2−6冒険者ギルド
冒険者ギルドに着いた。外見はそうだな、あまり大きい建物ではない。そしてテンプレであれば乱暴な冒険者に絡まれることになるだろうけど、面倒事を起こしたくないのでなるべくそういう事態は避けたい。
中に入ると、依頼の紙が貼られている横に長い依頼ボードが受付カウンターの近くに設置されていて、休憩するためのテーブルとイスが並べられている。冒険者ギルドの中は閑散としていて、全然人がいない。
受付カウンターのところに向かう。受付嬢が一人だけいた。
「ようこそブルスリン冒険者ギルドへ。冒険者登録ですか?」
「いえ、門番の隊長さんに呼ばれてここに来ました」
「ダミオンさんが言ってたお二方ですね、身分確認したいので許可証などありましたら提示してください」
俺たちは門番の隊長から貰った許可証を受付嬢に見せた。ていうかあの門番の隊長はダミオンというのか、覚えとこう。
「確認できましたので、応接室まで案内します」
俺たちは応接室まで案内されて、中に入るとまだ誰もいないようだ。
「今からダミオンさんとギルドマスターをお呼びしますので、しばらくお待ちください」
俺たちは良質なソファーに座って寛いている。数分ほどしたら門番の隊長ともう一人のおっさんが部屋に入ってきた。そして俺たちと向かい合ってソファーに座った。
「昨日ぶりだ、予定通り今日はダイロ盗賊団のことについてだ。そして俺の隣にいるのがここのギルドマスターだ」
隣にいるのはギルドマスターのようだ。
「旅人のアラタです」
「グラシエル……」
「ギルドマスターのダガンだ」
お互い挨拶を済ませる。
「さて、ダイロ盗賊団討伐の件だが、正式に認定されたので報酬を渡そうと思ってる。しかし今回は冒険者ギルドとの合同依頼だったから、冒険者ギルドの方からも報酬が出るとのことだ」
門番の隊長が教えてくれた。なるほど、だからこの場にギルドマスターもいるのか。
「ダミオンから聞いた通りに若いね、君たちがあのダイロ盗賊団を倒せたのはにわかに信じがたい」
「俺も最初は信じなかったけど、あの数の証拠を揃えば信じないほうが難しい」
「そうだな。そして報酬についてだが……警備隊側つまり領主側と俺たち冒険者ギルド側の報酬は合計で24000Gだ」
おー、これはかなりの大金だ。ただあの変人集団にこれほどの価値があったのは納得できない。
「長年悩まされてきたからな、これぐらいが妥協だろ。良かったな、しばらくは働かなくてもいい大金だぞ」
門番の隊長はハッハッハッと大笑いしている。いや、まだ働きますよ、働きますとも。
「ありがたく頂戴します……これは……」
ギルドマスターが俺に渡してきた装飾が施されている箱だった。箱を開けてみると中には白い硬貨が二枚と金貨四枚が入ってある。
「あー、これは白金貨というものだ。一枚の価値は1万Gある硬貨だ。一般の人はまず見る機会がないだろう」
スゲー、見る感じ高い価値がある硬貨だ……。あの怪しいピンク女はそんなのくれなかったけど……今はそんなことどうでもよくて、持ってみるとちゃんとした重みがあって、自分の働きが評価されたと思うと感動する。
「そうだ、君たち冒険者の登録審査を受けてみたらどうだ?」
門番の隊長が提案してきた。
「冒険者ですか?」
「あぁ、冒険者免許を貰えばそれは一つの身分証明書になるからな。君たちにとっても悪くない話だろ?」
うーん、身分証明にできるのか、悪くないけどな。ただ判断する前に一つだけ確かめたいことがある。
「身分証明書がなければ他の街や国に入ることができないのですか?」
「いや、そういうルールはない。鎖国をしている国を除けば誰でも入ることができる、ただ君たちのような身分証明ができない者にはお金を徴収するけどね」
お金を払うだけだったら別に大したことじゃないけど、むしろそれだけで入ることができたら別に身分証明書は大事じゃないな。
「冒険者の義務ってなんかありますか?」
ギルドマスターに聞いてみた。
「義務かい? まあ、守らなくてはならないのが毎月に登録費用を払うことと毎月に必ず一回は依頼を受けなければならないことだね」
「登録費用?」
「俺たちも慈善団体じゃないからね。ギルド職員に給料を配ることもそうだし、国々を跨ぐ機関として契約を結んだ国には税を払わなくてはならないんだ。そのために毎月冒険者から登録費用を徴収している、それが俺たちの最大の収入源だ」
真っ当な仕組みだな。確かにこれほどの大規模な機関を維持していく上でお金は必要なわけだ。まあ、かなり制度がしっかりしているし、魅力的ではあるけども、俺はいいかな。自由に旅するのが目的だし、異世界に来てまで他人のために働くのは本末転倒だ。
「俺は遠慮しときます」
「まあそれは君の自由だが、一応理由を聞かせてもらえるかね?」
「俺は自由を謳う旅人ですので、何かの規則に縛られるのは性に合いません」
「なるほどな、それも一つの道だ。そこの嬢ちゃんはどうかね?」
ギルドマスターは頷いて理解を示してくれた。そしてすぐに勧誘のターゲットをグラシエルに移した。あなたは営業マンですか……。
「アラタがやらないなら私もいい」
「ははは、随分と好かれているようだね君」
「え、えぇ、まあ……」
それは返答に困るヤツ……。あとグラシエルさんよ、人前で抱きついてくるのやめてくれ、最近なんか距離感近くないか……。
「しかし君の身なりからして君も一定の戦闘は熟せるようだ。旅をする上で魔物と出会うこともあるだろう、もし今後魔物の解体とか必要であれば遠慮なく冒険者ギルドの解体屋を利用してくれ」
「買い取ってくれるんですか?」
それはいいニュースだ。今まで『空間収納』の中に眠っている魔物の数々の処分に困ってたから、ここで解体しよう。
「解体屋ならこの建物に隣接している、売りたい魔物でもあるのかね?」
「はい、今からでもいいですか?」
「今から?」
俺の話を聞いてギルドマスターは怪訝の顔を見せた。
「なぜ門番の隊長もいるんですか?」
解体屋に移動しようとしたところ、なぜか門番の隊長もついてきた。
「いや、君がどんな魔物を出してくれるのが気になるだけだ」
「出す? 一体なんの話だ?」
門番の隊長はニマニマと笑っているがギルドマスターは何も理解していない模様。
解体屋に入ると血生臭い匂いが漂ってきて、俺とグラシエルは顔を顰める。
「はは、こういうのは慣れないのか?」
「はい、初めてです」
「アラタ臭い」
「ちょっ、それは語弊がある!」
「はは、これも一つの経験だ」
俺たちは解体屋の奥に入った。中にはデッカい肉切り包丁みたいなナイフを持っているおっさんが暇そうに座っていた。
「ギルマスと、なんだこの人数? 門番の隊長さんもいるし、オラを断罪しに来たのか?」
「笑えない冗談を言うな。買い取りの仕事だ、準備をしろ」
ギルドマスターに命令されて気怠そうに立ち上がるおっさん。背伸びをして骨を鳴らす。
「で、ブツはどこだ? まさかその坊主と別嬪さんか? ギルマスもついに人攫いに手を出したのか?」
「暇すぎて脳がボケたのか? 次くだらないことを言ったらお前をクビにするぞ」
なんというか、なかなか個性的な人だな……。悪意はないと思うけど、言ってることが滅茶苦茶だ。ギルドマスターがブチギレてるぞ。
「へいへい、魔物を出してくりゃ査定するさ」
「君も早く魔物を出してくれないか?」
「は、はい」
なんか俺まで怒られてる、なんも悪いことしてないのに。
「テーブルの上に出します。少しサイズが大きいので離れてください」
まずは『空間収納』の中にある死爪熊と巨牙虎二体を出した。
「い、一体どっから出したんだ!?」
「ほう、これほどの魔物とは……」
俺が並べた魔物を見て、ギルドマスターは驚いて、門番の隊長は感心した。
「死爪熊の色違い一体と巨牙虎二体、全部Dランク魔物か」
解体屋のおっさんは通常運転だった。なんであんただけそんなに冷静なんだ。というかこれ天空爪熊なんだけど、そんな大差ないのかな?
「いくらで売れますか?」
「そうだな、オラの査定なら全部合わせて1500Gだな、どうだい?」
安っと思ったけど、よくよく考えてみれば一般家庭の七ヶ月分の収入だもんな。
「それで大丈夫です。あともう一体あるんですけど……」
「構わん、床に出せ」
幸い解体屋自体かなり天井も高いし部屋も広いからアイツを出しても大丈夫だよな。
「では最後のを出しますね」
「今度は何を……ッ!? これはCランク魔物の暴食熊……!!」
「この首の断面、君は俺が思ったよりも強いな……」
「これは……オラでも驚くサイズだな」
「アラタ凄い」
俺が出した暴食熊はみんなを驚かせる。
「これは、そうだな……サイズが大きい、毛皮に傷もあまりないみたいだな。これは2300Gの価値がある」
こっちは更に高い値段で買ってくれた。やはりCランク魔物の素材は価値があるみたいだ。
「これは君一人で討伐したのか?」
「まあ、一応……」
「そうか、ますます君が欲しくなるな、どうかね? 例の件をもう一度考えてくれないのかね?」
「……遠慮しときます」
ギルドマスターは残念そうにしていた。悪いけど俺は考え方を変えるつもりはない。
そして俺は解体屋のおっさんの査定に満足してそのまま換金した。換金したあと後はギルドマスターから『空間収納』について問い詰められたが、なんとか誤魔化せた。
さて、色々大変だったけどこれで『空間収納』を中身を整頓できたし、お金も稼げた。これで冒険の街バルフェルに行く準備は整った。
というわけで主人公は冒険者にはなりません。冒険者になると主人公の行動を制限しそうなのでそう決めました。




