杖の先から魔弾を撃ちだしてぶつけ相殺させる。


「よし」

 空かさず追尾してきたもうひとつの魔弾に狙いを定めて魔弾を放つがはずれてしまった。


「!?」

 もう一発撃ってみるがまたはずれてしまう。

(動きが速くなってる?)


 わたしはハクの方を確認すると二つの尾が動いていおり撃ち消した魔弾の尾は動いていなかった。

 もしかして、数が少ないと操りやすくなるからそれで速くなったのかな?


「試してみようかな」

 わたしは杖をハクの方にむける。

「ごめん。ハクちょっと数発撃つね!」

「!?」

 そういうとわたしはハクに魔弾を二発撃つ。そして、即座にハクの後ろに回り込みもう一発撃つ。それをハクは前後に尻尾を向けて撃ち返して余っていた四本の尾の中三本の尾から魔弾を撃ちだしてきた。


(一本だけ撃たなかった?)


 わたしが三発撃ったのはがんばって避けられるのが多分六発分だと思ったからで六発分を誘導しようと思ったんだけどまさか五発しか撃ってこなかった。

 撃ちだされた魔弾を確認すると二発の時よりスピードが遅くなっていた。


「さて、これからどうするかだね」


 予想通り数が多いい程スピードが落ちるとはいえ数が多ければ避けにくくなるのは当たり前な訳で戦況は防戦一方。

 とりあえず五発の魔弾を避けながら周囲を観察してみる。

 出来れば魔力感知も使いたいところだけどホウキの操縦が疎かになってしまう為出来るだけ視野で確認すると二発だけ空中で止まっていた。


(あれは温存してるのかな?)

 一応、警戒をしておこう。


「……」


 どうにかして全ての魔弾を撃ち落としたいけどひとつひとつ撃ち落としていたら残った魔弾のスピードがあがってしまう。…なら、わたしもひとつの魔弾を操って対抗する?…いや、それだと絶対数で負ける。だったら狙うは《一点集中》魔弾が重なった瞬間に特大の魔弾をお見舞いする。


「…よし」


 わたしは覚悟を決めると杖に魔力を込めていく。

 特大の魔弾を撃つには少し時間がかかるので周囲を警戒しながら慎重に魔力を込めていく。


「!?」

 ハクはわたしがなにをしようとしているのか気付き攻撃を激しくしてきた。


「もう!急に激しくしないでよ集中出来ないでしょ!」

 少し投げやりになりながらも集中する。


「くっ!…もう少し」

 わたしの頬に魔弾が擦れた。

「……!」

 頬から血が流れ滴が宙を舞い地面に落ちる。


「よし!」

 準備完了!後は魔弾が重なる瞬間を狙う!

 杖を構えハクの方を確認すると尾が《六本》動いていた。


「えっ!?六本!?」

 わたしは慌てて周りを確認しようとするが遅かった。

 さっきまで空中で止まっていた魔弾が猛スピードで動きだしてわたしの杖を手から弾いた。


「しまった!」

 それと同時に真下の地面が弾けて一発の魔弾が飛び出してきた。


「うそ!?」


 わたしは咄嗟にホウキから真後ろに飛び退き避けるが時すでに遅し自ら空中に飛び出してしまった…。避けたことで魔弾の直撃を避けることができその代わりホウキは破壊されてしまったがそれ以上にヤバイ!


「ヤバイ!ヤッバイ!」


 落下する体に急いで浮遊魔法をかけようとするが落下スピードと発動時間が間に合うか?いや、考えても仕方ない間に合え!わたしは間に合うことに賭けて浮遊魔法をかける。


「グゥッ!」


 なんとか地面スレスレのところで間に合ったがわたしに向かって魔弾が降り注ぐそして四発の魔弾が一列に《重なった》!


「バッチグー!」


 わたしは杖を持っていた《逆の手》を向けて二本の指先をむける。


「いっけー!」


 そして、指先から《溜めていた魔力》で一点集中の魔弾を放つ!

 魔弾同士がぶつかり大きな煙が辺りを覆う。


「《消えた》!?何処に行きましたか!?」

 ハクは煙の中魔力感知でわたしを探す。


「…!?…ッフ」

 すぐにわたしの場所を把握したハクは軽く笑うとわたしにいう。

「お見事です」

 わたしはハクの真後ろで二本の指をハクに向けて構えていた。


「合格です」

 その言葉を聞き安堵の息を吐く。


「はあ~マジでさっきのは危なかったよ」

「してやられましたね。まさか、杖が《ブラフ》だったとは」

「一か八かだったけどね」


 そうわたしの本当の目的は右手の杖をお取りにして左手に魔力を溜めるのが目的だったんだ。そうしたら、警戒されないと思ってね。

  

「それにまさか《姿を消せる》とはおかげで魔力感知が遅れてしまいました」


 そして、もうひとつの奥の手…。

「わたしもまさか《コレ》をここで使うなんて思わなかったよ」

 わたしは右手に持っていたタマゴのカタチをしたキャラクターストラップをみる。

「それは?」

「知り合いにたのまれて造った《魔導具》だよ、名づけて『SYSTEM C・A・I』(システムカラーアクティブインビジブル)ってとこかな」

 わたしはストラップについているボタンを押す。すると

「なるほどそれを使って一時的に姿を眩ましたのですね」

「そう!でも、試作品だったから魔力感知には引っかかっちゃうけどね」

「それでもワタシを欺けたので素晴らしいです」

「ありがと、神獣にそんなことをいってもらえるなんてすごくうれしいよ」

「では、アマミアオイさんアナタのケガを治しましょう」

「え?ケガって」

 わたしはなんのことかとハクに聞く。


「頬のキズのことです」

「あースッカリ忘れてたよ」

 魔弾がかすっていたことを思い出して頬のキズをさわる。

「すぐに治しますので」

「いや、いいよ」

「?」

 ハクの尻尾がわたしの頬に触れようとしたがわたしは断る。

「このぐらいのキズならすぐに治ると思うし」

「ですが、アマミアオイさんアナタは女性なので痕が残ってしまったら申し訳ありません」

「いいよいいよ別に試練の勲章ってことにすれば」

「ですが…」

 試練だったとはいえハクが申し訳なさそうにしているのでわたしはひとつ提案をしてみる。


「じゃあさ、キズを治すかわりといってはなんだけどお願いがあるんだ」

「何でしょう?」

 わたしはハクに云う。

「わたしとすこしお話しない?」



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